第45話 Fランク冒険者トロイトのダンジョン探索(6)
ラビリンスダンジョン。
第三層。
目的となるのは、トロイトを入口に返すことができ、なおかつSランク冒険者が行方不明となった第五層。
半分は一応越えている。
俺一人だったら既についているし、本当だったら足を止めたくない。
だが、後ろからついてくるトロイトが肩で息をしている。
場所もこの辺なら寝れそうだし、丁度いいかな。
「とりあえず、休憩しようか」
「は、はいいいい」
ズサー、と服が削れる勢いで、ヘッドスライディングする。
あうー、と呻きながら、柔らかそうな頬っぺたを潰す。
スライムみたいだな。
「待て、待て。とりあえず、あそこの岩の間を通ってからな」
このままだと通路で寝てしまいそうだ。
こんなところで倒れていたら、モンスターに襲ってくださいと言っているようなものだ。
ダンジョンの岩と岩の間を潜ると、広い場所に出る。
その先も通路みたいに岩と岩が狭まっているおかげで、ちょっとした空間ができあがっていた。どちらも岩が邪魔をして、大型のモンスターは通れないはずだ。
だが、どうしても隙間ができてしまう。
複数のスキルを高次元のレベルで使えるのがバレるとやばいので、こっそりと『浸透脚』を使う。破壊した岩を並べて即席の段差を作る。これでモンスターが急に襲い掛かってきても、躓くだろう。
なるべく旅の荷物を減らすためには、その場にあるもので野営できるような知識と技術が必要となる。
それは十分教えてもらった。
「ダンジョンが蠢くといっても、俺らがその動きに気付かない程度だし、俺らの視界にある場所は第一層の出入り口とかの例外を除けば移動しないって言われている。だから、とりあえずは、ここで飯食って、寝るぞ。寝ずの番は交代交代で、朝方になったら、出発しようか。今から約八時間後くらいか?」
腕時計に視線を落とす。
もう夜か。
そう考えると早いな。
「あっ、時計持っているんですね?」
「まあな。でも、これ一個しか持っていないから、予備のために買い足しておきたいけどな」
時計。
しかも腕時計となると貴重なので、一個しか持ってこられなかった。
錬金術のスキルがあるとはいえ、細かい作業の技術面では本職には劣る。
時計を作るのは結構難しいんだよな。
今、作れと言われてもできない。
時計は歯車が欠けたり、噛み合わせが悪くなったりするだけで使い物にならなくなるからな。やはり日本製の時計よりかは頻繁に壊れてしまう。そういう時はマサムネに言えば、パパッと直してくれたんだけど、今はもういないからな。
自分のことだと思ってと言われた剣を岩に置く。
アイテムポケットに保管しておきたいのだが、実戦で大分汚れてしまった。
後で綺麗にしておかないとな。
マサムネのスキルで強化されているとはいえ、手入れをしないとすぐに劣化してしまうだろうしな。
「師匠、剣も使えるんですね」
「まあね。拳の方が得意なんだけど、少しは修行しないとな」
正直、剣術はそこまでもう上達しないだろう。
昔、死ぬほどやったしな。
トロイトの見えないところで、みっちり試していたのは『魔術剣』だ。やはり、拳でスキル発動するよりもスムーズにできた。
剣術に関しては、やはり剣道の構え方が俺には性に合っていた。
剣道はあくまで道場剣術。
もっと実戦向きの剣術を学ぶべきだとは思うが、身体に染みついた動きはそう簡単にやめられないし、今更独学でやっても限界がある。
剣道のスタイルでやっていくしかない。
剣道に関して門外漢ではあるが、セミラミスに指導してもらうのも一つの手段かな。
あいつのことだから、きっと素直には教えてくれないだろうけど。
マリーを使って頼み込んだら教えてくれるかな。
憤慨しながらも、なんだかんだで面倒見がいいから丁寧に教えてくれそうだ。
「どうしたんですか?」
「ああ、いやなんでもない」
どうやら、無意識に口が歪んでいたらしい。
なんだか、ノスタルジックな気分になってしまったな。
まさか、もうホームシックか?
昔のことを思い出して、日本じゃなくて異世界のみんなのことを思い出すのが俺らしいといえば俺らしいがもうやめておこう。
とりあえず、今は飯だ、飯。
「飯作れるか?」
「え、ええ。一応。師匠は?」
「俺も一通りはできる。ダンジョンでサバイバルをしたからな。それじゃあ、手伝ってもらえるか?」
「はい! できますけど、私はどうすればいいですか?」
「とりあえず、肉と野菜は現地調査できたからな。なんか、持っている?」
「師匠を追いかけてくる時に、かなり荷物落としてきたので……パンと水ぐらいしかないですけど?」
「ん、十分かな」
ちなみに野菜は、そこらに生えている草と、モンスターから調達してきたもの。
ここまでくるのにマスバット以外にも、武器を扱える小鬼のゴブリン、石のように硬いロックムカデ、食人植物アシッドレシアなどなど、たくさんのモンスターと対峙し、倒してきた。
苦戦はしたけど、俺がカバーすることで戦えていた。
筋はいいな。
やっぱりスキルレベルを独学であそこまで上げているだけのことはあって、すぐに覚えている。
ただ身体がついて行けていないって感じ。
結構ドジなところあるし。
それに、俺の言うことを素直に聴けるのもいいな。
初心者って、独創性を出しがちだからな。
自分なりの戦い方を出そうとする。
基本的な戦術を学んだうえで、独自の戦い方をすればいいのに、すぐにオリジナリティを出そうとするからピンチに陥る。
でも、トロイトは俺の言うことをそのまま聴いてくれる。
だから、伸びも早い気がする。
ここまで素直だと俺も教えやすい。
「『スプラッシュ』」
しれっと『浸透脚』で窪みをつけた岩に、水を溜める。
ここで水洗いしてもらおうかな。
「それじゃあ、とりあえず、野菜を洗ってくれる? それが終わったら、ロックムカデをそこらの石で割ってくれる? 背中は固いから、腹に石を当てて。あとできれば、足をもいでてくれるかな?」
「分かりました!」
そっと、見ていると、トロイトは指示通りにできている。
戦闘よりも炊事の方が向いているぐらいだ。
俺は下処理済みのモンスターの肉を、焼いていくことにしよう。
フライパンは持参している。
岩で焼けることは焼けるんだけど、熱が通りづらいから流石に持ってきた。
焚き火は『フレイムボール』ですぐにできる。
スキルがあると本当に便利だ。
「師匠って、炎系統や光系統スキル以外も使えますよね? それなのに、同じスキルを多用していたのはどうしてですか?」
「洞窟にいるモンスターっていうのは、少なからず炎や光が苦手だからな。弱点を突くのは戦いにおいて当然のことだ」
それに、たくさんスキル使っていると、Sランク冒険者だと気づかれるかもしれないっていうのもあるんだけどな。
「洞窟にいるモンスターって眼が見えていないんだよ、ほとんどね」
「え? でも、みんな正確に私達のことを襲ってきましたよね?」
「スキルで感知しているんだよ。超音波とか、嗅覚とかを使ってな。中には体温を感知する奴もいる。だから、突然の光に弱い。炎を使うのは、体温で感知する奴を攪乱するためでもあるし、それに、モンスターは本能的に炎を怖がるからな。どいつもこいつも一瞬怯むから、有効的だ」
よく見れば、薄暗いダンジョンにいるモンスターのほとんどは眼が閉じている。ほとんど見えていない代わりに、暗闇でも昼間のように行動できるから手強い。
「炎を怖がるのは、モンスターが炎に慣れていないからだ。松明を扱うのなんて人間と、まあ、人間型のモンスターのゴブリンは慣れているけどな。そういうモンスターは強いから気を付けた方がいい」
「ゴブリンとかがですか? 弱いモンスターの典型例みたいなものですけど」
「経験を積めるのは人間だけとは限らない。経験を積んで、新しいスキルを生み出す可能性がある。だから、手負いのモンスターを逃がすととんでもないことになるし、道具を与えるのもよくない。トロイトみたいに装備品をそこらへんにぶちまけて逃げ出すなんて最悪の極みだ」
「す、すいません……」
「まあ、次からは気を付けてな」
モンスターにもスキルレベルが存在する。
寿命は基本的に人間よりも上とされるため、長年生き残ったモンスターのスキルレベルは相当なものになるだろう。
「人間の残したものを武器にして襲い掛かってこないとも限らない。それに、人間がダンジョンで残した食べ物を食べて突然変異し、今までにない進化を遂げたモンスターの目撃証言だって挙げられているんだ。とにかく、なるべく痕跡を残さずにダンジョン踏破しなきゃいけない」
「モンスターの突然変異……」
ごくりっ、と喉を鳴らす。
トロイトの視線はフライパンの上で踊っているモンスターの肉。
ぐぐぅ、と腹の音まで鳴りだす。
「――って、お腹減っただけか!!」
喉を鳴らしたから、ビビったかと思った。
こいつ、俺の話ちゃんと聴いている!?
「す、すいません、お腹すいちゃって」
「まあ、いいけどさ……」
おかずが足りないな。
ある程度は現地調達のつもりではいたが、どうしても手に入らないものもある。
少しだが持ってきたものを取り出すとしよう。
「それじゃあ、大事なものを、と」
「へー、なんですか、それ――って、くっさああああ!! えっ、なんですか、それ!? くっさああああ!! それ、腐ってますよ」
失敬だな。
騒ぎ過ぎだろ。
日本じゃ普通に食卓に出る代物なんだけど。
「いや、これが普通なんだ。納豆っていうんだけど」
「え? なんですか、これ?」
名前を教えたのに、それでもぴんときていない。
「ああ、そうか知らないのか。豆を腐らせたものだけど」
「いや、やっぱり腐ってますよねえ!?」
まあ、そうなんだけど。
俺も納豆はあんまり好きじゃなかったんだけど、これが、喰いたくなるもんなんだよなあ。食べられないと分かると、何故か食べたくなってしまう。
異世界の人にわざわざ作らせたからなあ。
俺一人じゃ到底作れなかったから、色んな人の協力を元に、多少劣化はしているものの日本の納豆を作り出すことに成功した。
日本と異世界の違いはある程度妥協できても、食べ物だけは我慢できなかった。
久々に納豆喰うとめちゃくちゃうまい。
口の中粘々とした糸でいっぱいなるけどなー。
「うわっ、これも変なにおいが」
納豆以外に取り出したものにも反応しだした。
「味噌だね。知らない?」
「いや、知りませんけど、なんですかこの臭いもの?」
「えっ、臭いかな」
納豆はまだ分かるんだけど、味噌って臭いのか。
嗅ぎなれているから、トロイトみたいに鼻を抓んでまで逃げてはいない。
外国から帰国した日本人が空港で、日本は味噌の匂いがするとか言うのは本当なのかな。
まあ、真偽のほどはともかくとして、日本にいた時は何とも思わなかったのだが、日本食への渇望が異世界へ転移してから日々増していった。
だから、日本食が食えるように、こうして持参してきたのだったが、生粋の異世界人であるトロイトには得体のしれないものとしか思えないらしい。
「大豆を発酵させたものかな……」
「発酵?」
「端的に言うと腐らせたってことかな」
「やっぱり!? 腐ってるじゃないですか? これは、この白いやつは?」
「えっ、豆腐知らないの?」
「知らないですよ!! これ、なんですか!?」
「大豆を発酵させたものだね」
「腐ってるうううううううううううっ!! なんでか、これ!? 腐ったものしかないじゃないですか!?」
「腐ってるけど、腐ってないよ!! そんなこと言い出したら、パンだって小麦粉を発酵さえたものだから!! 腐っているから!!」
支離滅裂な論調になっちゃったけど、全ては愛故に。
美味しいものは美味しいからしょうがない。
「それ、どうするんですか?」
「食べるんだよ」
「うわー。虫ならバクバク食べられますけど、そういうのはちょっと……」
「いいよ、食べなくて。俺の出身地でも苦手な人は苦手だからな」
虫の方が抵抗あるんだけど。
こっちに来てから飢え死にしそうになったことがあるから、大概の物は喰えるようにはなったんだけどな。
お腹がほどほど満たされている時に虫はキツイよ。
大体油で揚げたらなんとかなるんだけど、歯の隙間に脚がひっかかったりするとウエーとなる。
それから、トロイトには物理的に距離を空けられながらも、調理は進んでいく。料理ができる二人とあって、スムーズに進み、そしてご飯を食べることになった。
俺は両手を合わせる。
「いただきます」
「? なんですか、それ?」
「えっ」
あんまり意味ないけど。
習慣になっているから、何も考えずにやっているだけなんだけど。
そういえば、異世界にはこういう文化ないのか。
とりあえず、俺の知っている限りの意味をつらつらと並べてみる。
「モンスターの肉のおかげで俺達は生きていける。店で喰う時は冒険者の人が野菜やモンスターを狩ってくれているおかげで食べられる。料理を手伝ってくれたトロイトのおかげでご飯が食べられる。――そんな感じで、色んな人に感謝をこめて『いただきます』って言っているんだよ」
「へー。なんか、すごいですね」
そんな壮大なことを一々飯を食うたびに考えてはいないけれど、そう考えると凄いことだよな。
ちゃんと背筋伸ばして食べなきゃいけない気がしてきた。
考え方がなんだか宗教っぽいから、宗教が身近にある異世界だと『いただきます』っていう概念があるものだと思っていたけれど、ないもんなんだな。
しっかし、あれだ。
トロイトと一緒にいるのってやっぱりめんどうくさいな。
師弟関係ってこんなものなのかな。
足手まといであることは覚悟していたけれど、ここまで一から説明しないといけないのはしんどいな。
戦闘面についても色々教えないといけないし、ダンジョンの知識についてもほとんど一から教えてないといけない。
俺が異なる世界から転移してきたから、文化が違うってことで話す量が多いっていうのもあるかもしれない。
相手が理解できるように気遣って話すっていうのも、想像以上に疲れるもんだな。
いつだって、俺は教わってきただけだし、学生っていうのはそういうものだ。
机に座ってただアホ面ぶら下げて、先生の話を聴いているだけでいい。
ここに来てからだってそうだ。
右も左も分からない俺に、たくさんの人が俺に色んなことを教えてくれた。
大変だったろうに。
そう考えると、俺って恵まれていたんだな。
たくさんの人に助けられて、Sランク冒険者になるぐらい鍛えてもらったんだから。
「うわっ、ほんとに食べてるううう。腐っている豆を……。うわー、糸引いているー」
くっそ。
すんごい馬鹿にしているように聴こえるぞ。
このまま終わらせてたまるか。
「食べなさい」
「え?」
「好き嫌いしていたら、大きくならないから!」
「いやいや、嘘、ですよね? 師匠……」
ねばー、とした納豆を持ち上げるだけで、トロイトは怯えている。
それがたまらなく楽しい。
「食べろ!」
「いやー! やめてー!」
逃げ惑うトロイトだったが、スキルレベルの差は歴然。
ただでさえ逃げ場の少ない狭い場所、逃げられるはずもない。
「ふんぐっ!」
無理やり口の中に詰め込む。
唇の端から糸を引いているのが、ちょっと色っぽい。
涙ぐんでいて、無理やり口に物を突っ込んでしまった罪悪感が今更胸の内に湧き上がってきた。
「さいあくですよー、ひどいっ!」
「どう?」
「どうってこんなの……ん?」
もぐもぐと味わって食べている。
あれ?
吐き出さないな。
これはもしかして?
「納豆ってネバネバして糸引いて大変なんだけど、そういう時は味噌汁の汁でネバネバをなくすんだよ」
「…………」
無言で椀を受け取る。
ズズズッ、と音を立てて味噌汁を飲む。
カッ、と瞳を見開く。
どうやら何か思うところがあったらしい。
「ご飯も、食べていいですか!? 肉は!?」
「あ、はい、どうぞ」
勢いに負けてあげてしまったが、俺も食べたいんですけど。
お腹減ったんですけど。
そんな俺の想いを知らずに、バクバクと物言わずに食べまくる。
やがて落ち着いたのか、端を置く。
ふぅ、と満足そうに嘆息をつく。
「うっまあああああああああああい!!」
ご飯、納豆、味噌汁、肉。
ループしまくっている。
そうなんだよなあ。
日本食って、きっと異世界の人からしたら質素そのもの。
もっと脂っこいものとか、歯ごたえのあるものを食べたいと思ってしまうのかもしれない。だけど、日本食っていうのは一つ一つが主役というよりかは、脇役がいい仕事をするドラマみたいな感じなのだ。
ジューシーな肉や、たっぷりなバターで味付けがあったりと、異世界の都会部分は濃い味付けが多い。みんながみんな主張しまくるドラマだとうるさくなる。
だけど、名脇役がいるから、主役が光る時だってあるのだ。
「えっ、めちゃくちゃうまい!! 腐っているのに!! 腐っているのに!!」
「腐っているは余計だから!!」
「私、お米もちょっと苦手だったんですよ。だって、味ないじゃないですか。パンだったらジャムとかケチャップとかかけるものがあるんですけど、お米って何もかけるものがないから」
「ああ」
そっか。
異世界にはふりかけないし、梅干しとか鮭を使っているにも見たことがない。
だから、米は米のまま食べていることが多い。
濃い味になれていると、米の甘味さえも感じ取れないのかもしれない。
米の美味しさが分からない人って結構いるのだ。
美味しいって言われると、誇らしい気持ちになる。
俺、関係ないけど。
「でも、味がないからこそ、この味噌とか納豆とか、味が強烈なものにマッチして食べら獲るのが凄いです。完全に計算しつくされた献立ですね!! 納豆の独特なクセもアクセントになって素晴らしいですね」
「お、おう」
食レポするリポーターみたいに良いコメントするなー。
未だに、納豆の糸が口元についているけれども。
「おかわり!」
「ああ、はいはい」
なんだか保護者みたいになってきたな。
師匠と弟子か。
師匠はこういう気持ちだったのかなあ。
もしも師匠がここにいたのなら、俺ごときが弟子をとることをどう思うのかな。
笑うのかな、それとも祝福してくれるのかな。
なんだか。
最初は足手まといとしか思えなかったが、情が湧くな。
他人が成長する姿を見るのって、こんなに愛おしいものだったんだな。
もっと見ていたい気がする。
「ごちそうさま」
「え?」
「ごちそうさまっていうのも、感謝だな。いただきますと同じ意味――かな?」
「なるほど。ごちそうさま! へへへ」
「どうした?」
「なんだか、感謝するのって気分いいものですね」
「そうか?」
「そうですよ」
そんなものなのかな。
毎食言う言葉だったからな。
それに、飯を食うのは一人が多いから、言わない時だってあるし。
なんだかなー。
いただきますと、ごちそうさまをそこまで評価されると、もっとちゃんと言わなきゃなって気持ちになるな。
「何しているんですか?」
「ああ……」
野営する場所は確保した。
飯は食った。
一日が終わろうとしている。
なら、やることと言えば決まっている。
その準備を俺はしていただけのこと。
水を溜められるように岩を集めていたのだ。
「お風呂の準備」




