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オレをアリスと呼ばないで  作者: 淫ヴェルズ
第一章 勇者の行方
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第5話 王都動乱


 宮廷の窓から見えるほどの大きな黒い煙。聖王は城内から惨状を眺める。


 国教であるアンティキア正教の聖地のひとつであるリゾタ聖殿。そこからモクモクと黒い煙が立ち上る。先ほどまでいた場所なだけに持ち前の運の良さに感謝してしまう。あの時交渉を早めに切り上げ実力行使に切り替えた我の判断が思わぬ所でいい方向に転がった。


 勇者たちを強引に王宮に引っ張って来たのは正解だったな。まさか食事にあそこまで食いついてくるとは。勇者がいた異世界の食料事情が垣間見える。だが、勇者たちとの会食後、王の間にもどったとたんこれである。


「それで現状どうなってるんだ。あれは・・なんだ」


「は!」


 鎧を身に着けた褐色肌の男が報告する。


「現在、謎の大火災により聖殿は炎上。死者だけでも500は超えるかと」


「そうか・・救助状況はどうなっている」


「それが、申し訳ございません。聖殿前で聖職者と騎士が揉めあいとなり聖殿中に踏み込むことが出来ません。救助を口実とした聖殿への介入は難しいかと」


「・・・火事なんて普通は経験しないものな。現場はさぞかし混沌としているのだろう」


「はい、珍しい赤い炎に魅入られて突っ込んで行く者がいるほどですから」


 あれほどの大火まずお目にかかることはない、それも赤い炎はな。火石による炎と違いどんどん燃え広がっていく。どう消火すればいいのかわからず現場は想像以上に荒れていることだろう。


 ・・これを機にいつもいつも好き勝手やる教会の重要施設に侵入出来ると思ったがやたらと警備が硬い。こういう時でもなければ奥深くまで探ることができない。リゾタ聖殿は一般人にも公開されている一見普通の施設に見えるがその深部では夜な夜な口にするのも憚れる様な実験が行われているといわれている。


 今回行われた召喚の儀は聖殿の中心部にある大広間で実行されたが此度の儀式で供物とされた人間はいったいどこからつれてきたのか。奇跡の行使は大量の犠牲が生じる。奇跡の供物は基本的に属国の人間と相場は決まっているのだがいったいどこにそんな人員を隠し持っていたというのか。定期的に国の発展と安寧のために奇跡を行使するのだが、ここしばらくは属国に対し供物の提供を呼び掛けたなんて話は聞いていない。となるとやはり怪しいのが深部の存在だ。ここらで人を大量に隠すことが出来るのはあそこぐらいだと睨んでいる。


「ただ気になる点が一つ。どうやら王都内の教会派信徒に不穏な動きが見られます」


「不穏な動き?」


「情報が錯綜しており、現在拉致した信徒に吐かせておりますがどうやら福音派が勇者排斥のために動いているようでして」


 なぜこのタイミングで福音派が動く。動く理由はわかるが、なぜ今なんだ?


 福音派はアンティキアの神を唯一神と考えておりそれ以外の信仰の対象となる存在はマガイモノとして認めず排斥しようとする超が付くほどの過激派集団である。もちろん伝承として有名な勇者も例外ではない。

 問題なのはなぜ勇者の存在を知っているかだ。召喚してまだそれほど時間が経っていないし箝口令も敷いてある。余りにも動きが速すぎる。これに関しては教会側が情報を流すメリットがあると思えない。向こうも一枚岩ではないということか。


「それは・・・ちょうどよい。この混乱に乗じて教会の人間をついでに何人か消しておけ。それを正教派と対立している福音派の仕業に見せかけておけばいい」


「はい、すでにやっております」


 どういうことだ?聖殿がこんなことになっているというのに。どいつもこいつも火事で舞い上がっているのか。ついでにまだ中にいるであろう教皇も焼け死ねばいいのにな。未だに生存報告が上がっていないが・・まあ、奴はきっと生きているだろう。本当に死んでいれば教会派はすでに瓦解しているか。敢えて表には出ずに死んだと思わせ福音派をおびき出したといったところかね。


「ところで治療中の最後の勇者はどうなったのだ。死んだでは許されんぞ」


「申し訳ありませんが確認がまだ取れておりません・・・本物の勇者であればこれぐらいのことでは死ぬ事もないのでは・・」


「万が一ということもある。伝説の英雄といった存在は割とくだらん理由で死んだりするものだ」


「捜索は続けますが・・・とにかく現状は炎がこれ以上燃え広がらないようにするので精一杯で・・・・最善を尽くします!」


 そういって現場へと戻っていく親衛隊。


 あまりにひどい事態に目を覆いたくなる。そもそもなぜ火事なんて起きてしまったのか。あんなことができるのは火の属性を持つ者しかいない。聖王国内で確認されている火属性持ちはたったの5万人超。総人口1億5千万にものぼるというのにたったそれだけしかいない貴重な存在なのだ。


 彼らは【火継守】(ひつぎもり)と呼ばれ、将来が約束され手厚く保護されている。神の加護を受けない聖王国外で領土拡大のための探索に関わり火を取り扱った仕事に従事する。基本的に多くが貴族であり変化を嫌う緩慢な日和見ども。そんな彼らが国の中央に位置する王都内でことを起こすとも思えない。 これほどの火を使えば自ずと犯人は絞られる。それが分からない間抜けではない。それも聖殿を燃やすなどもってのほかだ。教会と敵対すれば貴族はすぐに格を落とされ凋落する。それだけ信仰深いのだ。


 他国からの工作員の可能性も考えたが聖殿は警備がそうとう硬いし信徒以外は入れないようになっている。そもそもこちらの騎士が今まで潜入できなかったのだぞ。となると外からでなく内から。


 ・・・まさか教団は隠し持っていたとでもいうのか。【火継守】(ひつぎもり)が白い雪に閉ざされたこの銀世界でどれほど有用な存在なのか理解していないのか。


 もしそうであればこれは国への背信行為である。ふつふつと怒りが湧いてくるが考えもまとまり次第に笑みへと変わる。


「ルファージ宰相、今回の一連の動きどう思うか」


「・・・聖殿内で何かがあったのは間違いないでしょうな。それも勇者関連で」


「このタイミング。やはり無関係と考えるほうが難しいか」


 脇に控える片メガネを掛けた初老の男。我が幼い頃から長年政務を支えてくれた聖王派筆頭。聖王の立場を気にせずに気軽に話せる数少ない人物だ。何故かいつも片手にはワインで満たされたグラスを傾けているが魔術師の奇行は常人には計れない。そういうものだと納得するしかない。


「前々から教会派と福音派との間で小競り合いが頻発しておりますからな。福音派の考え方としては神以外の、それこそ勇者などと言った伝説上の存在による救済を認める訳にはいかんでしょう。福音派は神を最上の存在としております故、神の絶対性を揺るがすような存在が現れれば、敵と見なし反発するものも出てくるでしょうな」


「まったく過激な連中はすぐこれだ・・・神の教えを都合のいいように解釈しおって無敵にもほどがある。奴らが正義を口にするなぞ反吐が出る。表向き仲良くできる教会派がまだましに思えてくるから笑えて来るものな」


「妄信的な信者に正論は通じませんからな」


 福音派は教会の中で別れた分派のひとつである。神【アンティキア】を唯一無二の存在と考えておりそれ以外の神を認めていない。信仰の対象となりそうな超常的な存在も認めていない。そのことが原因となり聖王国に組み込まれた別の信仰を抱く属国民に対し苛烈な差別行為を行うもので属国との融和を進める聖王派にとって目の上のたんこぶと言える。


 そして一番めんどうなのが奴らは純血主義の塊でもあるため福音派に加担する貴族が多いという点だ。そうやって裏から活動資金を流し駒として代理戦争を行う。属国民に対し平然と犯罪行為を起こす福音派のメンバーはいくら逮捕しても貴族連中からの圧力ですぐに開放されてしまう。

 そのせいで属国民からの印象は最悪であり近年レジスタンスたちによる活動も活発化しているほどだ。それで福音派が減るならいいのだが全く関係のない人間が巻き込まれてはたまったものではない。この件に関しては教会派も頭を悩ませているようで皮肉な話だが共通の敵がいることにより今まで大きな衝突はなくやってこれた。


 まあ、あくまで表向きではあるが。


「急ぎすみません。報告に上がりました!」


 親衛隊隊員が急ぎ足でやってくる。


「どうした!」


「王都内で教会派と福音派が衝突し市街地に被害が!」


「なに!?」


 ド――――ン!


 遠巻きに聞こえてくる爆発音。


 ・・・あいつらマジか、いかれてるな。この王城のお膝元でやりやがったぞ。


「・・・・ジェイト」


「ああ、わかっておるわ」


 もはや我慢ならん。王座から身をひるがえし命令を下す。


「待機している騎士団に教会派と連携して福音派を制圧するよう伝えよ。なんなら蒼嵐騎士団を使っても構わん。市民の保護と避難誘導も忘れるな!」


「は!」


「王よ。王城の勇者はどうする?」


「最悪勇者にも働いてもらうつもりだが・・・出来ればこんな内輪揉めに関わってもらう訳にはいかないな」


 印象の問題で勇者には内輪揉めには関わらせたくないので、それは最終手段だ。勇者を表沙汰にはしたくない。


 このまま貴族連中の舐めた行為を諫めねば聖王の威厳に傷がつく。混沌とした場を取り仕切りここで存在感をアピールしなくてはいけない。


 刻々と状況が変化していく。勇者に、まだ見ぬ【火継守】(ひつぎもり)の存在。気がかりな点ではあるが処理しなくてはいけない問題が山積みである。まずは目の前の問題から処理していく。今できるのはまだ聖殿にいるかもしれない勇者の無事を願うだけであった。





 町のあちらこちらから爆発音と悲鳴が鳴り響く。逃げ惑う市民たちとその流れに逆らい騒乱のただ中へと駆ける騎士。

 そんな騒乱の中ガタガタと舗装された街路を台車が竜馬に引かれ進んでいく。台車にはおびただしい数の死体が積まれており、肉の焼けたような匂いが立ち込める。道行く人々は通り過ぎていく死体の山に気にする様子はない。それもそうだろう。現在王都は内紛状態であり、あちらこちらで爆発音が炸裂する度に市民は悲鳴を上げ逃げ惑う。


 ヴァーセイは布で覆った口元を僅かに歪めながら竜馬に鞭を打つ。聖殿の周りも火事の影響で相当混乱していたがまさか王都内がこんな事態になっているとは夢にも思わなかった。原因がわからないし考えるだけ無駄か。なんという好機。日ごろの祈りが届いたようだ。神様ありがとう。

 この混乱に乗じお洒落な洋服屋に強盗に入りよさげな外行き用の服を手に入れた。着替えるのが楽しみでしょうがない。これで古臭いデザインの巫女服とはお別れだ。


 ああ、まったく。初めての王都だというのにこの光景を見て彼女はどう思うであろうか?御者台から積まれた焼死体の山に意識を向けながら城門まで走らせる。





「(やっぱりこいつを生かしておいて正解だった)」


 焦げ臭い死体の山に身を隠した勇者様とフォトクリスは隙間から僅かに見える景色に目が釘付けになっていた。真っ白な石造りでできた見事な造形。建物の一つ一つに細かい装飾が施されている素晴らしい街並みだ。これまで聖殿の中から出ることのなかった私には見える物全てが珍しく新しい。


 すでに警備網は突破している。あまり認めたくはないがここまで順調に進めてこれたのは全てヴァーセイのおかげだ。聖殿及び聖殿と王都を繋ぐ聖道を出る際こいつの顔を確認した警備兵はあっさりと通行を認めた。余りにあっさりと通過できたので逆に警戒していたのだが、あれからずっと順調過ぎて本当になにもない。

 とはいえ、いつ何が起きるかわからない。実際に町ではなにやらただならない事が起きている。揺れる荷台の中で勇者様と身を寄せ合いながら周りに警戒することを忘れない。


 今更になるが周りは焼死体だらけというこの異常な状態。焼けた肉の匂いが体に染みつくようですごく嫌だ。自分の発案であるが少し後悔している。汚くて嫌になる。勇者様の大きな体に身をうずめあまり揺れないように体を固定するように腕を背中に回し抱き着く。意外とがっしりした体つきに少しだけドギマギする。そういえば男の人にここまで密着するのは初めてだ。妙に心臓が高鳴る。息を吸えば焦げた死体の匂いに交じり勇者様の匂いをしっかりと感じれる。


 なんなんだろうこの妙な気持ちは・・・まさかこれが契約の効力だとでもいうのか。明らかにいつもの私と違う。それに何か遠い記憶の中でこんな事があったようなそんな既視感を覚える。これはこの国に来る前の私か?そういえば昔、誰かにこうやって抱きしめてもらったような。いくら考えても記憶は戻らない。


 ――――――――また外から爆発音が聞こえてくる。外も内も異常だらけだというのに、なぜか安心してしまう。こんな状況で私は安らぎを感じているとでも言うのか。どうにも気恥ずかしくなり勇者様の顔を見ることもできない。


 結局この気持ちが何なのかフォトクリスにはわからなかった。


 ただ、この瞬間が少しでも長く続けばいいなと願わずにはいられなかった。





 どれほど時間がたったのだろうか。恋都は顔をしかめる。


 ガタガタと揺れる死体の揺り籠に包まれながら俺の胸に顔をうずめるフォトクリスの背中を撫でる。こんな異常な状態だ。俺は人体実験で死体に慣れているからいいがまだ子供といっていい彼女が恐怖で縮こまるのも無理はない。先ほどから黒焦げの死体がこちらを恨めしそうに睨んでいるような錯覚を覚える。


 ・・・まあ彼女が起こした炎で死んでしまったのだからそう感じるのも無理はないか。彼女はなんのためらいもなく人を殺す。それに対してどうしてか俺は好意的に解釈している。


 何かが・・・おかしい。赤の他人にどうしてこうも親密さを感じられる。それも人殺しにだぞ。


(それにしても・・・)


 先ほど受けた、この世界と自分に関わる話を思い返す。


 信じられない事に・・・どうも・・・俺は異世界とやらにいるらしい。


 この国を救う勇者として召喚されたとのことだが正直意味が分からないし実感もわかなかった。


 だが、聖殿の外に出てから考えが変わった。最初はどこかに攫われたのかと考えたがどうもなにかがおかしい。

 永遠と遥か彼方まで続く灰色で閉じた空。王都直上で輝く光の球体。まるで空に天井が出来たようで妙な圧迫感を感じる。


 聞けば年がら年中雪が降っているらしく、この世界の人間にとっての空は青ではなく灰色とでも言うのか。そしてフォトクリスはあの光球を太陽と言っていた。あれが雪の影響を弱めているとかなんとか。星とか月とかそういったものは存在しないとのこと。空模様以外にも妙に時代がかかった街並みに道行く人々の変わった服装、極めつけは台車を引く竜馬とかいう得体のしれない生物の存在。こんな生き物見たことが無いぞ。


 異世界うんぬんはともかく、知らない土地にいるのは確かなようだ。


 やばいな異世界。さっそく常識が通じない。この世界は夜になったらいったいどうなるんだよ・・・いや、そもそも夜自体存在するのか。それともあの太陽とやらでずっと明るいままなのか?


 だとすれば時間的にもうすでに夜の可能性もある。わからない。常識とかけ離れ過ぎだ。傷のせいで理解力が低下している。気分は夢うつつだ。


 冷たい風が吹き抜けていく。積み上がった死体の隙間から風がこちらの体温を奪いにかかる。体調不良も相まってとても寒い。体が震える。フォトクリス達からすればなんてことのない気温。紡がれし適応能力から恋都よりも寒さに強いのだ。


 先ほどからチラチラ見える古めかしいが洗練された造形の建物が死体の隙間から見える。看板らしきものに書いてある見たこともない文字。外国語をいくつか習得しているがそのどれにも当てはまらない。だがフォトクリス達と先ほどまで話ができていた。こちらは普通に日本語喋っているだけなのだが会話が成立しているという不具合。試しにロシア語で話してみればあら不思議。案の定会話が成立するときた。


 考えれば考えるほど疑問が湧いてくる。どう説明をつける。


「そろそろ城門に着くよ。静かにしててねー」


 御者台からかけられた緊張感に欠けた声に思考を中断する。


 ようやく城門につくのか。あと少し我慢すればこの状態から解放される。いい加減鼻が馬鹿になりそうだ。

 さきほどからモゾモゾと体を密着させるフォトクリス。建物に火をつけ大笑いしていた人間と思えないほど腕の中の彼女は弱々しかった。ただでさえ小さな体がさらに小さく感じる。背中に回された腕が力強くしがみ付いてくる。彼女は体温が高いのか温かい。自然と身を寄せる。


 ――――――ああッもう、ずっと漏れ出る衝動を抑えていたがもう限界だ。


 痛みに耐えれそうにない!


 こいつ俺が怪我人だってこと忘れてやしないか!?もう無理マジ死にそう。さきほどからずっと意識が飛びそうになる。

 周りに気取られぬよう声を必死に抑え我慢していたがもはや限界である。別のことを考え痛みにから気を逸らす作戦には無理があったか。そんな俺の心の叫びを無視するかのように無慈悲に荷台が跳ねる。


(ゴフッ!)


 口の中が血の味でいっぱいになる。さっきからずっとこんな調子だ。


 この振動ッ!クソッ!!なんでこんなにガタガタ揺れんだよ。道は舗装されてんじゃねえのかよ!


 ・・・思い返してみれば荷馬車の車輪にゴムのような衝撃緩和材が使われていなかったような気がする。まさかタイヤが存在しないとでもいうのか・・・そりゃ揺れるな。あまりにも文明レベルが低すぎる。シティボーイである俺には耐えられない。


 ようやく城門についたのか荷馬車が止まる。表で警備兵とヴァーセイのやり取りが断片的に聞こえてくる。町がこんな状態だからこそ警備も厳重になることだろう。ここは彼女の手腕を期待するしかない。


 ようやく揺れが収まったとはいえイライラが募らせる。まったく動いてはいけないというのもこれはこれでつらい。意識をすればするほど汗がにじみ息が乱れる。手先が震える。左目が痛みで熱い。でもやっぱり寒い。だが、ここで音を立てれば怪しまれてしまう。


 もう限界だ。早く城門を通過しろおおおお!


 そんな俺の心情を知ってか知らずかフォトクリスは力強く抱き着いてくる。いかにもつらそうな俺を気遣っての行為なのだろうがその優しさが仇となる。


 先ほどから汗や血がドロドロと漏れ出し二人とも血塗れだ!なんで俺生きているのかが不思議なレベルだ。


 このままじゃ声が出ちゃう!声を抑えようと必死に口元を手で抑えるがそれでも体は正直だ。俺は何かに救いをもとめるかのようにフォトクリスの金色の頭に顔を埋め、力いっぱい抱き占める。つらい、つらい。


 はやく終われ。この永劫にも感じる時間よ。



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