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7 えっティナちゃんって、二人いるの?

おしのさんにティナちゃんの家の雑貨屋さんの場所を聞いた。おしのさんは、「ふうん。若い娘がいいのね。」っていう顔をしていたけど、俺は、「服のお礼をいうだけだもんね。」という風で押し通した。なんか、ここ何回かおしのさんと喋っていて、俺とおしのさんとの間で微妙に手札を見せ合っているような感じがする。うまくいえないけど、お互い気になっているんだけど、露骨にお互いの希望をいうわけにもいかないけど、なんとなく二人で協力して進めていきましょうか、というような、不思議な感覚だ。俺の勝手な思い込みかもしれないけど。そうすると行き着くところまで行ってしまうのだろうか。いきなり人妻っていうのは、ちょっと困るな。そこまで腹は据わってない。しかし、今の関係はどきどきして心地よいものがある。


とにかくおしのさんにティナちゃんの家の場所を聞いた。すぐ近くだったのでさっそく歩いていってみる。散歩日和です。


雑貨屋さんだ。何か買いたいな。そういえば、俺、全然お金持っていないんだった。宿代と飯代はしばらくは無料だし、服も馬鹿兄貴・・・いや、おにいちゃんのがあるから大丈夫なんだが、こういうちょっとした買い物すらできないというのは結構辛い。


「こんにちは。」声を掛けてみた。

「はーい。」おばさんが出てきた。おばさんだが、若いころは美人だったんだろうなっていう感じの人だ。ああ、ティナちゃんのお母さんかな。


「あっ、それはアツシの服!」お母さんの目が光る。服を見て、次に俺の顔を見る。ちょっと怖いぞ。ティナちゃん、家の人にちゃんと断って服を持ってきたんだろうな。無断だったら、俺の立場はちょっと危ないぞ。アツシ君の服を勝手に着ている怪しい子供だよ。

慌てて説明しようとする。


「母さん、ちょい、どいて!」ティナちゃんの声がする。相変わらず可憐な声だ。でも、いつもの声より少し低い気がする。それにかなり粗雑な口調だぞ。雑貨が入ったケースを運んでいるみたい。


「あ、あ、メンデス先輩。え、どうしよ。いまの聞いてました?もうっ、母さんなんでここにいるのっ、あっ、おう、うっ。・・・ママ、お台所で紅茶をいれてみたの。良かったら召し上がってね。」


ん?なんか、ティナちゃん二人いる?残像か!?

おばさん、いや、ティナちゃんのママがにやりと笑う。


「あら。ティナのお友達かしら。うちのティナがいつもお世話になっています。池君っていうの?これからもよろしくね。いつでも遊びに来てくれていいのよ。その服はうちの馬鹿息子・・・あっ、おう、・・・アツシちゃんの服だけど、もう小さくなっちゃって使えないの。服も喜ぶわ。」愛想がいい。きちんとした人だ。さすがティナちゃんと馬鹿息子、いや、アツシちゃんのお母さんだな。やさしい雰囲気の家庭だということが、すぐに分かるよ。

紅茶が入っているらしいから、あんまりお邪魔しても悪いだろう。一緒にと誘われたが、これから行くところもある。簡単にお礼を言って、すぐに失礼したから、おばさんの言葉は聞こえなかった。


「ティナ、アツシの服、破れてるもの以外は、なんでも持っていっていいよ。アツシは布でも紐でも巻いておけばいいんだから。それよりも、どこかの性悪女に先を越されるんじゃないよ。池君こそが正義。そう心得なさい。」

「わかってる」


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