じいちゃん
じいちゃん
「この村は以前は隣の国にあってな。法印を彫った人族には勝てず、虐げられてきた。村を襲われては村人を拉致されたり、女は強姦されたりな。それを2年前の魔物が大発生した時にこの場所へと逃げてきた」
セロンは今は他の獣人達と同じ様な格好をしている。
「犬神様も?」
馴れない酒を口に含む。味はウィスキーに近いような気がする。
「そうだ。犬神様は結局何処でも良いらしい。結局空間ごと作り替えるからな」
「なるほどね」
「ここに移ってからもなかなか。魔物の襲撃が多くてな。食べ物もオーク達の肉ばかりで、栄養不足から体調を崩し、死ぬ者とのも多い」
苦労が多かったようだ。
「あとさ」セロンが忘れているようなので急かす。
「あぁ、すまない。いつの間にか愚痴になっていた」
セロンも酒を口に含むが口に合わないようであまり進んでいない。
「獣人達にも入れ墨を彫ってくれた人族が昔はいたんだ。その人族の名が『ゲン』と言ったらしい。そのゲンという人は朗らかで優しくてな獣人にも分け隔て無く接してくれたそうだ。しかし、それは二百年ぐらい前の事だ。ゲンという人族と会った事のある者はもう生きていない」
「そうか。どんな顔だったかは分からないか?」
「顔は分からないが。背中に『リュウの入れ墨』があったらしい。リュウというのはドラゴンの事だそうだ」
俺の背中にも龍の入れ墨がある。
「その、秋人のお祖父様がゲンという名前だったのか?」
「そう。そして俺の入れ墨の師匠」
「ん?!では秋人は彫師なのか!」
「そうだよ」
言ってなかったか?
「早く言ってくれ」
セロンが疲れた顔をしている。
言ってなかったらしい。
「まぁ。結果は良かったがな」
セロンの顔が赤い。
そうだ!とうとう俺にも奴隷が出来た!!
エロいあれこれを!
自由自在!
しかも!その相手が、セロン!
メリハリのあるボディ!可愛い顔!
俺のしたいように弄っちゃお!
むふふ。
あぁ、どんなプレイをしよ!
でも、まてよ?
セロンはどうなんだろ?
俺の事どう思ってんだろ?
セロンが嫌がる事は絶対にしたくない。
俺はハッピー!
セロンもハッピー!
そんな関係がベストだけど。
嫌がるセロンを無理矢理なんて最低だよな?
セロン?
セロンは俺の事どう思ってるんだ?
(セロン視点)
何故だ?
不思議と秋人の奴隷を勧められた女達はそれを拒んだ。
何故?何故秋人の奴隷になることを拒む?
こんな光栄な事は無いだろう。
奴隷の何が嫌なのだ?
秋人の奴隷だぞ?
秋人は強く、優しい。
そして体を舐め回すように体を見てくれるのだ!
私はこれのお陰で生きている実感を感じる事が出来る。
誰も秋人の奴隷にならないので私が『秋人の奴隷になる』と言った。
『巫女様が奴隷になるなんてやだ!』
という奴がいるが、今までも十分奴隷だった。
今まではこの村の奴隷だったが、これからは秋人の奴隷になるだけ。それだけの話だ。
私が奴隷になるのが嫌だと言っているが。
きっと、自分達の奴隷が居なくなるのが嫌なだけだろう。
大丈夫だシュナは私より巫女に向いている。よりそれらしく振る舞うだろう。
げんに、シュナが巫女を引き受ける意思を見せると、私が奴隷になることを皆が認めた。
それから宴になり秋人が自分は彫師だと言った。
まさか!と思ったが朝の戦闘でオークキングを倒したのは札術だったそうだ。
札術は神木の樹液を使わないと出来ない戦闘方法でたしかに秋人は神木の樹液を持っていた。
そして、神木の樹液は彫師でないと入手出来ない。
ここで、秋人について皆に説明する事にする。
ちょっと意地悪だったかもしれないが、誰にでも少し考えれば分かったはずの事だってある。
「改めて秋人の紹介をしたいと思う!秋人は単独でオーク百体とオークキングを単独で撃破してくれた!そして、傷を負った戦士の傷を『神癒』によって治してくれた!」
女達の秋人を視る目が変わるがもう遅い。
「皆に配った砂糖の固まりも秋人が譲ってくれた物だ!」
女達が慌てている。
「そして、秋人は犬神様に呼ばれて会話をし!」
これには村人全員が驚いた。しかしまだまだだ!
「しかも!秋人は彫師だという!神木の樹液を確かにもっていた!」
村が歓声に包まれる!
「秋人は皆に彫っても良いと言ってくれた!」
より大きな歓声と共に、涙を流す人がいた。
我々獣人は長く虐げられてきた。
昔は我々獣人の方が人族よりも強かった。だが、これを変えたのが『法印』だ。
我々より強い魔力を持つ人族は法印によって様々な力を得て。我々を簡単に越えた。
この国では大丈夫だが、隣の国では酷かった。
村が襲われ略奪や人拐い。
当然多くの獣人達が死んでいった。
この国では私達を襲う人族はいないかもしれない。
だけど法印で力を強めたいというのは我々の悲願だった。
秋人は男達に囲まれて質問攻めにされる。
女達は遠くから秋人に近付こうとしているがもう遅い。
秋人は私のものだ。いや、私が秋人のものなのか。
口に合わなかった酒には、秋人が入れてくれた砂糖の塊が沈んでる。
口当たりが良くなり呑みやすくなっていた。




