2話 うどんが大変
「うー、どこに行けばフェリーがあるのー。」
勢いよく出発したぼくたちだけど、うどん国に渡る方法が見つからない。そんなわけで、みぃちゃんは海に向かって叫んでいるんだ。
「おのころ島からなら、歩いて行けるんじゃないですか?」
ぼくたちの後ろを珍しげに外国の景色を見ながら歩いていたトゥーさんが控えめに言った。
「それだ!」
「うん、それだよっ。よしっ。レッツゴー、おのころおのころ、たまねぎたまねぎ。」
みぃちゃんが拳を高く掲げて、エイエイオーをして歩き始めた。そんなみぃちゃんに続いて、ぼくたちは後ろをついて歩いていくのだ。
海岸沿いを歩いて、大きな橋に差し掛かった。車の通らなくなったその海の上の道路をひきこもり中二少女と小学生のぼくとキャンボディア人の青年という妙な取り合わせのぼくたちが歩いていく。
途中すれ違ったのは自転車に乗った報道カメラマン風の人だけだった。ぼくたちと目があったと思ったのは一瞬で、そのまま猛スピードでペダルを漕いで行ってしまった。
玉ねぎ畑を越えてぼくたちは行く。果てしないおのころ島を。って言ってる間に、また橋が現れた。
「ふっふっふっ。いよいよ、うどん国に上陸よ。待ってなさい、うどんの王。私がおいしい伊勢うどんを教えてやるわ!」
そう言ってみぃちゃんは新たな一歩を踏み勇んだ。
「みぃちゃん。あのね、伊勢うどんは伊勢にあるんだよ。うどん国じゃなくて、伊勢にあるんだよ。」
「うっさいっ。だまれバカッ。」
「がーん。」
ぼくはとっても落ち込んだままみぃちゃんとトゥーの後ろをとぼとぼと歩いていた。悲し。
「えっー、伊勢うどん置いてないのーーー。信じらんないっ!」
バタンっ、とみぃちゃんは扉を閉めた。
ごめんね、うどん屋さん。ぼくは心の中で謝るだけだ。
ぼくたちはうどん国のうどん屋さんに入ったんだけど、伊勢うどんがないって、みぃちゃんがわがまま言っちゃって、こんなことになっちゃった。どうしたらいいのかな。前のみぃちゃんはもっと素直でいい子だったのに。
だけど、あのみぃちゃんは無理してたのかな。無理していい子を演じてたのかな。そう思うとぼくは途端に心がキュンとなって、みぃちゃんを見つめていたのだった。
「伊勢うどんって超美味しいよね。ふわふわもちもち。」
結局、トゥーさんのアイデアで、カセットコンロとうどんとたまごとネギと醤油とかつおぶしとだしの素と塩と砂糖っていうか、めんつゆを買って、川のそばでぼくたちはうどんを作って、みんなで食べたのだ。
「おいしいね。良かったね、みぃちゃん。」
「うん。とっても、おいしい。しゃーわせ。」
「よかったですね、みいこさん。」
ぼくたちは流れの増した岩の目立つ大きな川のそばでひたすらうどんをすすっていたのだった。じゅるじゅるごくん。