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悔しさを少し感じつつも、僕は質問を続けた。
「二つの神力を持っている神様って、結構いるもんなんですか?」
Mr・アグレットも靴紐と守護の神力持っているし・・・
「まあ、一人一つの場合がやっぱり多いけど、一人が二つ持っている場合も最近は増えてきているわね。二つ持っている場合は、両親の神力の中から一つずつっていうのが多いかしら。私の場合は、母が若さの神で、父が雷の神だったから、それで二つって感じで。両親がそれぞれ違う神だったからといって、両親の神力の中から、二つ受け継ぐとはかぎらないし、まして、三つ、四つ、神力を持っているとなるとなかなかそういう子はいないわね」
ということは、僕がまだ、雷の神である可能性も・・・・
「ちなみに、陽人は、雷の神じゃないわよ」
にやにやしていらっしゃる。
やはり見抜かれている・・・そして、僕のささやかな願望がとどめをさされた。
「まあ、その中でも美香の場合は、かなり特殊な例だな。なんてったって、ゼウス・ハデス・ポセイドン、これらの伝説的古代の神々の神力、雷・死・水の一つを受け継ぎながら、もう一つ、別の神力を持っているのだから。普通は、それらの能力の強大さゆえにその三神に起因する能力を持っている神は、その神力しかもっていない」
Mr・アグレットは、学園長の言葉を補足するように言った。
その中二病設定は、映画の見すぎじゃないのか?
「どう、私って、すごいでしょ」
ドヤっという効果音が聞こえるくらいのドヤ顔で・・・・というか聞こえた。Mr・アグレットと先ほどまで隅のほうでうずくまっていた天使が一緒になって、「ドヤ!」と言っていた。
「光伎君、神達のほとんどは自己主張が強い。だから、こいつみたいに、事あるごとに自分の神力を見せびらかそうとする輩も多い。だから、これから学校生活を送るに当たって、常にある程度の警戒をしておくことをお勧めするよ」
Mr・アグレットが僕にそう忠告する。あなたは、やっぱりいい人だ。
「なによ、太一。これじゃあ、私がまるで、はた迷惑な人みたいじゃない」
その通りだ。この学園長は、いい性格をしているみたいだ。ついに、話が長引いていると思ったのか是臼学園長は、ふぅと息を吐いて僕の方を体を向けた。
「まあ、無駄話はこのへんにして、星名光伎君、君は今日からこの神空学園の生徒となります。よって、この学園の校則に従ってもらいます。細かい校則は、後で確認してもらうとして、学園長として大事な三つだけここでお話しておきたいと思います。
一、むやみやたらに、自分の神力を学園内で使わないこと。
二、必ず、学校には、学校指定の制服を着用した上で、生徒手帳をもってくること。
三、神闘を行いたいときは、必ず神闘許可証を学校に提出すること。
この三つは必ず守ってくださいといっても、最初の自分の神力をやたらみだらに学園内で使わないことっていうのはあってないようなものなのだけど・・・・光伎君分かった?」
急にまじめな話をしだした学園長に少し面を食らったが、
「はい」
と、三つ目のことはよく分からなかったけれども、とりあえず返事をしておいた。
神闘?きっと、何らかの戦いのことなんだろうが、神闘をやる気もないので、詳しく聞かなかった。
「じゃあ、挨拶も説明も終わったことだし、そろそろ、朝のホームルームが始まる時間だから、今日から君のクラスになる2年C組に、Mr・アグレットの案内にしたがって、向かってください。私からはこれで以上です。今日から楽しい学園生活を存分に送ってね♪」
学園長にそうとびっきりの笑顔で、話は終わりという風にそう言われたが、まだ、話は終われない
よ。僕にはまだ訊ききたい大事なことが残っている。これを聞かずにこの場を離れるわけにはいかない。
「ちょっと待ってください。で、結局、父は・・・いや、僕は、何の神なんですか?」
これを知っておかないと、今後の学園生活に支障をきたすことになるだろう。
何故か、学園長もMr・アグレットもギックという様な表情を浮かべた。
何かあるのだろうか?
「え、まだ、自分が何の神なのか知らなかったの?」
驚いた様子で、学園長が言う。
「はい」
僕はそう答えた。
だって、自分が神だって知ったのも昨日だよ。知っているわけ無いじゃん。
「太一、あんたが、言ってあげなさいよ」
「いや、ここは学園長がおっしゃるべきだと思います」
Mr・アグレットが急に敬語になってそう言った。
どうやら譲り合っているようだ。
なんだかとても嫌な予感がする・・・・・・
「それもそうね。私が言うべきよね・・・コホン」
学園長は、咳払いをして真っ直ぐ僕を見つめる。
綺麗な女の人に見つめられているドキドキと自分が何の神なのか知るドキドキが重なって、僕の胸の中はもの凄いことになっている。
もう早く終わらせてくれ。
学園長は深く息を吸う。
「あなたは・・・・・・・・・・」
「あなたは・・・・・・・?」
学園長の言葉につられて僕の口からも言葉が出てくる。
「光伎君、あなたは・・・・・・・エロの神よ」