7話 みいちゃんとワープストリーム
「ネッラでしょ、トマトでしょ、それとえっーと、なんだっけ、あっ、ハルね。」
「ちょっと、さっきから何度も数えてるんだから、忘れるわけないでしょぼくの名前!!」
ハルは気乗りしない声で指摘した。
「えっとー、これで、315個も、あたしの周りにあるわけよ」
「どんだけ、数えてんのっ。」
ネッラが鋭く口を挟むが、
えっへんっ、とみいこは両手を腰に当てて胸をはっている。
それを見ながら二人は首を振った。
「ねえ、ネッラ。僕たちもう、地球には戻れないのかな。」
ハルは力なくそうつぶやくと、頭をもたげた。
「戻れるよ。」
ネッラはつまんなそうに言うと、ハルのポケットからキャラメルを取り出して宙へ投げてから頬張った。
「えっ、戻れるのっ。」
ハルは身を乗り出す。となりでみいこは懲りずにえっへん、をしている。
「うん。あるよ。そうだろ、トマト。」
ネッラがトマトのうなじをさすった。
「おう、簡単さ、俺っちがさ、あの土星と金星の間を高速で飛行してさ、二つの惑星の重力場の反発エネルギーに繰り返し乗り続けると、ワープ速度に達するのさ。俺っちが。ハムスターである俺っちが。」
トマトはそこまで言うと、どうだすごいだろと言いたげにみんなを振り返る。
「へっ、へえー。」
ハルが要点を得ずに生返事をした。
「えっ、わかんないの。あのさー、だからさー。わかるじゃん。俺っちが、俺っちたちがワープ速度に入るってことはだよ、そこからさらに加速を続けることができればだよ、時空の歪みを俺っち自身が生み出してさー、その中に入れるってわけだよ。わかる。わかるでしょ。えっ、わかんないの。だからね、それでね、戻れるんだよ。みんなで過ごしたあの時にさ。」
そこまで言うとトマトはもう今日は疲れたと言って、寝息をたて始めた。
トマトの話を黙って聞いていたハルとみいこは煙に巻かれたような顔をして、見つめ合っていた。
「おれも寝よ。」
ネッラはそう言ってトマトの背中に身をゆだねた。