そんな、まさか。
そんな、まさか。
冒険者ギルドに着いてドアを開ける。
「あれ?エルザいないじゃん」
独り言を言いながら訓練場へと歩く。
「おお、秋人!」
ギルド長のじいさんが前から歩いてきた。名前がクロード。公衆浴場では体を洗わずに湯船にいきなり入るという特技を持っている。
「よっ」俺は手を上げて挨拶する。「じいさん元気?」
「お前は、相変わらず年上を敬わないのぉ」
じいさんは冒険者としてはかなり有名だったそうでレベルがなんと45もある。
出会った中で最強だ。
「敬ってるじゃん?」
全く意味不明だぞ?じい様。
「まぁ、いいわい。それよりの、今王族が来ておる」
「はぁ」
「その王族になんとか気に入られて『国選彫師』にしてもらうんじゃ!」
「ふーん」
「ふーん。って!お前は!このままじゃと神木の樹液が手に入らなくなるんじゃぞ?!それに、簡易入れ墨用の道具も!」
「あぁ、そうそう入れ墨シール」
「なんじゃ?その間抜けな呼び名は」
この世界だと、10才になったら体に『治癒能力上昇』の法印を体に彫るのが一般的だった。これを彫っておけば少しの風邪や、傷はあっという間に治る。
その法印を孤児院の子供達に彫りたいのだけど、まだ小さい子供が多く、大きくても10才。この世界の人は体が小さくても入れ墨を彫ってしまうようだが、地球の日本で彫師を目指していた俺としては体が大きくなるまでは彫りたくない。
そんな、まだ体が小さくて入れ墨を彫れない子供達に良い方法がないか探していたら。その簡易入れ墨を勧められた。
「その、ギルド長のルートはもうダメなの?」
今まではギルド長が個人的なつてを使って仕入れてくれていた。
「もう駄目だそうでな。ギルドの会長らに目を付けられてしもうたと言っておったわい。大体お前は樹液を使いすぎじゃ!」
そんな事言われてもな。
神木の樹液はまだ余裕があるけど、入れ墨シールの材料が心もとない。
「その王族はどんな奴等なの?」
「王位継承権第23位のヘンリエッタ様じゃ。護衛の人間も四、五人は来とるはず」
「ふぅん。じゃあ頑張んなきゃな」
「そうじゃ!」
そして練習場の前に来ると、そのドアを開けた。
中にはエルザがいた。
「あっ、秋人じゃん」
エルザはそう言って俺に抱きついてきた。
「おっ?」訓練場の隅にバルザックと昨日腕をへし折った模造刀野郎がいた。「バルザックは何やってんの?」
「ほら、この前秋人と揉めてたアイツがギルドに来たからバルザックさんにしめてもらったの」
ナイス!嫁!
「あっ、ダメじゃん!」
俺の大きな声に二人が俺の方を向く。
「バルザック、そいつイジメちゃあダメだぜ!だってそいつ剣士じゃあ無いんだからよ!何てったって、腰の剣は模造刀なんだからな」
俺の言葉に模造刀野郎の顔が赤くなっている。
「ん?ちょっと待てよ?」
その声に振り向くと後ろにはギルド長がいる。
「アイツ、王族の護衛じゃね?」
ギルド長が首を傾げながら言った。
え?マジ?
エルザの顔を見ると目を見開いて、「嘘でしょ?」と言った。
も、もしかして。
「他分そうじゃろ。見た事ないしのぉ」
「この間俺、アイツの腕の骨を木剣で叩き折ったんだけど、、、。」
「え?嘘じゃろ?」ギルド長の顔が青くなる。
トゥルーです。




