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これが俺の拳だ!

体躯が宙に舞う。余りにも素早い動きに動体視力が追いつかず敵の一撃を側面から派手に喰らってしまった。

「っぐはぁ!」

(なんだなんだ!狼野郎ってのはこんなにはえーのかよ。威力もやべー)

「だぁ!クソ!」

体を傷つけぬよう下に向かって落ちていく体を動かし芝生に向かって受け身を取る。追撃を想定し、体を素早く転がらせながら二本足で地面に立つ。そして敵は眼前に迫っていた。



(人喰い狼の魔物、普段は大人しいモンスターがあさってこようとは...初戦にしてはハードな相手。しかし、彼にとってはちょうどいいでしょう)

天使ヴェノムはどこから取り出したのかティーセットで紅茶を淹れ、優雅に啜っていた。主の戦いを肴にお茶を楽しんでいるのだ。

(観てる分には楽しいですが、死なれても困りますからね。危険になったら助太刀しますか、神の権能の一端を得たとはいえ未熟&経験不足)

茶菓子のドーナツを口に含み、咀嚼する。

「勝てますか?主よ」



(やっぱはえー!そして思いの外...)

「デカイじゃねーか!この野郎!」

驚く事に2m程の身の丈をした狼が異質とも取れる速さで迫ってくるのである。躙り寄る脅威に対し、幹人は臆することなく突っ走り、拳を下に構え、

「お前の方が速いってんならこっちからぶん殴る!」

足腰を曲げ、勢いよく地を蹴り身体をバネのように使った渾身の拳を一閃。

鋭い一撃が狼の顎を正確に捉え、仰け反り返す。

その大きな隙を流す事なくボディに拳を畳み掛ける。

普通の人間では考えられないような速度の拳が確実に敵を捉え打ち込んで行く。

「っァ-------!」

「これで、終いだ!オラァ!」

トドメの一撃と言わんばかりの全力キック。蹴りにより、巨大な体躯は猛スピードで吹き飛び巨大な樹木に衝突し、その樹木を震撼させた。

「はぁ、はぁ。やったか?」

しかし、その程度でやられるほど人喰い狼は甘くはなかった。

即座に狼は立ち上がり、雄叫びをあげる。するとその全身の体毛は狼の怒りを体現したかの様に天に向け奮い立つ。先程までとは比べものにならない殺意、敵意が幹人へと向けられる。そして、再びその巨体が疾駆する。

それに対して幹人は笑みを浮かべている。今までにない高揚感、強敵との対峙の緊張感と恐怖。しかし、その何よりもそれと戦える事に喜んでいる。

(やべーな、別世界。こんな生き物がうじゃうじゃいて、それに勝てる人間がいる。だったら...)

「こんな所でやられるわけにゃいかねーよな!」

走る、走る、走る!後も先も考えず突っ走る!ただぶっ飛ばす為に走る。互いが接近した時、幹人は拳を振るい、狼は猛々しい爪を立ててはたき落とす。それだけで止まることを知らず、狼は次々と攻撃を仕掛けていく。

あまりの体格差、狼の猛攻によりその身はあっという間にボロボロになっていく。

(っちぃ!拳がとどかねぇ、いやもう喰らいたくないから振り落としてるのか...)


笑わせんな!例えどんなにボロボロになっても、俺は引かねぇ、逃げねぇ、突っ走る!

小細工なんざ要らないねぇ。その遮る手も爪も全てぶっ飛ばす!


「狼如きに俺は止められねぇんだよぉ!」

喉が焼けるほどに叫ぶ。足は乳酸が溜まり酷く重い。

それでも限界を超えて走る、拳を握りしめた瞬間に狼は再び爪を振りかざす。

「流石に何度も喰らえばわかるんだよ、狼野郎!」

握りしめた拳ではなく、脚で蹴り上げる。不意を突かれた狼は体勢を崩し体をふらつかせる。

「俺を舐めんじゃねぇぞ、歯ぁ食いしばって喰らえ!これが俺の拳だ!」

直後幹人は飛び跳ね、狼の顔面に向けて跳ねた勢いで殴る!怒涛の攻撃に為すすべも無く、狼は地へと落ちた。その目は完全に白目を剥いており、息をしているのすら分からなかった。

「っへ!俺の勝ちだぜ、狼野郎」

対して彼はボロボロの身で狼を見下ろし、誇らしげに笑っていた。




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