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初投稿です~
書き始めたらのは平成ですが、投稿は令和になってしまいました。
楽しんでいただけたら、うれしいです。
校舎が夕日の光を半分あきらめつつ、うんざりするほどあびて、淡いオレンジ色に染まり、少し空が暗くなってきたころ、
「よし、今日で、通算16組目か」
手をつないで校門から出て行くカップルを遠くから見ながら僕は小さくつぶやいた。
非常に唐突で申し訳ないのだが、僕、星名光伎の現在のあだ名は、「キューピット」である。小学校の頃の『ヒコーキ』、中学校の時の『ホッシー』を経ての『キューピット』である。
あだ名の由来は、約一年前、高校一年が始まりたてのころ、クラスの友達に、自分が告白するのを手伝ってくれと言われたので、渋々ながら、そいつといろいろな告白計画をたて、実行し、その告白を成功させてしまったことによる。
それから、「一年の星名って奴に頼むと告白が成功するらしい。」という噂が、思春期真っ只中の高校生の琴線に触れ、すぐに学校中に蔓延した。
そして、依頼を受け、次々と告白を成功させてみせたところ、瞬く間に、恋の「キューピット」なる、自分には明らかにたいそうなあだ名をつけられてしまった。最近では、訳して、かの有名な調味料の代名詞のように「キューピー」と呼ばれることもある。
かといって、この半分嫌がらせのようなあだ名が嫌いというわけではない。
今までは、名前をもじった何の変哲も無いあだ名ばかりだったし、「キューピット」と言われるのは、他人の恋を成就させることで自分が人の役に立てているという実感がして、少し嬉しかった。
それに、我ながら、人と人とを恋愛関係にする才能はあると思う。
今まで立ててきた告白の作戦は、どれも同じものではなく、その人達それぞれにあった作戦を考え、実行し、成功してきた。人の恋愛を勝負と言うのもどうかと思うかもしれないが、もし、それを勝負と言っていいのであるならば、現在、十六連勝中だった。
高校二年のゴールデンウイークを過ぎた、今も同時に三つの作戦を実行中である。告白の作戦は、本当に湯水のようにわいてきて、どれも失敗する気がしない自信作ばかりだ。まったく自分にこんな能力があったなんて信じられない。
かといって、僕、自身が告白したことは一回も無い。というか、この16年の人生の中で、かわいいと思った人はいても、好きなった人は一人もいなかった。それはもちろん、おっぱいが大きい女の子を見れば、ついつい目線がいくし、綺麗な女の人を見るとドッキともする。だが好きになったことは一回もなかった。そんな僕の告白の作戦は、なぜだか間違いなく成功する。
一度も女の子と付き合ったこともなく、好きになったことさえない僕の考えた作戦が成功するのだから、自分で言うのも何だが、僕に才能が無いわけが無いだろう。
ドヤッ!
最近、将来は、恋愛関係の仕事に就こうかと真剣に考え始めている。確か、外国の映画で、人の恋愛を成功される、恋愛のプロデューサーのような人を描いた映画があったはずだ。
あんな感じの仕事がしてみたい。
そして、帰ろうとしてちょうど校門の前まで歩いたとき、
「おーい、キューピー」
突然呼ばれ、後ろに振り返ってみると、そこには黄色の眼鏡をかけた、見るからにチャライ男子生徒が立っていた。
「よー、神埼、もう部活終わったのか?」
「もちっ、今日は外練だから早いんよ」
神崎の顔がとても機嫌がよさそうに見えた。
「なんだか楽しそうだな。もしかして、今日はこれから、梨々子ちゃんとデートか?」
「おうよ、これもお前のおかげだぜ」
このチャライ眼鏡・・もとい、神崎彰も、昨年、告白を手伝ってやった生徒達の一人であった。見た目とは裏腹にとてもピュアな奴で告白にはとてもてまどった。
「アツアツ~~」
「っばか!照れんじゃねいかよ。とかいうお前の人助けも順調みたいじゃないか」
「まあな、告白はこのキューピットこと、星名光伎にお任せだよ」
僕は、親指をグッと上に立てる。神崎も僕に合わせてその、「いいね」ポーズをとると、
「じゃあ、彼女、待たせてるからまたな!」
と言って、神埼は待ち合わせの場所に向かって走っていた。それを見送った後、お幸せにと心の中で祈りながら僕は、また、家に向かってのんびりと、夕焼けに染まる町を一人寂しく家に向かって歩き出した。
今日がこの学校に通う最後の日であったことも知らずに、そして、これから自分がどんなものと出会い、どんな体験をするかも知らずに・・・
やっぱり、異世界転生の方が、はやりだったかなとか。。。