ドニー
その2 ドニー
歳は23歳。身長は160ぐらいだろうか。体重は53ぐらい。バストはGぐらいかな。
「人の体をじろじろ見てんじゃねぇよ」
ドニーに言われる
「いや、結構当たるんだよ。」おっと、バストが大きいプラス1キロだ。
「何の話だよ」
そう言ってドニーはため息をついてグラスを机に置いた。ドイツの民族衣装を着ている、大きな胸がさらに強調されている。全くけしからん!
ドニーはさっき助けさせられた女の子だ。あのあと、ドニーの家族で経営している宿に来ていた。
「さっきの人達は大丈夫?また来るって言っていたけど」
とりあえず話をずらす。
「まぁねしょうがないよ、客商売してたらどうしたってさ」
「ふーん」そんなもんかな。
「それより、あんたは何処から来たんだい。見慣れない格好だけど」
「そうなんだよ」待ってました!この質問。「それがさ!俺にも分かんないんだよね」
「なにいってんの?」
ドニーは若干嫌そうな顔になる。そりゃあ厄介事く首を突っ込みたい人間は居ないだろう。だが離さん!
「いや、聞いてくれよ」
「いやぁ、今日はありがとね。じゃあこの辺で、、」ドニーは椅子から立ち上がった。
「ちょっ、ちょっ、待ってよ」俺は立ち上がって、かぶせぎみに言う。「さっき助けたじゃん!今度は俺を助けてよ!」
「ガン見したからチャラだよ、チャラ!」
「いや、みてねーし!全然みてねーし!」
何処を?と聞かれると困るのだが。
ドニーは俺の目を見たまま体を揺らす!その瞬間を見逃すまいと視線が下へ動く!プルンプルンしてるぜこいつ!!
「ほら、やっぱりみてんじゃん!」
「、、、、」
ぐうの音もでねぇ。良いものを見せてもらった。しかし!ここで終わらす弱い男では無い!
「ここは宿屋なんだろ?」
「まぁ、そうだよ。泊まる?それなら少しは相談にのつてもいよ。一泊大銅貨8枚」
あー。金ね。そうだよね。終わったか、、、。
「住み込みで、、、」
ダメもとで聞いてみる。
「、、、」
ドニーはじっとした顔でこっちを見る。よく見ると可愛い顔してる。黒目黒髪のアジア系美人だ。髪を後ろで束ねて、肌は白く、ほほには少しそばかすがある。
「あんた彫師なんだけ?」
「そうだよ!」
そうだ!彫る代わりに泊めてもらう的な!
「ちょっとお母さんに聞いてくる」
そう言ってドニーは厨房へ歩きだした。
ふぅ、と一息つく。もう一度椅子に座るとグラスを持った。グラスは半透明であまりしっかり精製されていないのが分かる。触った感じもざらざらしていた。
中の水を少し口に含む。硬水だ、そこまできつくはないけれど、やっぱり軟水のほうが良いな。まぁ、でも飲めないこともない。全部一気に飲み干すと背筋を伸ばした。
ドニーは話し込んでるようなので背中に背負ったリュックを下ろす。中身を確認することに。リュックの存在にはさっき気付いたのだけど、なかなか中を確認するタイミングが無かった。
どれどれ、リュックは昔登山用にかったリュックだったモスグリーンのどうでもいい安物のリュック。紐をほどいて中を確認する。
出てきたのは、まずはダマスカスナイフ。20センチ程の黒い刀身に銀色の刃紋が幾重にも重なっている。前にじいちゃんに無理を言って買ってもらった物だ。
その次に出てきたのは下着類だ、ボクサーパンツとシャツが三枚づつ、あと手拭い、、、。手拭いの中から金塊が出てきた。どうしよう。とりあえず隠す。全然貴重品じゃあ無い可能性もあるからね。というか、ただの鉛の可能性が高い。でもまぁ詐欺にぐらいなら使えるだろう。背にはらは代えられん。
次に、黒い箱が出てきた。中を確認するまでもなく中身が分かる。じいちゃんの手彫り用の道具一式だ。
じいちゃんは入れ墨彫師だった。厳しいけど優しい人たったと思う。
俺が物心つく頃には、俺とじいちゃんの二人暮らしだった。俺ら以外はわりと早めにさくっと亡くなってしまったらしい。話したくい無かったようで、ほとんど何も知らない。息子夫婦が死んだ話なんてしたく無いよな。
ちょっと後悔してるけど、でも聞けなかったよ。
じいちゃんは入れ墨を彫ることで俺を養ってくれた。彫り師としてはそこそこ有名だったように思う。どっかの組長さんとか来てたり。一緒に飲みに行っていたり。
俺はじいちゃんみたいになりたいって思った。皆はさ、きっと色々思うだろ?お父さんみたいに会社で頑張りたいとか、お母さんみたいに料理が上手くなりたいとか、凄い良いことだよ、家族を養うって、家族に美味しいものを食べて欲しいって。あと、じいちゃんみたいに強くなりたいとか。婆ちゃんみたいに優しくなりたいとか。凄い素敵だと思うよ。
でも俺はじいちゃんしか居なかったんだよ。
もちろんじいちゃんの事は大好きで尊敬してる。彫師になりたいって思った。でも、他に何にに成りたい?て聞かれるとわかんないんだよね。じいちゃん以外の背中を見たことが無い。
きっと、じいちゃんはそれをわかってたんだよね。二言目には良く『仕事なんざ何でもいい』って言ってた。『生きて行けりゃあ何だっていいんだ』って。『彫師以外にも仕事はある』って。
でも!じいちゃんみたいになりたいって思った。彫師になりたいって思った。強くなりたいって思った。
じいちゃんははなんだかんだ言ってそう言れるとと喜んでいた。やべ、思い出したら泣きそう。
黒い箱をリュックに戻す。
「あんた彫師なんだって?」
かっぷくのいい女性がそう言った。ドニーのお母さんだろう。髪の毛の色と目野色が似ている。全体的にボンボンボンだ。少し期待していたためショック。
「そうだよ」
すっかりテンションが落ちていた。
「朝晩の配膳を手伝うなら飯二食と倉庫を貸してやる」
むすっとした顔で腕を組んでそう言うが怖さは無い。○の組み合わせで全身書けそう。
「あっ、ありがとうございます!」
いっきにテンションを上げる。行くところが無いのを忘れてた。
「少しでも面倒起こしたら出ていってもらうからね!」
「はい!頑張ります!」
放り出されてはたまらない、やる気を見せることにした。
それから少しドニーに色々教えてもらった。
この国の名前はスヴェン王国に属するカロイラという村らしい。主な産業はそこそこ採り尽くした坑山と、農業、山の魔物からは結構良い素材が取れるらしく冒険者が多いらしい。腰の木刀を見て、てっとり早く稼ぐなら冒険者がいいと言われた。
通貨は小銅貨、大銅貨、小銀貨、小金貨の順らしい。小銅貨が100円ぐらいだろうか、大銅貨になると◯が一つ付き、小銀貨になるともう一つ◯が付いて、小金貨だとさらに◯が一つ付く。そんな感じ。それ以上は宝石を使うようだ、ちなみに、宝石の売買には国選の鑑定士のサインが必須だそうだ。
他にも色々聞いた。トイレは水洗だ、ただし水は魔法を使って流してるらしい。調理に使う火も魔法を使うようだ。薪は暖房以外ではあまり使わないみたい。可燃性のガスは使わないのかと聞くと、『嘘でしょ!何言ってんの!』って顔をされた。
1日は24時間で一年は394日らしい。惜しい。
現在はスヴェン王国暦185年4月8日11時ぐらいだそうだ。
それから魔法を教えてもらった。水魔法と火魔法だ、これでトイレの水を流すのと、簡単な洗濯とその乾燥とできる。魔法は簡単だった、魔力を理解するのに魔力を流されたのがめっちゃ痛かったけど。
あぁ、どうしよ、ヤバい。ここ地球じゃあ無いよどうしよ。
ゴブリンにどこどこの農作物を荒らされてとか、魔法がどうだとか、 平静を装いながら驚きの連続だった。とりあえず記憶喪失という事にした。
「いやー。記憶喪失つらいわー」と言うと。白い目で「ふーん」と言われた。信じてねぇなこりゃ。
マイルームを紹介してもらった。そこは農機具とかをしまう部屋で、床は土だった。藁だったら馬小屋から適当に持ってきて良いらしい。直床では何とか寝ずにすみそう。金のない冒険者はだいたいこんなんらしい。凄いね。皆丈夫だね。
夕方までは好きにして良いみたい、そっこーで冒険者のギルドに行く事にした。こんな生活続けられんよ。いつの時代も求められるのは楽して稼げる仕事だよ。