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異世界で彫師になる  作者: ユタユタ
リーザオ
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近衛騎士への勧誘

近衛騎士への勧誘



「バルザック殿を近衛兵士として是非歓迎したい!」


そうフェタが言った。


「もちろん、近衛兵士以外で希望が有れば言ってくれ。出来るだけ希望には沿いたい」


まさか近衛兵士になれと言われるとはな。


この国の戦争における階級は、


大将

中将

少将

大尉

中尉

少尉

准尉

曹長

軍曹

伍長

兵長

一等兵

二等兵


となる。

これは直接国家の階級に沿う。

大将は国王が担い。

中将は公爵。

少将は伯爵。

大尉は子爵。

中尉は男爵。

少尉は騎士。

がそれぞれ担う。

それ以下の、

准尉、曹長、伍長には、職業軍人や、家を出た元貴族や、冒険者ギルドの人間などがなる。

兵長は職業軍人などなど。

そして、一等兵は職業軍人が、二等兵は民間人などが多数となる。

まぁ、兎に角。

戦争になった時に戦うのは職業軍人と冒険者だったり民間人が多数だ。

ちなみに俺も家を出ているので、

成れても准尉が最高位だ。

とは言っても実家の爵位は騎士でしかないのでそんなに変わらない。

じゃあ、今回フェタが誘ってくれた近衛騎士とはどんな地位なのかというと。

この国の大将の私設部隊だ。

大将とは国王を指す、その私設部隊だ。

俺はこのままだと、どう足掻いても准尉が最高位だが、

まさか俺がその近衛兵士に誘われるとはな、、、。

父親が聞いたら泣いて喜ぶだろう。

しかし俺は家から捨てられた身だ、しかも、


「俺は『ザル』だぞ?良いのか?」


ザルというのは、レベルの上がり難い人間の事を指す別称だ。

レベルは殺した相手の魂を吸収することで上がるのだが、普通は一匹のオークを殺して上がるレベルが二匹殺さないと上がらない奴がいる。

そいつらは、

この世界に溶けた、人間の中に溶けた神様の欠片を、魔物の魂の中にある神様の欠片を、

神様の欠片を吸収出来ない、出来損ないの人間、神の恩恵を受け止める器、魂の器に穴が開いていると言われ馬鹿にされている。

しかも、レベルが上がり易さの多少は、個人差として全然有るのだが。

俺や秋人、エルンストの所のダグラスの様に他の人間の倍の魔物を殺さないとレベルが上がらない様な奴は稀だった。

だから大体何処のパーティーも俺や秋人とはパーティーを組んでくれない。

エルンストはそんなダグラスと気にせずパーティーを組んでいるが、そんな奴は稀だった。


「決して口外して欲しくないのだが、、。

実は、我々はバルザック殿の様にレベルの上がりにくい人材を求めている」


フェタがそう言って説明した内容に俺は戸惑いを隠せなかった。


まず、1つ。

普通はレベルイコール強さで良いのだが、たまにそれが通用しない人間がいる。

それが、俺や秋人のような人間で、魔物を殺してもなかなかレベルが上がらない人間にそれが当てはまる。

何故この様な事が起こるのかというと、

もし、1万の魂を吸収出来る『器』が有ったとすると、

その器は100の魂を吸収する毎にレベルが1つづつ上がっていく。

そして、1万の魂を吸収した所で、そいつのレベルは99になっている。

じゃあ、俺や秋人はどうなんだというと、

2万の魂を吸収出来る器を持っているらしい。

200の魂を吸収してやっとレベルが上がるとの事だ。

そして、レベルが上がって得られる加護は魂の量に応じる。

という事は、すなわち、

俺のレベルは10しか無いが、それ以上の強さがあるという事だった。

ちなみに、実際は魂の器は円錐形をしているためこの様な上がりかたはしないらしい。


そして二つ目は、

何故この事を隠されているのか?

この話が本当なら、レベルが上がりにくい人間を軍部はより登用すべきなのだが、俺はそんな話を聞いた事が無かった。

しかしそれはこの国の軍の構成がそうさせていた。

この国の王が戦時には大将となる、その構成に原因があった。

戦争時に強い大将と弱い大将と、

どっちの下で戦いたいかと言われれば当然皆強い大将の下で戦いたいだろう。

それに、弱い大将の指示になど従いたくはないだろう。

そこで、魔物をトレインしてきて国王のレベルを上げるのだそうだ。

国王のレベルを無理矢理上げて、軍の結束を強くする。

その時に、レベル以上の強さを持つ我々の様な人間は邪魔だったらしい。


そして三つめは。

じゃあ、どうして今更レベルの上がりにくい、俺の様な人間に誘いの声を掛けたのかと言うと。

どうやら隣の国、リーザオ大国との戦争が現実味を帯びてきたらしい。

それで慌てて要望な人材に声を掛けて回っているそうだ。

リーザオ大国は既に俺の様な『ザル』の登用と、『ザル』だけを集めた戦闘集団を作り、実用段階まで入っているそうだ。


完全に後手だな。

何を今更と、嘲る様な気持ちが心に浮かぶ。


「頼むから我々を助けてくれ!」


と言って俺を拝んでくるフェタを見下げて、


「考えさせてくれ」


と言って、俺はその場を出た。

ふざけた話だ。

今までは自分達の都合で俺たちの事を『ザル』だと嘲っておいておいて。

いざ、その力が欲しくなると、頭を下げて『助けてくれ!』だなんてな。

もし、国が『ザル』の汚名を払拭してくれていたら、俺は実家で今も貴族として暮らしていただろう。

それも有望視されて。

もしも、戦争で武勲を立てれば家の爵位を騎士から男爵に上げられたかもしれない。

しかし、現実には俺が『ザル』だと分かると家族は俺を家から追い出した。

そして俺は平民として暮らす事になった。

国が、ザルの汚名を払拭してくれていれば、

国が、もっと早くザルの登用を進めていれば、

そう思うとフツフツと怒りがこみ上げた。

しかし、近衛騎士という憧れの職務をちらつかされると、思わず心が動く。

近衛騎士はかなりの多くの権限を持つ特殊部隊だ。

例えば、地方の領主など簡単に飛ばす事が出来る。

というか。

むしろ、領主や領主代理を監査して、不明瞭な部分があれは追求し、もしも法律に反しているならそれを罰するのが近衛騎士の職務だ。

思わぬ大役に引かれる心と、

フツフツと込み上げる怒りと、

ついつい、誰かに相談したくなるのだが、俺が相談出来る相手はこの村には二人しか居ない。

ギルド長か秋人だ。


「ハァ?バッカじゃねぇの?!」


早速秋人に相談した事を後悔した。

目の下にクマを作った秋人は凄く機嫌が悪かった。


「お前は拘りすぎなんだよ。本当にバカだよな」

「拘ってなどいない!」

「いーや!拘ってるね。その、なんだ?

近衛騎士になったら、元家族がすり寄ってくるかもしれない?

国が今更頭を下げて頼みこんでくるのが気にいらない?

めっちゃ、拘ってんじゃねぇか!」

「お前は腹がたたないのか?!さんざん『ザル』だとバカにされて生きてきて、今更『助けてください』なんて言われて」

「全然?全然腹なんてたたねぇよ?」

「え?」

「だって、前から何か変だと思ってたし。レベルは強さを表してねえなって。ってか、お前今まで気付かなかったのかよ?少し考えれば分かるんじゃね?」


秋人は呆れた顔で俺を見てきた。

スッゲーむかつく。


「とにかく拘り過ぎだ、家族も、手のひらを返して頭を下げてくる国も、どっちもどうだって良い。お前が近衛騎士になりたいのなら成れば良い。成りたくなければ成らなければ良い。それだけだ。バーカ」


それから、俺を邪魔だと言う秋人に部屋を追い出された。

秋人はムカつくが、言ってる事は正しいような気がした。

確かにそうかもしれない。

拘り過ぎか。

成りたければ成る。

それだけか。

まぁ、成ってみて嫌ならさっさと辞めてしまっても良いのかもしれないな。

最初からそれを条件に成れば良い。

すり寄ってくる家族は無視すれば良い。今更コバルト家の再興を!なんて言われてもな。

もし家族が来たら、

『すみません、どちら様ですか?』

なんて言ってやったら愉快だろう。

よし、そうだ。そうしよう。

ちなみに、秋人はリーザオ大国に行くと言っていて、最初は、『今リーザオ大国に行くのは危険だ』そう教えてやるつもりだったがスゲームカついたのでやめた。

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