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異世界で彫師になる  作者: ユタユタ
彫師になろう!
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ギリー

ギリー



「わりぃなぁそれ、俺の女なんだよ」


納屋の中を見た瞬間、理性が吹き飛んだ。ドニーは両頬を殴られ口から血を流し、服がはだけている。


「そうか、そりゃ悪かったな」


そう言ってその男はドニーを離すと俺に殴りかかる。

バカだな。唯一の勝機を逃しやがった。俺の頬に向かって伸びる拳に頭突きをした。


「がっ!」


その男の口が苦痛に歪む。その男の拳を見ると骨が皮膚を突き破っていた。


「ガタイだけは立派だが対したこと無いな」


レベルは俺とバルザックと同じ10だが、HPもMPもバルザックより大きく下がる。


「ふざけるなよ!」


そう言ってその男はドニーに近付こうとするがもう遅い。一歩踏み込んで脇腹を蹴り抜く。骨の折れる手応え。

吹っ飛ぶと壁にぶつかって止まる。苦悶の表情を浮かべる男を尻目に左手の法印全てに魔力を通した。

ドニーの顔は大きく腫れ、血が滲んでいる。目からは大きな涙が溢れていた。

『神癒』を発動させるとドニーの頬に触れる。

頬から腫れが引けていつものドニーの顔になる。口から血が垂れたままなのでそれは手で拭ってやる。


「もう、大丈夫だ」


ドニーが大声を出して泣くので両腕で抱き締めた。

その隙に男は納屋の閂を抜き外へ出ていく。


「何やってんだ!教えろって!」


男は外に出ると、外にいた居た男の状態に気付いたのだろう。黙った。

ドニーに『ちょっと行ってくるね』と声をかけて納屋を出た。


「てめぇ!こんなことしてたたで済むと思うなよ!」男が言う。

「思ってねぇよ?」

「そうかい。じゃあ、まずは持ち金全部出してもらおうか!」


コイツ、分かってねぇな。


「ユリナって女がさ、お前らを殺せ、殺せ、って言うんだよ。

でも俺はさ。更正の道を諦めるのは良くないって思ってたんだよ。だから俺はさ。

『まぁ、まぁ、落ちついて』なんて言ってさ。でもな、俺が間違ってた。ユリナの言う通りだ。

救いようがねえ」


折れただろう肋骨を庇う男を睨み付けた。


「お前は死ね」


「やってみろよぉ!ガルーダァ!!」


男がそう叫ぶと、男の背後に大きな鳥が現れた。

へぇ、これが召喚魔法か。鳥は『バサ』と羽を羽ばたくと宙に浮かんだ。デカイ、羽の先から先まで多分10メートルぐらいはある。鋭く大きな嘴と大ききな胴体、羽は赤く所々燃えている。

火か。ポケットから紙を出す。

その紙には水魔法の第三階位まで書いてある。


「行けぇ!」


ガルーダが羽ばたくと火球が宙に10個ほど浮かぶ。

紙の第二階位まで魔力を通して魔法を発動。


『水壁』


俺と男の間に水の壁が出来上がる。ガルーダの作った火球は水の壁にあたると全て消えた。


「ばかな!」


男に向かって歩き出す。


「こんなもんか?」

「ぶっ殺してやる!」


男が叫ぶ、ガルーダにMPを注ぎ込んでいるのだろう。火球が宙に浮かぶ、さっきの倍はあるか。同じポケットから新しいもう一枚紙を出す。この紙は一度使うともう使う事が出来ない。


『水壁』


再び水の壁が出来た。


「おおお!」


そう男が叫ぶと浮かんでいた火球がどんどん合体して大きくなっていく。最後に大きな一つの火球になる。

俺も札に追加で魔力を込める、水壁が厚くなった。


「行けぇ!」


男が叫ぶ。

火球が水壁を突き破って俺の眼前に迫る。

火球に左手で裏拳かます。


『ドッ!』


目の前が炎に包まれる。


「ハッ、ざまぁみろ!ハッハッハ」


男の笑い声が聞こえた。

が、スキルのお陰で当然俺は無傷。男に向かって歩く。炎の中から出てくる俺に気付いたんだろう。男の顔が驚愕に歪む。


「もう終わりか?」

「てめぇ、人間か?」

「お前よりずっと人間っぽいと思うよ」


懲りずに火球が宙に浮く。大分少ないな。MPが尽きたか?

俺に向かって飛んで来る火球を裏拳で弾く度に火球は『ボン!』と弾けるが、俺に傷や火傷を付ける事が出来ない。

どんどん男との距離が縮まる。


「お前さぁ、ちょっと筋が通らねえんじゃあねぇの?」


そう言ってから、一気に男に肉薄すると、男の頬を殴った。


「ブッ!」


口から血を吹いて倒れる。


「ゆ、許してくれ」

「女を追いかけ回して強姦しようとしてさぁ」

「悪かった、金をやるよ。全部だ」


右の脇腹を蹴る。


「ぎゃ!」


男は転がって右の脇腹を押さながらなんとか口を開く、


「そうだ、この村の領主代理に取り次いでやる。お前は何の仕事をしてる?大儲けできるぞ?」

「彫師だよ」


男がポカンと口を開けて間抜けな顔をする。みぞおちを蹴り上げた。


「ゴフッ!」


男は前のめりに倒れた。


「なぁ、『こんなことしてただで済むと思うなよ!』だっけ?」


男の頭を踏みつける。


「お前こそどうなんだ?」踏みつける力を強くする。


「人の女に手を出して、孤児院にも下らない嫌がらせをしてさ」


男の頭から『ミシミシ』と音ががする。


「どう落とし前つけてくれんの?」

「うぅう!」


男が地面に顔を付けたまま唸る。

ガルーダが俺に向かって突進してくる。眼前に迫ると爆発した!

目の前が炎に覆われる。手で炎を払うと炎は消え去り視界がはっきりするが、足の下にいた男は居なくなっていた。

後ろを見ると外に出て見守っていたドニーの喉に短剣を突き立てて立っていた。


「動くんじゃあねぇ」


そう言った男の体は所々が黒く煙があがっている。


「良いよ」


俺はそう言って両手を上に上げる。

手を上げたまま、胸ポケットに入れてある紙に魔力を込める、別に指先から魔力を出さなければいけない理由はない。


「ハッ!形勢逆転だな」

「そうでもない」


俺はそう言った後、光魔法の第三階位を発動させる。

目の前が真っ暗になり。閃光が走る。


『バシュン!』


「ぎゃ!」


明るくなると目的の場所に確りと落ちた事が分かる。

男の短剣を持つ右手が吹き飛んで血が溢れ出てる。

ドニーに手招きしながら右手を抱えて踞る男に近寄ってく。


「血が、血が」


左手で腕を押さえるが血は止まらない。


「後悔は出来たかい?」

「し、死にたくない。助けてくれ」


男は顔面を蒼白にして懇願する。

近くに来たドニーを左手で抱き寄せると。胸ポケットから紙を一枚出した。


「おい!何か気付かないか?」


先程、『神癒』で綺麗にしたドニーのほっぺを軽くつねる。


「殴った跡が治ってる?」


男の目に希望が宿る。


「そう、その傷も治せるよ?どうして欲しい?」

「た、頼む!何でもする。何でもするから!」

「じゃあ、治してやるよ」


そう言って右手に持った札に魔力を込めて発動。

しかし、

辺り一面真っ暗になる。


「止めてくれぇ!」


俺の意図に気付いた男が叫ぶが。

止めるつもりは無い。光魔法第三階位


『閃光!』


『バジュン!』


降り注ぐ光が男の全身を包む。

辺りが明るくなると男は炭になって転がっている。これを見て人間だったとは誰も思わないだろう。

ドニーを抱く手を強くした。


「あっゴメン!」


ドニーを見て言う。


「こんな所見たくなかったよね!」


しまった!怒りが強すぎて勢い余って凄く残酷な事をしてしまった。しかも、それをドニーに観られるという。

あれ?でもドニーの顔は喜んでいる?


「うぅん」ドニー顔を左右に振った。「凄いスッキリした。近くで見せてくれて有り難う」


そうだ、こういう女だった。

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