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僕とMr・アグレットに向けて、稲妻を放ったという事実がここにはあった。
それに対して、
「大丈夫よ。あたっても少しビッリとするぐらいだわ。それに、太一が防御するのも分かってたしね。光伎君に私の神力を見せびらかしたかったのが本当のところよ」
あなたも光伎君に自分の力を見せたかったでしょ、と学園長は無邪気に言った。
見せびらかしたかったと言われても、他の方法は無かったのだろうか。
「いやいや、あれは、当たったら、死ぬまではいかないとしても、丸こげレベルだったよ。それと、人を、自分の神力を見せびらかすために使うんじゃない。まったく、お前はいつも自分勝手だなぁ」
「太一だって、自慢げに自分の神力使ってたじゃない!」
「命の危険があったからな」
まったくだ。
へえ~、Mr・アグレットの名前って太一って言うんだ・・言われてみれば太一っぽい。
「あのMr・アグレット、一つ質問いいですか?」
さっきのMr・アグレットの行動を見て、疑問に思ったことを僕は訊いてみる。
「ああいいよ。なんだい?」
「Mr・アグレットって、靴紐の神様ですよね。靴紐を使うのはわかるんですけど、さっき、学園の攻撃?を防ぐとき使った力も靴紐の神としての力なんですか?」
「いや、あれは、ほとんど、もうひとつの私の神力、守護の神の力だよ。靴紐の神の力も多少使っているけどね。人間界に張ってある結界のほとんどがこの守護の力による結界だよ」
少し誇らしげだ。
「じゃあ、神様なら誰でも結界を張れるわけではないんですね?」
「昔は、そうだったけど、今はそうでもないわ。種類は限られてるけど・・」
そういうと、学園長は、ポケットから一本の靴紐を取りだした。
「これは?」
一見、ただの靴紐にしか見えない。
「これは、簡易版不認識的靴紐という靴紐で、光伎君、これは、私が開発したもので、これ一本で、一定時間、およそ周囲一キロの神に関する認識をずらす。ポッポストとか人間界の神空学園の結界は、効果が永続的な正式版の不認識的靴紐〈アンアウエーアシューレース〉で成り立っているのだよ。ちなみに、一本5千円」
Mr・アグレットは、かなり誇らしげに説明した。
その五千円という値段が高いか安いのかで言うと、効果からしたら、だいぶ安く思える。
「その簡易版簡易版不認識的靴紐のおかげで、今では、神達は簡単に結界をはれるようになったわ。太一の一族はねぇ、簡易版簡易版不認識的靴紐とか、安息的靴紐みたいな普通の靴紐にちょっとした効果を付属した便利な靴紐シリーズで、大分潤ってるわ。しかも、コイツはその技術を自分の一族だけにしか教えてないから、便利な機能の靴紐しかなくて、みんな靴紐を持ちあるいてるわ」
学園長は何か悔しそうだ。
「神の能力って、一人一つじゃなかったんですね?神話とかでは、大体一人一つの力というか神力じゃないですか?」
Mr・アグレットが、靴紐と守護の二つ持っていると聞いたときから気になっていたことを訊いてみた。
「神力は血で受継がれているからね。私の場合は、父親が靴紐の神で、母親が守護の神だから、靴紐と守護の二つの神力をもっている。私が、学校の守衛を任されている大きな要因は守護の神力だといえるね」
それじゃあ、もしかして・・・というか、確実にだけれど・・学園長って・・・
「あ、あの、学園長って、雷の神でもあるんですか?」
「ええ、そうよ」
完璧なドヤ顔だった。あの、事あるたびにオリーブオイルを使うイタリアンシェフ(少し古い)よりもドヤ顔なのは間違えない。もしかして・・ドヤ顔の神?口に出したら、間違えなくあの稲妻が僕に飛んでくると思ったので口には出さない。
それに、多分僕が、雷の神だったらいいなぁと思っていたことを見透かされている・・・・あのドヤ顔何よりの証拠だ。
いいなあ、雷の神・・・・・ザ・神様みたいな感じで!!
でも、学園長、僕の母親じゃないしなぁ・・僕、雷の神じゃないのか。
僕は、結構悔しかった。