それはわかりません。
それはわかりません
ヘンリエッタからもらったお茶を飲み干すと、この部屋のドアの向こうで聞き耳を立ててるセロンに。
「カナリアにお茶をお願いして!」
と、頼んだ。
セロンの気配が移動する。
「さてと」
ヘンリエッタから奪ったお茶の入っていたコップを机に置く。
「で、分かった事だけど。ヘンリエッタの脳の下垂体に水が溜まってる」
ヘンリエッタとサーシャさんは『ポカン』としてる。
下垂体なんて知らないよな。
「えっと、脳の下垂体って場所に水が溜まってるせいで『成長ホルモン』があまり分泌されていないのかもしれない」
「それの何がいけないの?」
「体が大きくならない」
ヘンリエッタの顔が驚愕に包まれる。
「傷の治りも遅くなる」
この世界の住人の生体構造が俺と同じならな。
「じゃあ!そのカスイ何とかから水を抜けば私の体は大きくなるのか?!」
「いや、それは期待のしすぎかな?」
ヘンリエッタは成長期を過ぎてしまった。
「傷の治りが良くなるかも。ぐらいに思って欲しい」
俺がそう言うとあからさまにヘンリエッタは元気を無くした。
「でも!傷の治りが早くなるんですか!」
サーシャさんが食いついてきた。
「うーん、、、。下垂体の水が原因で、傷の治りが遅くなっていたなら、これで早く治るようにはなるだろうけど」
あまり期待させるようなことを言えない。
後で何も変わらなかったらショックだろうからな。
「十分でございます」
そうサーシャさんは言った、ずっと心配だっただろうな。
左手の法印に魔力を込める。頭の水を吸収させるだけだ。MPは少しで良いだろう。
『神癒』をヘンリエッタの頭に掛けて、下垂体の水が体に吸収されるイメージをした。
ヘンリエッタの体が淡く光るとサーシャさんは驚いた顔をしている。
そっか、模造刀君の腕の骨を折った時は居なかったもんね。
ヘンリエッタの体から光が消える。
「今のは!」
サーシャさんが声を出した。
「『神癒』だ」
何故かヘンリエッタが偉そうに言った。
その時『トントン』とドアが叩かれる音がして、カナリアがお茶を持ってきてくれた。
「ありがとな。スゲー旨かったよ」
と俺が言うとカナリアは嬉しそうに部屋を出ていった。
「さて!!」
MPを出しきって疲れた体をストレッチして伸ばす。
「もしかしたら体が大きくなるかもしれない。けど、大きくなったとしてもそんなには変わらない可能性が高い」
ヘンリエッタは俺を真っ直ぐに見て頷く。
「その上で何を彫るか。しっかり決めようか」
俺がそう言って笑うとヘンリエッタも笑った。




