憲兵達。
憲兵達
「マットさん、大丈夫ですよね?」
ガレットが聞いてきた。
王都から来た兵士達がこの村の事を色々と探って行った。
大丈夫な訳が無いがこいつには分からないらしい。
「領主代理はな。身に覚えがないと言っちまえばなんの問題も無い。俺らは、領主代理に『犯罪の疑いのある村人を教えはした』しかし、その村人が本当に犯罪を犯したと決定したのは領主代理だ。追徴課税を払えと言ったのも領主代理だ。俺らは領主代理から見返りに金品を受け取った訳じゃない」
「お給金は上がりましたけどね」
ガレットの脛を蹴りあげた。
「いって!」
「そういう余計なことを他で言うなよ」
「もちろん言いませんよ!」
ガレットは脛を手で撫でている。
「給料は上がったかそんなに上がった訳じゃない。せいぜい10%ほどだ。領主代理が溜め込んでいる金額のせいぜい1%。俺らを裁くのは無理だろう」
「じゃあ、問題は?」
「ギリーだ」
「あの行方不明になった彫師の?」
「殺されたに決まってるだろ!」
この村の彫師だったギリーは、素行が悪く各所で問題を起こしていた。窃盗、暴行、強姦など。
その問題をうやむやにしたり、無かったことにしたりと世話をやいてやった。
その見返りとして金品を受け取っていたのだが、受け取りにはサインを必ず求められた。
ギリーは、頭の悪いあの領主代理とは違い狡猾だった。
「でも大丈夫じゃあ無いです?だってギリーが居なくなって大分経ちますよ?」
「確かにな、あの帳簿が見付かれば、俺達は即逮捕だからな。俺らが捕まらないという事は、あの帳簿が見付からないって事だ」
「そうですよ。たとえ何を聞かれても、知らぬ存ぜぬを決め込めばなんとかなりますって!」
「しかし、あの帳簿が無くなった訳じゃない」
「まあ、そうですけど」
「ギリーの性格を考えても、絶対に空間魔法でしまって、常に持っていたに違いない」
「今頃王都でプラプラしてんじゃないですか?」
「家を探されて、死体が見つかって、挙げ句に指名手配されてか?」
「じゃあ、隣の国のリーザオ王国でプラプラしてるんですよ。大丈夫ですって」
「誰かに殺されたんだよ!そうじゃなきゃ、家を綺麗にして、死体を土にしっかり返して、その上で家を出ていくに決まってるだろ!」
「じゃあ誰が殺したんです?殺したのなら、何で俺達を脅しに来ないんですか?『ばらされたくなければ金を出せ!』って」
確かにその通りだった。
俺らはこの村の住人から嫌われている。
大体の村人が俺達を貶めたいと思っているだろう。
「それに、もしも殺したのなら『俺が殺した!』って名乗り出ても良いじゃないですか。ギリーは殺人も犯していて、そのギリーを殺したのなら、もちろん罪には問われないですし、むしろ英雄ですよ?」
「名乗り出ることが出来ない理由があるはずだ」
「まぁ、その可能性も無きにしもあらずですけど。でも、名乗り出ない理由は何だと思いますか?」
「分からん」
「じゃあ、そのギリーを殺したのは誰なんですか?」
「分からん」
「じゃあ、どうしようもないじゃないですか!諦めましょうよ。考えるだけ無駄ですよ」
「でもだな!ギリーを殺した奴があの帳簿を持っている!これは間違いない!間違い無いんだよ!」
・
(秋人視点)
あのギリーとかいう、クソ彫師。
ぶっ殺しておいて本当に良かった。
この村の彫師だったギリーという男は俺の嫁である、ドニーにオイタをした為、お亡くなり頂いた。
その時にギリーが空間魔法で持っていたアイテムを全て俺が頂戴したのだが、その中にたくさんの神木の樹液があったのだ。
これが無かったらとっくに神木の樹液は無くなっていた。
「はい、終わり」
入れ墨を彫っていた場所を『神癒』を発動させた左手で叩いて治した。
「ありがとうございました」
客ははそう言って立ち上がると服を着た。
客にバイバイをして見送ると部屋を片付ける。
とは言っても、カナリアがほとんどやってくれるんだけとね。
俺は片付けが苦手で、面倒になると、兎に角全て空間魔法で仕舞ってしまうという悪癖があった。
それを見かねたカナリアが片付けをかって出てくれた。
前のこの村の彫師だったギリーから頂いたアイテム一式だって、目ぼしい物だけ取り分けて、後は適当に放り込んであるだけだ。
整理しなきゃな。
「お疲れ様です!」
カナリアが部屋に入ってきた。
早速片付けてくれるのだろう。
初めて会った時のカナリアは。それはもう、ガリガリで。
というか死にかけていた。
それが今は、顔の血色も良く、肌にも張りがある。
「胸だってどんどん大きくなってますよ」何かを察したカナリアが言った。「ユリナお姉ちゃんなんてすぐに抜いちゃいますよ」
カナリアは死にそうだった所を俺に助けられて。
俺の事が好きになったらしいのだが、なんせまだまだ子供。顔立ちも幼いうえに体も小さい。
まぁ、胸は少しは大きくなったのかもしれないが。
チラリとカナリアの胸を見る。
ユリナをすぐに抜く事は出来ないな。ユリナの胸も徐々に大きくなっているのだ。
「まっ、もっと、大きくなってからだな」
「胸がですか?」
「違う!年齢」
それからカナリアの頭を撫でて、『いつもありがとな』って言うと。カナリアは嬉しそうに笑った。
笑い顔見て、『まだまだ幼いな』なんて思った。
その幼いカナリアはテキパキと部屋を片付けている。
カナリアは自分達より幼い子供達の面倒を見て、俺の部屋の片付けをし、俺の入れ墨の予約の管理までしている。
入れ墨のカウンセリングに来る客にはお茶も出してくれる。
しっかりしている。
まだまだ幼いのにな。
プライベートな時間なんて無いんじゃないか?
ん?まてよ。それって、俺のせい?
よく考えたら俺に関する仕事が多いような、、、。
俺ってカナリアに迷惑な潜在的だった?
カナリアに聞いてみようとカナリアに口を開けかけた時に、
『ドラゴンだ!』
部屋の外で子供達が声を上げた。
「へぇ、この間来たばっかりなのにな」
「本当ですね。もしかしたら卵が孵ったのかもしれませんね」
「そうなの?」
「そうですよ」
カナリアはそう言ってまとめた俺の道具を俺へと差し出した。
俺は右手の空の神字に魔力を込めてその道具を閉まった。
「良いな、私もドラゴン見てみたいな」とカナリアが言った。
「えっ?まだ見てないの?」
「忙しくて、、、」
カナリアは少し疲れた顔をして言った。
確かにな、子供の面倒、俺の面倒に、俺の面倒。
ドラゴンを見に行く、そんな余裕なんて無いか。
「よし!じゃあ見に行こうぜ!」
俺はそう言って窓を開けるとカナリアを抱えた。
「えっ?!でも!仕事が!」
「大丈夫!なんとかなるって!」
重力魔法の第二階位を発動させ、重力のクザビから解き放たれると。窓枠を蹴って空を飛んだ。




