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31.回復魔法

 スライムが溶けていき、スライムの体だったところには、シナライアやモン=デ=モンデ達が露出していた。皆粘液に溶かされ、体表がひどくただれ、傷つけられている。肉や骨が見えているところもあり、グロテスクな光景であったが、幸いなことに皆とりあえずは息があるようだった。

 しかしお姉ちゃんはそんな連中には目もくれず、一番怪我の軽い俺にだけ、関心を向ける。


「あぁ、るぅくん、こんなになっちゃって……お姉ちゃんが、すぐ楽にしてあげるからね」


 そう言って、俺の体に手を添える。最初はなにも起らなかったが、しばらくすると、みるみるうちに傷ついた皮膚がきれいな皮膚に戻り、喉や鼻の奥からくる激痛が引いていった。


「お、お姉ちゃん、これは……」

「あのね、昔るぅくんが風邪を引いた時、薬草を取ってくるのに時間をかけちゃって、とっても苦しい思いをさせちゃったから、回復魔法も頑張って覚えたんだよ!!まだ覚えたてだから発動にタイムラグがあるけど……」


 どのエピソードだろうか。風邪を引いた時に一瞬で万能の薬草を取ってきてくれた記憶はあっても、薬草を取ってくるのに時間をかけられた記憶はまるでない。しかしどうやらお姉ちゃんにとってはあれすらも失態で、次を起こさないように研鑽を積んでいたようだった。ただでさえ最強なのにさらに高みを目指すのか、しかもあんなことが原因で……タイムラグがあるとは言っても、万能薬に匹敵するような回復魔法であり、それくらいのことは欠点にすら数えられないと思った。

 相変わらずのハイスペックを見せつけられて、思わず背中から汗がたらたらと流れるが、まぁこのお姉ちゃんのやることにいちいち驚いていたら身が持たないということを俺は零歳くらいのころに学んだ。そんなことよりも今は倒れているクラスメイトだ。


「お、お姉ちゃん……できれば他の人にも、回復魔法をかけてあげてくれないかな……」

「えー、まぁ、るぅくんがそう言うなら……」


 全く注意を払っていなかったシナライアやモン=デ=モンデとその取り巻きに、お姉ちゃんはようやく向き直った。言われたからやっている、という感じのだらだらとした動きではあるが、一応全員に回復魔法をかけていく。タイムラグといってもほんの短い時間のもので、そこからはただれていた皮膚があっという間に元に戻り、一見して目をそむけたくなるような傷も、あっと言う間に綺麗に回復していった。


「――うっ!」

「――がはっ!」


 傷が治癒したクラスメイト達が、うめき声を上げながら蘇る。


「い、生きてる……あ、ありがとう!、ございます……」


 状況を把握したシナライアが、真っ先にお姉ちゃんにお礼を述べた。


「あ、ありがとう、ございます……」

「ありがとう、ございます……」

「ありがとうございます……」


 続いてモン=デ=モンデとその取り巻き達も、やや気乗りしないような雰囲気を出しながらも、さすがに命の恩人にはお礼を述べていた。ひねくれているとは言っても、所詮はまだまだ小さい少年だ。こうしてお礼を述べられるのなら、彼らもまだまだおかしな人間にはならずに済むかもしれない。


「シナライア、こちらこそありがとう。風魔法で空気の道を作ってくれなかったら、僕の叫びはお姉ちゃんに届かなかったかもしれない」

「そうなの!?じゃあ、シナライアはるぅくんの命の恩人でもあるんだね!ありがとうござびまずううううううううううううう!!!!!!!!!!1るぅくん、頼りにならないお姉ちゃんでごべんねえええええええええええええ!!!!!!!!!」


 お姉ちゃんは半泣きでシナライアの手を取ったかと思ったら俺に対して土下座した。


「いやごめんねも何も不可抗力だしお姉ちゃんが全員の命の恩人なので頼むから頭を上げて……」


 俺が困惑していると、お姉ちゃんはようやく頭を上げた。


「――そうだね、そしてちゃんと、責任取るところには取ってもらおうか」

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