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異世界で彫師になる  作者: ユタユタ
龍人
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一件落着

一件落着



セロンのお尻を見送ると死んだオークの左耳の回収をして、土に返すを繰り返す。

ドラゴンブレスで眠らなかったオークは、死体ごと空間魔法でしまった。討伐証明以外も金になると良いんだけど。

さて、右手の法印に魔力を込める。

『万象』を発動させる。

ん?セロンが変な所にいるな。

あと、村の獣人達が苦戦しているようだった。

犬神様はよく分かんない。遠くに居るのかな?

セロンはちょっと違う所に用事があるようなので、苦戦している獣人の処へと行く事にした。

村の中を通って南へ、桟橋のあった方へ行く。

村の中は騒然となっていた。

昨日は見なかった小さな子供、それに女性もいた。

むふふ。

見ているのが分からないようにチラチラと、盗むようにして見る。

みんな良い体をしてる。胸から腰、そしてお尻だ。

う~む。獣人の皆様は発育が宜しいようですな。

良いですぞ!良いですぞ!

しかしなぜか皆俺を見ると逃げていく。やはり人族は嫌われているのか?

観照しながら村の中を歩いていると前から傷を負った獣人達が来た。

おっ。苦戦している様だったから、参戦しようと思ったんだけど、もう皆で倒してしまったようだ。

観照に時間をかけすぎたかな。


「貴様!こんな所で何をやっている!」


勘違いをしたのだろう。傷を負った獣人が俺に掴みかかってきた。

しかし、逆に獣人の首を掴んで締め上げる。


「ッグ!」


獣人の顔がみるみる悪くなっていく。


「秋人。すまない」セロンが獣人の中から出て来た。「秋人は北のオーク達を殲滅させている」


セロンのその声に村が驚愕に包まれる。

俺はゆっくり手を放した。



(セロン視点)

私を見る秋人の視線に名残惜しさを感じつつ走る。

速く餌を土に返さなければいけない。

この村が魔物に襲われるという事態を作り出したのは私だ。

村の四方に殺したオークの死体をぶら下げてこの村へと魔物を誘ったのだ。

秋人に恩を作るため。

秋人の居場所をこの村に作る。

その為に手段を選ぶつもりは無かった。秋人にはこの村にいて欲しい。

ずっとずっと。

秋人が居なくなったら私はまた透明になってしまう。

もう耐えられない。

秋人が居ないなんて耐えられない。



何とかオーク達を釣る為の餌を処分して村へと向かった。

木で出来た門を潜ると、無理矢理息を整えて村の中心へと向かう。

秋人は涼しい顔で一人の獣人の首を掴む。


「秋人。すまない」


秋人に謝ってから秋人への誤解を解いた。

それから怪我人を一ヶ所に集めさせてた。


「さてさて、出来る事は少ないのだがな」


治癒能力上昇の法印を怪我人達に付きっきりで書いて、出来るだけ早く傷が治るようにするしかない。

速く秋人と二人になりたいのだけど。巫女の仕事を優先しなければいけない。


「おれ。治そうか?」

秋人が言った。

「治すって?」


思わず聞き返した。


「えっと、『神癒』って分かる?」

「分かるが、まさか!」

「使えるよ。その代わりざっとだけどね。ざっと」


秋人は『そんなにまだ魔力無いんだよね』と言いながら負傷者を集めさせた建物に入ると一人一人に触れて傷を癒していく。


「血管とか骨とかは治すけど後はいける?」

「大丈夫だ」


獣人はそもそも体の治りが速い。体の主要な部分が治れば大丈夫だろう。

傷を治された獣人達の目の色が変わっていく。

さっき秋人に掴みかかった者は、治されると頭を地面に擦り付ける。


「さっきの無礼を許して欲しい」

「いいよ。俺もやり過ぎた。ごめんな」


秋人は再び左手に魔力を込めて次の者を治す。

あの量の魔物を葬り。

『神癒』を操るか。

いかんな。

獣人の女達は強い男が好きだ。

いかんぞ。

このままでは秋人の争奪戦になってしまう。

百体以上のオークの動きを封じ、オークキングも一瞬だった。

しかもあの不思議な現象。

辺りが暗くなり目の前に閃光が落ちる。

あの瞬間の秋人が目焼き付いたまま離れない。

ポケットに片手を入れたまま。

オーク達をあっという間に行動不能にさせ。

オークキングを閃光で貫き。

冷たく見下ろす。

思い出すだけで背中がゾクゾクとした。

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