6話 みいちゃんと手に入れられなかったもの
小さな粒のように光る星の明かり以外に何も見えない宇宙空間にネッラとハルとみいこが漂っていた。トマトの背中に乗って。
彼らはふわふわとした毛並みに隠れてはいるがとても寒そうだ。
「ねえ、ずいぶん長く飛んでると思うんだけど、なんにもないね。なーんにも。」
ハルはそう言って、ポケットの中から取り出したキャラメルを一つ口に頬張った。
「何もない、か。そうだな。俺たち、全部失ったもんな。」
何か飲み込むように一人頷きネッラは話を続ける。
「みんな無事でいるんだろうか。ああ、アセン長老......」
ネッラは そう言うと口をつぐみ、みんなも黙ってしまった。
アセン長老は先の大戦で処刑されてしまったのだ。そして彼の率いるケイロン人たちもバラバラになり、地球の大地は宇宙線の猛威に打ち震えるだけであった。
「あのね、みんな。失ったものや手に入れられなかったものを数えていても翼はしぼんじゃうだけだよ。持ってるものや周りにあるものを数えて入れば翼もまた大きく広がるんだよ。」
みいちゃんは唐突にそう言うと、ゆびおり数え始める。
「トマトでしょ、ネッラでしょ、宇宙でしょ、ついでにハルでしょ。」
「つ、ついでにっ!!」
ハルは小声で抗議したが、みいこには聞こえないみたいだ。
「そして、トマトでしょ、ネッラでしょ、宇宙でしょ、おまけにハルでしょ。」
「お、おまけっ!!」
ハルが再び小声で抗議したが、やはり、みいこには聞こえないようだ。
「で、トマトでしょ、ネッラでしょ、宇宙でしょ、まあハルかな。」
「もう、いいよ。どうせ、おまけだよぼくは。」
小さくすねるハルの横でネッラが口を開く。
「みいちゃん、何度も同じことを数えてるじゃん。」
「いいのよ。何度も数えてたら3つが6つになって、9つになって、増えていくじゃん。そしたらさ、そしたら、あたしも元気になるもん。」
みいこはそう言うと、二人と一匹を何度もゆびおり数え続けた。