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僕と私とetc.  作者: 霧島シキ
4/10

そして、今朝、初めての登校をなんなくこなし、現在、つまり、神空学園の門の前でただ立っている状態に至る。通学中、金髪の美少女を見かけたとか、すごくおっぱいの大きい黒髪の美女を見たとか、急にかわいい女の子とぶつかるとか、そういう、よく、ライトノベルの序盤にあるエピソードも無かった(実際、結構期待していたのだが)、というか、同じ学校らしい生徒を誰一人見かけなかった。それに、普通に駅から徒歩で登校してきて分かったのは、歩いてみると結構遠かったということだ。明日からは、自転車でここまで来ようと心に決めた。

そして、学校まで来たのはいいものの、これからどこに向かえばいいのか、やっぱり、まずは、職員室に行くべきだろうかなどと悩んでいると、

「君が、今日から神空学園に転校してきた、星名光伎君かね?」

突然、後ろから声を掛けられた。

あ、きっと、学校の先生だと思い、

これからどこに行けばいいかわからなかった、僕は、

「はい」

返事をして、後ろを振り向く。すると、そこには、あきらかにカタギじゃない大男が立っていた。漆黒のスーツに、真っ赤なネクタイをして、サングラスをかけている。体づきは、ザ・金剛力士像みたいだ。頭はスキンヘッドで、顔には、恐い人のお約束、黒いサングラスをかけている。見た目からして、40歳くらいだろうか。

このおっさん、こわっ。

あきらかに、危ない人だって・・と、とりあえず、会話だ。会話をしなければ、絶対にやられる。

しばしの静寂。そして、勇気を振り絞って、


「あ、あの・・、この学校の先生ですか」

僕は、めちゃくちゃ緊張しながら訊いた。


「まあ、そんなところだ。この門からでは、いつまでたっても学校には入れないよ。さあ、ついてきなさい」

僕を見たとき、少し不思議そうな顔を一瞬浮かべた、そのでかいおじさんは、校舎から反対の方に向かって歩き出した。

なぜ、校舎とは逆の方に誘導する?それに、マア、ソンナトコロダですと・・怪しい・・・・はっ・・もしや、これは、あれだ、俗に言う誘拐ってやつだ。この学校で、はっているということは、僕が、神の子どもだと知っているに違いない。そうだ、きっと、この人は、神の子専門の攫い屋に違いない。そんな人ならば、僕が、今日転校してくることを知っていてもおかしくない。だまされないぞ、名前ぐらいを呼ばれたくらいで、信用すると思ったら、大間違いだぞ。とりあえず逃げなければ・・と光伎は、頭を働かせ始めた。

星名光伎は、思い込みの激しい男の子だった。

そして、怪しいおっさんに付いていかずに、門の前で、立ち止まっていたら、


「おい、ちゃんと付いてこないか」

その言葉が発せられた瞬間、僕は手に持っていたお気に入りのカバンを投げ捨てると、

「さよなら!」

僕は、全速力で走り出した。そう、この全力疾走こそが、僕の考え出した最善の逃げの一手だった。

「おい、星名君、ちょっと待て!」

おっさんの声が聞こえる。

その言葉を無視して、僕は、全速力で走り続けた。なかなか足には自信がある。

そして、おっさんは、僕が逃げ出したのを見ると、


「ああ、何で逃げるかな、少しショックだよ。まったく、最近の若者は、元気がいいんだから、疲れちゃうよ。まあ、私も、仕事なんだ・・高校生の全力疾走くらいじゃ、私からは、逃げられないよ」

そして、おっさんは、僕に向かって、右の手平を向けると、

靴紐的束縛シューレースリストラクト!!」と叫んだ。

その言葉が聞こえた瞬間、

「うわっ」

僕はなにかに両足をとられてその場で派手に転んだ。かなり痛い。そういえば、年々、転んだときのダメージが大きくなっているように感じる。それにしても、何が足に絡まったのだろうか?さっき登校してきたときには、この辺には、足に絡まりそうな植物は無かったはずだ。

そして、足に絡まっているものを見ると、それは、靴紐だった。

靴紐が、僕の両足に絡まっていた。

 その靴紐は、確かに僕の靴の靴紐だったが、もちろん、僕の靴紐は、市販の普通の靴紐と同じ長さだったので、両足に絡まるような長さではないし、まして、自分の靴の靴紐が自分の足に絡みつくようなことは、通常ありえない。しかし、なぜだか分からないが、その靴紐の長さが僕の両足に絡みつくほどの長さにのびており、両足に絡みついている。

さらに今も、どんどんのび続けていて、今にも、腰にまで巻きそうだ。そして、靴紐が、僕の両腕まで、しっかり巻きついたとき、のびが止まり、僕が転んでからゆっくり歩いてきていた、おっさんが、僕の目の前に来た。僕は、今や、自分の靴紐(?)にぐるぐる巻きにされていて、まったく身動きが取れない。

 ちいぇ、結局、逃げ切れなかった。もう、誘拐されるしかないと僕が高をくくっていると、

おっさんが僕に向けて、話し出した。


「だから、言っただろう、高校生の全力疾走ぐらいでは逃げられないって、これは、靴紐的束縛、靴紐を使って相手の自由を奪う、私の神力のなせる業だ」

「シンリョクって、なに?」

「神の力、神力だよ」

「えっ、おっさ・・・おじさんは、神様だったの?てっきり、神の子専門の攫い屋だと思ったのに」


それより、うわっ、神様って、始めて見た!思ったより普通だな。

いや、親父が神だからふたりめか・・・

僕は、その後、この普通と言ったが間違っていたのをいやでも思い知らされる。


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