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4.チートな日常

 そんなこんなで弟ラブの最強チート姉とちょっとズレてるおっとり両親との間で俺はすくすくと育った。前世の影響でこの年代の子供にしては明らかにおかしいこともときどきやったり言ったりしてしまっていたが、姉が姉なので何もおかしいと思われなかった。ヤバすぎる姉。

 そして気づけば七歳になっていた。薄々感じていたことだが、特に魔法の才能に目覚めたり何かおかしな力を持っていたりはしなかった。姉と違って俺は凡人らしい。そして俺は前世も凡人だったので、科学知識や政治学知識を活用して大活躍できるかも結構怪しかった。……転生したらみんな変な力を持つんだと思ってたんだけど、どうやら違ったみたいだな。転生あたりまでは、ネット小説の通りだったのに――うっ、ゲホゲホッ!!


「るぅくんるぅくんるぅくん!!風邪大丈夫?!待っててね、お姉ちゃんが今、世界の果ての絶壁の一番下に生えているどんな病にでも効く薬草を取ってくるからね!!」


 前言撤回。ヤバい力を俺も持ってしまったかもしれん。力(お姉ちゃん)だけど。


 そう、俺は今、風邪を引いてしまって寝込んでいた。

 五歳までは病気で命を落としやすいというが五歳はもう超えているし、数日寝てゆっくり体を休めつつ、しっかり栄養を取っていれば大丈夫だと思うんだが、心配性で過保護の姉はそうは思わなかったらしい。しかし、世界の果ての絶壁って――


「お待たせるぅくんっ!薬草取って来たよ!」


 早っ!!


 以前お姉ちゃんの肩車で世界の果ての絶壁とやらを見に行ったことがあるが、そこには底が見えないような黒々とした世界が広がっており、計測したわけではないがその高さは一万メートルくらいあるんじゃないかと思った。少なくとも富士山の頂上と海抜ゼロメートルよりは絶対高低差があった。その一番下まで行って帰ってくるなんて……


 俺は改めてこのお姉ちゃんの能力に唖然としながらも、出してもらった薬草をかじった。


 ――その一瞬で、全てが変わる。


 痛みを持って咳を発していた喉が、ほのかに熱を持っていた全身が、軽い寒気が、鼻水が――

 すべて、元通り。平常の状態に戻ってしまった。


 ……どんな病にも効くというのは、誇張でもなんでもないように感じる。

 ――この薬草、絶対風邪ごときに使っていいやつじゃないだろう……

 売ればいくらになるのかとか、不治の病に苦しんでいる人に分け与えてあげたほうがいいのではとか、色々脳内を駆け巡るものはあったが――


「ふぁあああああああああああああんんんんん!!!!!!!!!!!!!るぅ君が元気になったあああああああああああああああああああっ!!!!!!!よかったああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


 なんてガチの嬉し泣きをしている姉を見ると、なんだかそういうことを言うのも、はばかられてしまうのだった。

 ま、採ってきたのはお姉ちゃんなんだし、お姉ちゃんの好きに使えばいいんだけれど……


「あらあら、ルビルートは頼りになるお姉ちゃんがいて、よかったわね~」

「アマミレイア、これからもルビルートのことを頼んだぞ」

「うん、あたし、何があってもるぅ君のことを絶対に守るから!!あたしはこの世界よりも、るぅくんの方が大事!!」


 キラキラとした瞳で両親にそんなことを言っている姉を見ていると、安心感や感謝の気持ちが芽生える一方で、この俺に対する強すぎる愛情が、いつかどこかで何かとてつもないことを引き起こしてしまうんじゃないかという気持ちが、ほんの少しだけ陰となって俺の心を覆ってくるのだった。

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