天国?地獄?
「雄太君って将来の夢とかあるの?」
小学校のとき好きだった子に聞かれた。
「プロ野球選手かな」
野球をやっていたわけではないが好きだった子が野球好きだったからとかそんな理由だったのを覚えている。ほんとは漫画家になりたかったのも覚えている。でも小学校から中学、高校に上がり夢とか将来の目標とかなくなっていった。いつ死んでもいいやなんて人生を甘く見ていた。
ほんとに死ぬなんて・・・・・・・
目の前に広がる光景をまだ信じきれずにいた。
あのとき死んだと思ってた。
かわいい美女が現れて、殺人予告されて胸に剣刺されて・・・。
そっからの記憶は一切ない。考えられるのはここが天国か地獄かのどちらかということだ。オレの周りを白服の男たちが取り囲んでいる。白服ということは天使と考えて間違いないという結論に到達した。
「あのぉ、すいません」恐る恐る口を開いた。
「しゃべるな。君とわれわれは同等の立場ではない。忘れるな。」
前言撤回。ここは地獄だ。天使はこんな発言しないし、だいたい男で天使はありえない。
こいつらは悪魔だ。
「何か勘違いをしているようだな。佐藤健太。われわれは天使でもなければ悪魔でもない。むしろ悪魔とは君の事なのだよ。」
?????。理解できなかった。頭の中を読まれたことよりオレが悪魔だということに。
人殺しをしたこともなければ、人を殴ったこともない。
そんなオレを悪魔と呼ぶコイツらに無性に腹がたった。
ふざけんなよ、と一歩踏み出した瞬間、世界がひっくり返ったかのようにオレの体は宙を舞った。
ドスン、と大きな音をたて地面に叩きつけられた。
どうやら投げ飛ばされたらしい。しかも一瞬で。この瞬間わかった。こいつらは人間じゃない。
「自分の立場がわかってねーよーだな。
ぽきぽきと指の関節を鳴らしながら一人の男が歩いてくる。
その男は二メートルはあるんじゃないかと思うほどの巨体だった。
終わった。二度死ぬんだ。
「バロンよせ。そいつはおもちゃじゃない。」
巨体の男はそういわれると歩み寄ってくるのを止めた。
どうやら脳まで筋肉じゃないらしい。
扉の開いた音がした。
一人の老人がこちらに歩いてきている。
男たちは老人の方を向き頭を下げた。
どうやらコイツがボスらしい。
「コイツがアスカの捕まえたやつか?」
「はい。そうです」
老人と目が合った。
その男の目は青く澄んだ綺麗な瞳だった。
「ブルクレイドで捕まえたそうです。こいつを合わせてブルクレイドで捕獲した悪魔は45体です。」
「なんだよ悪魔って。捕獲とか意味わかんねーんだよ」
「どうやらコイツは自分のことを人間と思い込んでいるらしいですね」
思い込んでる?オレは元人間だ。
「いいかげんにしろよ。さっきから意味わかんねーんだよ。」
おれの怒りは頂点にまで到達していた。十七年間人なんて殴ったことないが殴り方ぐらいは知っている。
「うおりゃああああああああ」
興奮したイノシシのように老人に向かって突進した。