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7 逮捕

騎士たちは、すぐに俺に気が付いた。

「ああ、池先生。ここが例の亭主の宿屋かね。」

「そうです。どうしましたか?」

「逮捕状が出たので来たのですが、亭主はどこにいますか?」

ゼット検事は仕事が速いな。もう逮捕状とったのか。逮捕状を発するのは法務官だ。法務官も四万十川の事情は知っているから、決断も早かったのだろう。ことは伯爵によるこの町の統治に関する政治活動だ。政治が絡むと、大抵の無理は押し通せる。それなりに証拠もある亭主の逮捕なんて、その気になれば簡単な話だ。

騎士は、俺に丁寧語に切り替えた。ああそうだった。俺は一応貴族だから、言葉遣いも変えないといかんのか。面倒だし、偉そうだから少し抵抗あるんだけどね。


「入ってカウンターの奥が厨房になっている。そこのドアから入ると、亭主の私室だ。おそらくそこにいるだろう。」

「はっ、ありがとうございます!」

ふぅ。


騎士たちが入っていって、しばらくして、どすどすと物音が聞こえ、縄でくくられた亭主が出てきた。

亭主は俺を見て、

「ちきしょう!てめえ、死にやがれ!お前さえこなければ、俺は毎日楽しくやっていられたんだ!全部てめえのせいだ!ぶっ殺してやる!出てきたらぶっ殺してやる!」と絶叫した。縄を引っ張って、俺の方に掴みかかろうとする。

騎士の一人が、亭主の足を蹴飛ばし、地面にうつぶせに組み伏せて押さえ込んだ。別の騎士がわき腹を強く何度も蹴って抵抗を封じた。亭主は、げぽげぽ咳き込みながら、身体を曲げて腹を守ろうとした。

結局、騎士たちが亭主を引っ張り上げて連行して行った。

巨悪は罰せられるであろう。黒幕は知らんけどね。


教会の司祭さんに会いに行った。事情を話した。司祭さんは、おしのさんが教会に保護された経緯も知っているし、その後亭主が金も払わず見舞いにも来ていないことを知っている。そもそもおしのさんが地域の奉仕活動に参加していたから、その人となりもよく知っている。だから、司祭さん個人としても離婚に同意できると言っていた。次の宗教裁判はあくびがでるほどに簡単そうだ。司祭さんも、亭主が逮捕されたと聞いたので、「もう大至急やってしまいましょう。」と言った。司祭さんは、今まで亭主については、一切コメントしていなかったが、実は相当頭にきていたらしい。邪悪な笑みを漏らして、「殺人未遂であればどうせ帰って来れないでしょうけど、仮に出てきたとしても、もう帰るところはないでしょうな。」と言った。


一度宿屋に戻って訴状を書いた。ティナちゃんに頼んで教会に提出しておいて貰った。余計な手続きは、ほとんど省略するので、あと数日で判決をするということだ。


次の日、教会に顔を出した。司祭さんは、3日後にはもう判決を書くと言っていた。ものすごいスピード処理だ。もっとも俺が文句を言う筋合いはない。

それからおしのと少し話をした。


もう退院すると言っていた。今から宿屋に戻って、一度宿泊客には全員出てもらって、一時休業にすると言っていた。それから大掃除するつもりらしい。

俺はそのままいてくれて構わないということだ。よかった。

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