バイブル
バイブル
セロンの首に入れ墨を彫っていた。
デザインはセロンが昔住んでいた村に咲いたという花がモチーフだ。
首の後ろで咲いた花が風で花びらが舞い、花びらは首を一週するというものだ。
この入れ墨は、セロンの罪悪感に反応して小さくなるという性質を持っていた。俺に対して罪悪感を強く持つと最後には首が切れてセロンは死んでしまうのだそうだ。
こんな物は彫りたくなかったのだけど、セロンのたっての希望でこの入れ墨を彫っていた。
「フッフッフ、これで私もやっと秋人の性奴隷になることが出来る!」
とセロンは喜んでいる始末で、何とも俺を不安にさせた。
この入れ墨は奴隷紋という。
奴隷の証拠のようなものだ、この国では大分廃れてきたようだが、人を奴隷として労働力として多用していた頃の名残だ。
この国では奴隷制度を段階的に撤廃している途中といった所で、大方成功している様子だ。
そんな中セロンはというと、特殊な性癖を持っていた。
何処から仕入れてきたのかエロ本のような物を持っていて、それを『バイブル』と呼んでいた。
その内容は、チョット言いにくい内容で、それを読んでは、
「秋人はもっとSとして勉強するべきだと思う!」
と言うのだった。
どんなに俺がSとして才能があるか力説してくれるのだが俺は『ポカン』といった感じだ。
どうやらセロンは俺にSとして凄く期待しているようなのだ。
何でこんな事になったのだろう?
そんな事を考えながら入れ墨を彫り終わると、セロンの入れ墨に『神癒』をかけて入れ墨で出来た傷を治す。
彫りたての入れ墨から赤みが引けて色が落ち着いた。
セロンは鏡で自分の入れ墨を見て恍惚とした。表情を浮かべる。
「あぁ、」
艶かしい吐息を口から漏らしている。
「秋人。いや、秋人様だな」セロンがじっと俺の目を見る。「私、セロンは一生秋人様の性奴隷としてご奉仕することを誓います」
「あっあ、ありがとう?よろしく頼むよ?」
セロンは腰をクネクネさせている。本当はかまって欲しいんだろう。
「すまないな、構ってやれなくて、その代わり村を出たらいっぱい構ってやるから」
「大丈夫だ。分かっている」と言ってくれた。
村に居るときは嫁の三人を順番に可愛がる事になっているため。セロンとは村を出るまでお預けだった。
「これが『お預け』プレイだな?分かっているぞ!」セロンは自分の手を自分の体に這わせる。「わ、私はご主人様が構ってくれるまでは、じ、自分の手で自分を慰めています」
そう言うと、羞恥心で自分の頬を赤く染めた。
重症だな。
本当はアズルトについてどう思うか聞きたかったがそんな話が出来る雰囲気では無くなってしまった。この雰囲気の中からいきなりアズルトの話をしたらセロンは絶対に怒るだろう。




