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異世界で彫師になる  作者: ユタユタ
龍人
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襲撃?

襲撃?




ヘンリエッタの左耳の後ろに『シャッキ、シャッキ』と入れ墨を彫っていた。

俺の隣にはサーシャさんが居て、入れ墨を彫るところをじっと見ている。


「あまり血が出ないんですね」と、サーシャさんが言った。

「そうかい?」

「はい」

「確かに、あんま痛くないし」


と、ヘンリエッタが言った。

俺はヘンリエッタの頭を小突く。


「喋るなって言ったろ」


喋って顎が動くと当然耳の後ろの肉も引っ張られて動いてしまう。

それからはヘンリエッタも喋る事は無かった。

サーシャさんも気を使ったのだろう、静かにしている。

部屋の角には小さなテーブルを置いて、そこからは少しづつ煙が上っている。

香木だ。

客がリラックス出来るようにと置いた。

入れ墨は当然体に針を刺すのだから痛みが伴う。

リラックス出来ないと、長時間の入れ墨に心も体も付いていかない。

こっちの世界の人達は痛みに強い様だけど、出来るだけ心と体の負担を減らすためにはこういった物も有効だ。

本当は香木と一緒にリラクゼーション音楽とか流したいんだけど、流石にこの世界ではね。

入れ墨を彫り終わると、左手の法印に魔力を込めて、入れ墨を彫った箇所に触る。

彫りたての入れ墨の痕が赤く腫れていたのが、赤みと腫れが引いていく。


「おしまい!もういいよ」


俺がそう言うと、ヘンリエッタは体を起こして手足を伸ばした。

俺は左手の法印に魔力を込める。

左手には地水火風魂の法印が彫ってあってこれは遠くから見ると輪の法印に見えるようになっている。

例えば、火の法印に魔力を込めると火が出て、水の法印に魔力を込めると水が出るのだが、全部の法印に魔力を込めると、この世界を神様が作ったときに使った魔法。

『天地創造』

の下位魔法、『神癒』が使える。

名前通り、傷を治す事ができる。

『神癒』を発動させて入れ墨を彫った箇所を触ると入れ墨を彫った箇所が淡く光って、腫れと赤みが引いていく。


「あっ」


ヘンリエッタの頭の中を見るのを忘れてた。

次は右手の法印に魔力を込める。

右手の法印には時空重光邪と法印が彫ってあって、それは遠くから見ると、天の法印に見る事ができる。

この法印全てに魔力を込めると、

『万象』

という魔法が発動できる(命名は俺)。

この魔法は感知ってスキルの豪華バージョンで。

いろんな事を探る事が出来た。

その気になればこの村の人間が何をやっているのか瞬時に分かる。

魔力も食うし頭も痛くなるからそんな事しないけど。

そして、これを人体に使えば当然体の中の様子が分かる。

スリーサイズも明白だ。

とはいっても、ヘンリエッタのスリーサイズに興味は無い。

お子ちゃま体系だからな。

そんな事よりも、ヘンリエッタの頭の中には何故か水が溜まってしまい、その水はヘンリエッタの成長を阻害したり、傷の治りを遅くしている様だった。

『万象』

を、発動させて頭の中を探る。

朝見た時には少し水が溜まっていたが、今のところ溜まって様子は無いな。


「うん、大丈夫。水は溜まって無いよ」


と、俺が言うと、サーシャさんはホッとした様子で息を吐いた。


「ありがと」


とヘンリエッタは言うと俺に抱きついてきた。


「おいおい、早いぞ」


俺は鏡を二枚持って二人に渡した。

ヘンリエッタは二枚の鏡を使って自分の耳の後ろに彫られた入れ墨を見ている。


「ありがと」


ヘンリエッタはそう言って笑った。

もう少し大きかったらな。

ヘンリエッタは体が小さく中学生にしか見えない。


「じゃあ、宿まで送ってくよ」

「良いのですか?」

「いいよ、今日は二人が最後だし、今日は護衛が居ないんだろ?」

「そうなんです、調べものが増えたそうで、、、」


俺は立って背筋を伸ばすと二人をエスコートするような格好で部屋を出た。

そこに居たカナリアに部屋の片付けを頼むと外へ向かって歩く。

孤児院を出ると、サーシャさんが口を開いた。


「秋人様には奥様がいらっしゃったんですね」

「まあね」


きついのが三人ね。


「秋人様は素敵ですもの」

「そんな事ないさ」


最近持ち上げられる事が多くて照れてしまう。


「サーシャさんはいい人居ないのかい?」

「私は、、」と言ったまま、サーシャさんは黙ってしまった。


良くない質問だったかな、よく考えたらサーシャさんはヘンリエッタに付きっきりなんだから、サーシャさんにプライベートな時間なんて無いのかもしれない。


「ヘンリエッタは?そろそろ良い年なんじゃ無いのか?結婚の話とか来るんじゃあないの?」

「あるけど、来る男、来る男、お父様とお母様が断ってるみたいなの」

「何で?」

「遠くに行って欲しくないそうです」サーシャさんが答えた。

「それに、そのぉ、来る人、来る人、、。『変な人が多いんだ』って、、、」ヘンリエッタが言った。

「なるほどなぁ」


ロリコンの闇は異世界でも深かったか、、、。


「それより!秋人はどうなの?」

「俺?もう嫁はいいよ」


三人の嫁とセロンで手が一杯だ。


「そんな事言わないでさ、サーシャとかどう?」

「ヘンリエッタ様!」


サーシャさんがヘンリエッタを咎めた。


「まぁまぁ、これでもサーシャは王位継承権が有るのよ、200幾つだけど」

「へぇ!そうなの?」


サーシャさんを見る、確かに綺麗な人だし、教養もあった。礼儀もヘンリエッタよりしっかりしている。


「そんな、私なんて、、、」

「それに、もしサーシャを嫁にするなら、貴族にして上げられるわよ」


ヘンリエッタが無い胸を張った。


「ええ!サーシャさんは好きだけど貴族はちょっとな、俺はこのままの、気ままな暮らしが良いよ」


サーシャさんは礼儀も確りして良いかもしれないが、俺には礼儀といった物が皆無なのだ。

サーシャさんは下を向いてそのまま黙ってしまった。

そのまま、宿にエスコートして別れた。

この時の不用意な一言を反省するのは少し先だ。

顔を真っ赤にしながら、『好きって言った。好きって言った』と呟くサーシャさんには気付いていなかった。



豪華な宿だったな。

建物の外には門番も居たよ。

セキュリティー万全って感じでさ。

そんな事を思いながら孤児院へと1人でトボトボと歩く。

今日は時間も余ったし子供達と遊んでも良いのかもしれない。

日が長くなってきた、日が沈むにはもう少し時間が掛かりそうだ

目の前から目の前から武装した五人の男が歩いて来るのが分かった。

そいつらのレベルを見ると、8,10,11,13,15とある。しかし、HPとMP共に、多い奴で俺の六割ってところか、

対した事無いな。

そいつらは俺に近づくと、俺をぐるりと囲んだ。


「なんのようだ?」

「俺らはこの村の憲兵だよ。お前が秋人だろ?」

「そうだよ」


俺はそう言いながら、ゆっくりとポケットから手を抜いた。

この程度の奴等、その気になったら三秒もあれば十分だ。

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