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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第三章-オレが何をしたって言うんだ異世界-
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25.別働隊の行動1

 イキョウ達が強化訓練をしている頃。

 不当なる輩を一掃し、朝食を食べ終えたソーエンとラリルレ、ロロはこれから何をしようかと話しながら城内を歩いていた。


「ソーちゃんは何かしたいことある?」

「ラリルレのしたいことがしたい」

「ロロちゃんは?」

「ラリルレのしたいことがしたい」

「あれれ!? 二人とも同じこと言ってる!?」


 ソーエンとロロは本心からそう言っている。というか、特にしたい事が無いのでそう答えるしかなかった。


「初めて来た俺よりも、ラリルレの方が王国に詳しいと思ってな」

「私、クライエン王国の首都には来た事無いから何も知らないよ?」


 ラリルレが訪れたことのある王国の領土は、ほとんどが農業が盛んな田舎であって、そこから離れた首都には立ち寄った事が無かった。


「そうか。一緒に町でも見て回るか」

「そうしよ!! んふふ~楽しみだね、何があるんだろ? 服とか見たいな。あと、食べ物とアクセサリーも、あとねあとね、とにかく見たい!!」

「落ち着けラリルレ。それならアステルにもあるだろ」

「違うよ!! 王国にしかないものがあるかもしれないんだよ!!」


 ラリルレはワクワクな表情をしながらソーエンに食ってかかる。


 ソーエンはそんなラリルレをやれやれという雰囲気で見るが、その実一切やれやれとは思っていなかった。その事はラリルレも承知の上なので、特段反応を示すことはない。


「人の多いところに行くのだな。…ラリルレ、我とは離れぬようにな」

「過保護な邪神も居たもんだな」

「絶対に離れないもん」


 そう言うとラリルレはロロを頭から降ろして、強く胸に抱いた。


 そのせいでロロの体は瓢箪状になるが、ロロの顔に一切の苦痛の表情は見られない。


「お前の体は一体どうなっているんだ」


 ソーエンは心底不思議そうな声でロロに問う。


「我は我だ」

「そうか」


 ロロの回答に、ソーエンは疑問を解決することを諦めて早々に歩き出した。


「では行くか。目指すは城下町」

「レッツゴー!!」

「離れぬようにな」


 廊下で立ちながら意気込みを語った三人は、町へと繰り出した。


 * * *


 王都は貴族エリアと庶民エリアに分かれていて、まずは貴族エリアを捜索する事にした三人。

 理由は王城から近かったのと、ラリルレが行ってみたいからといったものだった。


 王城から歩いて数十分は貴族の屋敷が立ち並んだ風景しか無く、それを見たラリルレは一喜一憂して、それにロロとソーエンが反応すると言った会話が繰り返された。


「見て見てソーちゃん。お屋敷!!」

「クランハウスの方が豪華だったな」

「もちろんそうだけど、こっちも良いなー、きらきらきれーだなぁ」

「クランハウスとは何だ?」

「以前に俺達が活動の拠点にしていた家だ」

「凄いんだよー。皆で頑張って広げてね、わようせっちゅう多種多様!!」

「わようせっちゅうとは何だ?」

「……なんだろ? とにかく色んな家具があったの!!」


 そんなふわふわした会話をしながら貴族エリアをブラブラしていると、ようやく店が並んでいる通りに出る。


 その通りに露店なんてものは無く、並ぶは全て店舗の数々。


「アステルの中央区みたいだねー」

「そうだな」


 露店が無く店舗だけが並ぶ町並みは、アステルの中央区に似ている。か、王国の方は気品が漂う町並みだった。


 アステルは貴族階級など無く、ただカフスが住んでいるからという理由で形骸的に中央区に格式の高い店や建物が集まった。しかし、こちらは貴族が集い、利用する区。どちらが本物と比べるわけではないが、どちらが厳かと言えば王国の方に軍配が上がる。


「こーゆーところって、ウィンドウショッピングしてもいいのかな?」

「試しに入れば良い。ダメなら俺が交渉しよう」

「我も協力しよう」

「それって危ないことしない?」

「「……」」

「二人とも素直だね。ダメだからね、そーゆーのは」

「「ああ」」

「だから、試しに入ってみて、ダメそうだったらごめんなさいして出よう? そしたら普通のお店の方に行こうよ」

「「ラリルレが良いのなら」」

「決定!! じゃあまずはー……ここ!!」


 ラリルレは深く考えずに、適当に一番近くにあった店を指差す。


 その店には看板にフラジーラと書いてあり、少なからず備え付けられいたガラスの窓からにはカーテンがかけられ、その隙間から僅かだが店内の様子が伺えた。


「服屋か」

「た、ぶん? 分かんないけど、入ってみよう!!」

「そうだな。入れば分かる」


 三人は特に何も考えず、まずはその店に入ることにした。


「あの三人は……昨日のやつらか」

「躊躇もせずに、あの店に入るとは」

「我々はとんでもない勘違いをしていたのかも知れない。相当身分の高い者達なのか? あのバンダナ以外はな」

「あの緑の奴となぜ仲間なのだろうか」

「フラジーラか。我々は恐れ多くて入れん。なにせ、今日はあの日であるからな」


 三人が入った姿を見た貴族達は各々の感想を述べながら、道端ということも忘れてざわついていた。


* * *


「ごめんくださーい」


 ラリルレはフラジールの扉を開けて、丁寧に挨拶をする。


 店内は外からチラリと見えた通り、数少ないドレスしか飾られておらず、カウンターなどは無い。そんな店内には、外からは伺えない位置に、テーブルと椅子が置かれていた。


 その椅子にはソーエンの見知った顔が座っていて、その傍らにはこれまたソーエンの見知った顔が待機している。


「あら、ごきげんよう」

「なんだ、ナターリアか」

「私に向かってなんだって言えるのはソーエンくらいですよ。あ、それとイキョウ様もですね」


 ナターリアはクスクスと笑いながらソーエンの言葉に返す。


「ソーちゃん、お知り合い?」

「ああ、この国の…第……」

「第二でございます」


 言葉に詰まっているソーエンにニーアが助け舟を出す。


「第二皇女のナターリアだ」

「皇女様!?ソーちゃんいつの間に!! じゃなかった、えっと、えと、ご機嫌麗しゅうございます?」


 ラリルレはフィクションで見たままを真似して、スカートの裾を持ち、腰を下げて挨拶をする。


「ご機嫌麗しゅうございますラリルレ様、話は父から伺っております」


 そんな姿のラリルレをナターリアは一切笑う事はせずに、礼節を持って対応する。


 そのナターリアを見たソーエンは眉間にしわを寄せるが、それを察せるものはこの場には居ない。顔を隠しているのだから当たり前だ。


「えっと、ナターリア様は、どうしてここにいらっしゃるのでしょうか?」

「楽にしてくださって大丈夫ですよ」


 ラリルレが苦しそうに言葉を使う姿を見て、ナターリアは助け舟を出す。


 ナターリアとしても、部外者が居ないこの場において、堅苦しいコミュニケーションなどとりたくはなかった。


「ソーちゃん、楽にってどれくらい?」


 ラリルレは、以前のイキョウの姿を見て楽にしていいの度合いが分からなくなっていた。


「コイツに限っては自然体で大丈夫だぞ」

「いいの? ほんとーに大丈夫?」

「大丈夫だ。俺を信じろ」

「分かった、ソーちゃんを信じるね。ナターリアちゃん!!」

「ちゃん!?」

「はーい」


 突然のちゃん呼びにニーアは素っ頓狂で凛とした声を上げるが、当の本人は柔和で軽い返事を返す。


 その反応を持ってソーエンの眉間の皺は無くなった。


「ほらな」

「メイドさん驚いてるけど……だいじょーぶなの?」


 ラリルレはナターリア、ニーア、ソーエンをキョロキョロ見てからソーエンに解を求める。


「本人が返事しているのなら問題は無い」

「はぁー……。皇女の威厳が……」

「いいでしょニーア。ここだもの」

「ええまぁ、ここですしね」


 ナターリアとニーアはここという単語を使ってお互いに理解しあっている。が、ソーエン達には何を言っているのか一切分からない。


 二人の世界で分かり合っている中、ソーエンはあけすけと質問をするような事はしない。間には絶対に挟まらない。

 そして、ラリルレはというと、二人の言葉が気になり素直な疑問を尋ねた。ソーエン的にはラリルレはオーケーである。


「ここってナターリアちゃんにとっての特別な場所なの?」

「そうですよ。ここは私の友人が経営している店で、毎週この日はここに入り浸ってるんです」

「言うなれば、寝室、浴場に次ぐ、皇女の隠れ家でございます」


 ナターリアは窮屈な王城があまり好きではない。王城では近衛メイドのニーアだけが同伴できる寝室と浴場以外にリラックスできる場所が無かった。だから、毎週この日は服を買いに行くといった理由で外出をし、一日中この店に入り浸っては日がな一日を好き勝手過ごしていた。


「他のお客さんは来ないの?」

「それが、入り浸るうちに、この日は私が一日この店を利用するから邪魔してはいけない、と言った暗黙のルールが貴族間で作られたらしく、他には誰も来ません。ラッキーです」


 それはもう嬉しそうにナターリアは語る。


「その日の売り上げのほうは皇女が負担をしているのでご安心を」

「心配してはいない」

「一日の売り上げを負担……スケールがおっきぃー……」

「あの……ところで、今日はソーキスちゃんは居ないんですか?」


 ナターリアは手をふにふにしながら尋ねる。


 ナターリアはあの日のソーキスの感触が忘れられず、出来ればまた抱きたいと思っていた。


「居ない。あいつなら今騎士団の訓練に参加している」

「そうですか……残念……」


 心底残念そうにしながらナターリアは肩を落とした。


 その姿を見たラリルレは何かを感じ取ったのか、ナターリアに向かって歩き出して、ロロを差し出す。


「よかったら、ロロちゃん抱っこする?」

「我か?」

「えっと、ロロ様? でいいのしょうか……どうしましょ……」

「様か。懐かしい響きだ」


 邪神の頃に敬称を付けられていたように、様付けされたロロは一切の表情を変えずに懐かしさを感じている。


「いいよね? ロロちゃん」


 ナターリアがどうすれば良いのか分からずに、手を伸ばしたり引っ込めたりしていると気を利かせたラリルレがロロに尋ねた。


「ラリルレが良いと言ったなら我は抵抗しない」

(いいと言わなければ抵抗するのか)


 ソーエンは心の中で、一人突っ込みをする。それを気付く者も、同じ思考回路を持つ者もここには居ない、


「では……わぁ。ソーキスちゃんとは違ったぷにぷに、ぽよぽよ?ふよふよ?具合で…これはこれでありですね」


 真剣にロロを手で揉みながら感触を確かめたナターリアは、何かが納得行ったような顔をしてからロロを抱きしめる。

 ただ、ラリルレのときのように瓢箪型にはならず、ロロはその形状を保っていた。


「寝たい…このまま寝て一日を過ごしたい…」

「だめですよ。一応この場には、服を買いに来ているという名目で居るんですから。寝ている姿を見られては国王様の耳に届きますよ」

「分かってるわよもぉ。せめて、この感触を寝室に持っていけたら…」

「ロロちゃん寝てるとね、にゅるにゅるしてくるから大変だよ? 朝起きると全身に絡まっちゃってるの」

「最近は我の方が早起きだから問題ないだろう」

「ほう。このタコ、家に来るまでは毎朝ラリルレに絡まっていたのか」

「なんだ、やる気か? この我と」


 ソーエンは銃を取り出しロロに向けて立つ。それに立ち向かうように、ナターリアに抱かれた、あ、あロロが触手を二本上げた。


「これくらいで怒っちゃだめだよ、ソーちゃん。ロロちゃんも寝相治してね。くすぐったくてね、たまに夜中起きちゃうもん」


 が、すぐにラリルレは二人を諭した。


「ラリルレがいいのなら俺はいい」

「分かった。努力しよう」


「ふふ、ラリルレ様が一番なのね」

「そうですね。頂点が理解できました」

「ところで、皆さんはどうしてこの店に?」


「特に理由は無いんだけどね、貴族様のお店初めてだから見てみよーって思って入ってみたんだぁ」

「別にお前らに会いに来たわけではない」

「もー、ソーちゃんはそーゆーこと言うんだから。ごめんねナターリアちゃん」

「大丈夫ですよ。むしろソーエン様のようにはっきり物を申して貰えるほうがこちらも肩肘張らなくて済むので大歓迎です」

「そーなんだぁ……。皇女様ってそんなに大変なの?」


 ナターリアの言葉を聞いたラリルレは、皇女の生活をほわわっと想像しながら尋ねる。


「そうなんですよ!! 聞いていただけますか!?」


 普段、ナターリアが愚痴を話せるのはニーアただ一人。たまにこの店の女主人。それでナターリアは心の膿を出す事は出来ていたが、それでも多くの共感者が欲しかった。

 そこに現れた、自分と自然体に接してくれる人物が皇女の苦労事情に興味を持った。これはもう話さない訳がない。


 ナターリアの溢れる苦労を、皇女様事情に興味津々ラリルレは椅子に座って聞くことにし、傍ではソーエンがめんどくさそうな顔をしながらただひたすらに話が終わるのを待っていた。

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