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異世界で彫師になる  作者: ユタユタ
龍人
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派遣彫師

派遣彫師



ヘンリエッタの要望は、やはり幼く見えるのがコンプレックスでそれを入れ墨で解消したい。というもののようだ。

日本でも当然そうだが、この世界でも子供は入れ墨を彫らない。

それを、入れ墨を彫る事で一人前というか、成人したとみなされたいそんな所があるのだろう。

しかし、入れ墨を彫るのにサーシャは懐疑的なようだ。

それは、ヘンリエッタの父親と母親もどうやら同じようで、ヘンリエッタの可愛さを損なうと考えているらしい。

多分それが余計にヘンリエッタは嫌なんだろうな。

子供扱いされている。

可愛い、可愛いと言われるだけじゃなくって、キレイだって言われたい。

好きな人でもいれば当然そうなるだろう。

回りがもっと大人扱いしないとコンプレックスは無くならないだろうな。

そんな事を思いながら話を進めた。

ヘンリエッタは少しでも体が大きくなる可能性があるなら、体に入れ墨は入れないと言った。

そうするとそんなに選択肢が無くなってくる。


「耳の後ろとかどうだ?」


ヘンリエッタは眉をひそめて、サーシャさんは首をかしげた。

え?いまいち?


「いや、ツーウェイで使えて良い感じかと、、、」


ヘンリエッタは今長い髪を下ろしている。


「正式な場所ではそのまま下ろしておけは入れ墨が見えないし、友達と遊ぶ時とかは入れ墨の反対側へ、髪の毛を纏めちゃえば、ちょっと大人っぽい自分も出せるだろ?」


おずおずと、ヘンリエッタの顔を見ると、ひそめていた眉が広がり、目が輝いている。


「ヘンリエッタもどうだ?サーシャさんやお父さん、お母さんの気持ち、ヘンリエッタの事を『可愛い、可愛い』って言ってくるその気持ちも、どうだ?大切なんじゃないか?」


ヘンリエッタは小さく頷いて、サーシャさんは下を向くことで表情を隠している。

けど、好感触だ。


「家族の前出は入れ墨は髪の毛で隠しておいてさ、好きな男でも出来たら、入れ墨を出してキレイな自分も出してみると良い」

「うん!」


ヘンリエッタは大きく頷いた。やっぱり子供みたいだ。


それからどんな入れ墨を彫るか決めた。

決めたと言っても、『ブラックウルフ』の簡易型、召喚法印を彫るとヘンリエッタは最初から決めていたようだ。

ブラックウルフの簡易型、召喚法印は。

危険を察知すると、飼い主というか、彫られ主にだけ吠えて危険を教えてくれるというものだ。

これは簡易型なので、実際に犬が法印から出てきたりはしないが、臭いをのある毒物ならほぼ関知してくれるので、貴族や、王族に人気がある。

それからいくつかのイラストを描いてヘンリエッタに渡した。

ヘンリエッタはその紙をサーシャさんに渡し、サーシャさんはそれを大事そうにしまった。

それからカナリアに彫りの予定を確認して明後日のに来てもらうことになった。


「じゃあ、何処に彫るのか。耳の後ろに彫るにしても右なのか左なのか、しっかり決めて。デザインもどれが良いのか」


ヘンリエッタとサーシャさんは顔を見合わせる。


「そのぅ。本当にもらった絵の中から選ぶような事をしても良いのか?」

「あぁ、もちろん。もしくは、もっとこうしたいとか、ああしたいとか。意見が有ればもちろん聞くよ?」


彫る前にゆっくり考えるのはとても良いことだ。本当なら何日でもゆっくり考えて欲しいが、時間がそんなに無いらしく出来たら明後日には彫って次の日にはこの村を出たいらしい。


「本当に有難うございます」サーシャさんが頭を下げた。

「ん?何が?」

「ヘンリエッタ様のその、傷が治りにくかったり、、、」


下垂体に貯まってた水の件か。


「ああ、いいよ。気にしないで。だって、本当に治ったか分からないからね」

「お礼はどのように?」

「要らないよ」


と言ってから大事なことを思い出した。


「わりい、大事なことを忘れてた。俺さ、彫師ギルドに入って無いんだよ」

サーシャさんは驚いた顔をして、

「では、神木の樹液はどうされてるのですか?」

と言った。


それから事の経緯を説明して。ヘンリエッタから『国選彫師』に認定してもらえる事になった。

これでなんとか『神木の樹液』を手に入れる事が出来そうだ。


「助かったよ」


そう言ってヘンリエッタとサーシャさんを送り出す。

サーシャさんは最後深く頭を下げて去っていった。外で二人の帰りを待っていた模造刀君は俺を一睨みしてから二人の後を追いかけている。

フッ、既に『国選彫師』になれる事が決定した以上君に媚を売る必要も無いのだよ。


「秋人お兄ちゃん」


カナリアにそう呼ばれ振り返ると。そこにはブラウンの髪の毛と白い肌をした女の子が立っていた。カナリアだ。


「お兄ちゃんに会いたいって人が居るんだけど」


と遠慮がちに言った。

珍しいな、入れ墨の客なら予約状況はカナリアに一任しているし。この時間帯は俺は自由時間で、客には会わない事はカナリアは良く分かっていた。


「どうしたの?」

「それが、彫師だって言うの。この村の領主代理に『この村の彫師になって欲しい』と請われて来たんですって」

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