9話 みいちゃんとディストーションワープスピード
「ぐんぐん、のびるよー。宇宙がのびるよおー。ケホっゲホっ。」
みいこが口をぱくぱくさせて叫ぶ。むせる。その時ハルたちの周りの景色は宇宙空間はすごい速さで移動していたのだ。それは巨大怪翼ハムスターのトマトがワープウィングを広げ、それまでの慣性飛行を脱しワープ飛行をはじめたからだった。
「わおっ、トマトっちってほんとすごいハムスターだったんだな。ほんとにワープ航法ができるなんてな。ハムスターも見かけによらないってことか。」
ネッラが自分を納得させるように呟いたその時だ。星々の光が筋となって前から後ろへと流れていくその前方に、大きな飛翔体が見えた。
「あっ、あれは。あれはなに。」
ハルが驚いてあれは、あれは、と繰り返した。
「あれは過去の俺たちなんだ。」
トマトがさらりと説明した。
「ええええええーーーー。過去の僕たちなのーーー。過去の僕たちが見えてるのーーー。」
ハル、ネッラ、みいこが口々に叫ぶ。
「じゃあ、じゃあ、もうすぐなの、もうすぐぼくたち、過去に飛ぶの、過去に飛んじゃうのおおおおおおー。」
ハルがちょっと危ない言葉を叫ぶ。
「それが、このままだと、追いつかないんだ。相対性理論だからね。」
トマトがまたハムスターらしくないことを言う。
「そ、そ、そ、相対性理論ーーー。」
「バンド?バンドなの?。宇宙はバンドなの?」
みいこが言う。
「いやそっちじゃない。みいちゃんが好きならそれはいいんだけど、そっちじゃない。てか、バンギャだったの、みいちゃん。」
トマトがつっこむ。
「ともかくさ、この前言ったように、惑星と惑星の重力場を利用して通常のワープ飛行からディストーションワープ飛行に移行するんだ。もうすぐ。」
みんなはわかったような顔であっちの方向を見ながらトマトの話を聞いている。
「その時なんだ、おれっちたちが、過去のおれっちたちとアセン長老とケイロン人たちの元へ行けるんだ。」
語尾を強くして話すトマトは心なしかきりりとして見えた。
みいこたちの周りを湾曲したカラフルな光の筋が流れていく。みいこたちはそのたくさんの光の筋の中をきらきら光っていた。