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僕と私とetc.  作者: 霧島シキ
6/10

神空学園に行くことになったが、わからないことが僕にはあった。


「いったい、なにでいくんですか?」

「だから、ポッポストで。こいつを使わないで、どうやって時空移動するんだ。時空移動の神でもあるまいし。使い方は、簡単にして、明快、こういう風に手をポッポストにおいて・・・次にアリサの質問に答えるだけだ」

あと、利用できる時間は、朝の5時から、夜の12時までだぞと、

おまけのような事を言って、Mr・アグレットは、ポッポストの上に、右の手のひらを置いた。

すると、ポッポストが、デュルルデュルンという音を発すると、

「おっはようございます~、Mr・アグレット、神空学園への時空間移動を始めますがよろしいですか?」

急にポストがかわいらしい女の子の声で話し出した。


「おはよう、アリサ、準備OKだ」


「では、好きな食べ物は?」


とアリサと呼ばれた声が訊くと、


「くさや」


Mr・アグレットが答えた。

うわっ、渋い。

すると、アリサが、


「イェーイ」


やや上がり気味なテンションで言うと、


「イェーイ」


Mr・アグレットは、そのテンションに呼応するかのようにノリノリで言った。

おっさんにしては、極めてノリがいい。


「それでは、時空移動を始めます。今日も、あなたのハートにレッツゴー!」


ちょっと待って、そのやり取りなんだよ。質問ってそういうことなの?

くだらないこと訊いてんじゃねぇよ。今日も、あなたのハートにレッツゴー!って・・

と思った瞬間、体が、ふわっと、浮いた感じがした。

鮮やかな光が僕を包んだ。その光はとても温かい光だった。

すると、目の前が突然光で一杯になり、周りの景色が急に見えなくなる。驚きの中で、僕は本能的に目をつぶる。

そして、ピュンという音がした後、光が和らいだのを感じたので、

目を開けると今まで見ていたポッポストの赤い姿は無く、神空学園と書かれたすごい装飾の門が、目に入った。僕は、この時、これから幾度と無く繰り返すことになる時空間移動を初めて経験した。


「初めての時空間移動は、どうだった?」


Mr・アグレットは、自分の肩にいる僕に訊いた。


「何と言うか・・すごいですね。それしか思い浮かびません。僕は、時空間移動ポッポストを少しなめてました。それより何なんですか、あの質問は?」


「あれは、情報を集められているのさ。神をきちんと管理するためには、その神に対する情報が必要だか

らね。我々は、自分の情報を代金として、ポッポストを利用しているんだ」


「それは、いちいちめんどうくさいですね」


「まあ、一日一回質問に答えれば、その日はもう何回利用しても質問されることは無いからね。そんなに大変じゃないよ。それに昔は、役所が情報を集めるって時は、自分の情報を書いた紙を提出しなければならなかったかし、今の方がずっと楽だよ」


神にもいろいろと苦労があるようだ。自分の情報を集められるって・・・


「じゃあ、アリサっていうのは、何なんですか?」


何かの監視システムの一緒だろうか。ターミネーターのスカイネットみたいな。

そこで、Mr・アグレットは笑みを浮かべた。


「アリサは、我々と同じ神さ。彼女は、今年の神空学園の卒業生で、名前が|東[あずま]アリサといって、私の姪だ。今は、通信とか時空移動が主な活動の神通信省に勤めている。実は、ポッポストは、アリサのアイディアなんだよ。去年までは、ただの棒だったから、かわいらしいデザインになったって、神たちの間で好評なんだよ」


「それじゃあ、Mr・アグレットの姪っ子さんも靴紐の神様なんですか?」

さすがに靴紐の神じゃ、時空移動とか通信っていうのは厳しいと思うが・・・・


「アリサは、靴紐の神じゃなくて、情報・通信系の神だよ。私の血族ではなくて、妻の方の血族だからね。私の妻は、情報通信系の神なんだ。基本的に神の能力つまり、神力は、その血縁によって受け継がれるからね。だから、急に、靴紐の神から、炎をつかさどる神なんて生まれない。ちなみに、その神力の特性のせいで、神界の社会全体が、結構な割合で家族経営だから、覚えておくといいよ。もちろん、私の血族は、靴紐関係の仕事をしている」


「そうなんですか」

靴紐関係の仕事ってなんだよ。

 僕は、辺りを見渡す。異次元というから、空が緑とか、もっとSFチックな世界だと思っていたが、

 僕が今の今までいた人間界の神空学園の前の周りの景色と何も変わらない。

空も青いし・・しいてというか、唯一変わっているものは、神空学園だ。

人間界にあったフェイクも立派なものだったが、こっちの神空学園は、荘厳というか、なんと言うか、より立派なものであった。

 門からして、ドラマでしか見たことの無いような装飾が施されている。

 よくみると、やはり、校舎は、フェイクと同じレンガ造りのようだ。もう、登校時間は過ぎてしまっているようで、校門の周辺には生徒は見かけない。

 別に期待していたわけじゃないけど・・・・・期待していたわけじゃないけど。


 「じゃあ、早速行こうか。さすがにこのまま担いでいくわけにもいけないな」

そして、僕を地面に降ろして、左の手のひらを僕に向けると、

解放(リリース)

その言葉が発せられた瞬間、靴紐の呪縛から解放された。靴紐も普通のサイズに戻った。


 僕は、立ち上がって、

「もっと、早く解放してくれよ!」

Mr・アグレットに軽くつっこんだ。神の世界は、昨日まで人間の暮らしをしていた、僕にはつっこみどころが満載だった。まさに、ツッコミ祭りである。


「まあまあ、ここは、靴紐でも結んで落ち着きなさい」


Mr・アグレットに促されて、僕は、文句を言いながらしぶしぶ屈んだ。それは、現在、靴紐は解かれていて、このままでは、歩きづらいので、靴紐を結ぶ必要があった。そして、靴紐を結ぶと本当に落ち着いた。

 はあっ、まさかと思って、Mr・アグレットを見上げると、ニヤニヤしている。

「安息的靴紐・・君の靴紐を、結ぶと気分が落ち着く靴紐に変えておいたよ。君は、今から、神の世界に関わっていくに当たって、様々な驚きを体験する事になると思う。はっきり言って、君の常識はもう通用しない。

 君は、もう、この神達の世界で生きることになるのだからその度に、その驚きを現実として、受け入れなければならない。神の世界というものは、人間の世界と違って、どんな不合理も捻じ曲げられる世界であり、圧倒的な力によって何でも実現される世界だ。

 だから、どんなときも、落ち着いて対処していって欲しい。この靴紐で、少しでも落ち着いてくれればいいと思う。

 まあ、ぐるぐる巻きにしたお詫びの印とこれから、神空学園で様々なことを学び、きちんとした神になっていく君への祝いの品さ」


僕を真っ直ぐに見つめながら穏やかに、Mr・アグレットはそう言った。

 

 うわっ、めっちゃいい人じゃん、いや、神か・・攫い屋とか、カタギじゃない人とか思って本当にごめんなさい。


「よし、それじゃあ、行くよ。今度は、ちゃんとついてきてきなさい」


Mr・アグレットは、本当の神空学園の校舎に向かって、歩き出した。


「はい」


僕は立ち上がって、Mr・アグレットからカバンを受け取り、その後をついて歩いていく。




ステイホーム

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