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2.煤口白夜は望月公園へとやって来た

 そうして今夜も家を出て、今日は徒歩十数分かそこいらにある望月もちづき公園に来ている。


 なるべくなら、行ったことのないところに足を伸ばすのがこの深夜徘徊の醍醐味である。

慣れてしまった道を徘徊してもスリルがないだろう?


 今夜は丁度満月、望月。


 雲も一つない、澄んだ三月の夜空に浮かぶ月輪は煌々と街を照らしている。

時折吹き込む木枯らしは空気を切り裂くような音をたて、隙あらばと厚手のコートの中に侵入してくる。


 徘徊日和だ。


 日は出ていないけどな。



 ここ望月公園は公園としてはそこそこの広さで東京ドーム換算にして十個分くらいの面積がある。ちなみに俺は東京ドームには行ったことはないのでそう言われても実感はわかない。


 園内は子供から大人まで楽しめるアスレチックを始めとして数多くの遊具が設置されており、

昼間ともなれば近所のみならず遠来からも家族連れで賑わう、ちょっとした観光地と言っても差し支えはないような物となっている。


 また園の東側には大きな桜の木があり、花見にも絶好のスポットとして知られている。

今の時期は夜間もスポットライトが当てられ、もう数週間もすれば夜桜観光で賑わうだろう。


 当然園路もしっかり舗装されており、しかも今の様な深夜帯の時間でも街灯が足元を照らしてくれている。夜でも歩きやすい、深夜徘徊初心者に是非ともお勧めである。


 なお入園無料。以上、一部望月町(もちづきちょう)ホームページより。



 この望月公園には何回か来てはいるが、あまりの広さにまだまだ探索するところには事欠かかない。


 今日はどうしようかな……。

 前回は東の方に進んで桜の木の広場まで行って帰ってきたんだっけかな……。

 逆方向に行って池を周って戻ってこようか……?


 と一人正面入口の案内看板を見ながら考える。


 ふと、その池の更に奥に紐のようなものが巻かれた小さな石コロの絵が描かれているのが目に留まる。


「望月磐座」


 望月磐座もちづきいわくら、と読むらしい。そうルビがふってあった。いわくら(・・・・)の意味がわからないのでスマホで検索。便利な世の中だ。


 いわく、古神道における岩に対する信仰、あるいはその信仰の対象となる岩のこと。

要は神聖な岩なわけだ。


 とすればこの案内板に描かれている小さな石コロはそれなりの大きさの岩なのであり、そいでもって巻かれている紐はただの紐というわけではなくしめ縄(・・・)か何かなのだろう。


 と、いうことで今夜の深夜徘徊、行き先決定。今夜はこの望月磐座を見学に行きます。拍手。

 言ってみただけで拍手はしないが。


 案内板に向かって左に延びる道を進む。


 満月に加え、街灯に照らされているとはいえ、辺りは薄暗い。持参した懐中電灯を片手に足元を照らしながらおっかなびっくり歩みを進める。


 途中、何度か道の脇の茂みだったりが、ガサリと音を立てる度に反射的に明かりを向けるが、今の所その全ては野良猫か野良狸かが立てる音であった。

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