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7 二日目の野営

昨日は焼いた肉だったけど、今日は醤油と塩を使った肉鍋だ。干し野菜も入れて、乾パンも用意している。グレイは肉。生よりも焼いた奴の方を気に入ったみたいなので、そっちを食べさせた。


「昨日と今日で、自分でも分かるくらい強くなった。コミカルベアーにはまだまだ及ばないし、試練の日に間に合うかと言われると、やっぱりきついけど、それでも今までの俺と比べたら夢のようだ。」

隼人が言った。

「なら、このまま逃げるか?他の町に行けば、うやむやになるかもしれん。」

「でもそうするとお前に迷惑がかかるだろ。俺は冒険者だからいいけど、お前はあの町の弁護士だ。そう簡単には移動できないだろ。」

まあそうだ。でも、そのために隼人に命を賭けさせるわけにもいかないだろう。

「それに、これが俺にとっての最後のチャンスだと思っている。悪いが、俺は行き着くところまで行きたい。池、迷惑だろうが付き合ってくれ。」

隼人は深く頭を下げた。

「分かった。俺もそのつもりだ。」


それから隼人の冒険者としての生活の話になった。やっぱり何かと大変だったらしい。この前、マーガレットと揉めて、隼人が一方的な被害者だということが明らかになってから、少しだけ周りの当たりが和らいだらしい。そのときに立ち会っていたルソーさんとかが、結構気を遣ってくれたりしているらしい。それでも、やはり隼人とパーティーを組もうという人間はいないようだ。


「そういえば呪いがかかっているんだったな。」

神様のせいだ。イケメンって頼んで、それを撤回したことにされているから、神様が一回隼人をイケメンにしてから、嫌な感じにする呪いを掛けたんだった。本当、無茶苦茶だよな。他人事ながら腹が立つ。


「あ、魔法で解除できるかな。」ふと思いついて言ってみた。

「えっと、我欲解除神様之呪対隼人!」

・・・

デコピンはない。なんかうまく行ったのだろうか。改めて隼人の顔を見てみる。

・・・

「おっ、なんか嫌じゃないぞ。普通になったよ。」

隼人は半信半疑だ。

「いや、そんな簡単なものじゃないだろ。俺、15年この嫌な感じを纏ってきたんだぞ。」

そういいながら、そわそわとするから、俺は、鍋の残り汁を少し離れたところにぶちまけて、水を入れた。

「なんかすごく見えにくいな。」

「嫌な感じはするか?」

「いや、しない。そういえばそうだな。俺は昔、水溜りの前でこけたことがある。そのとき、水溜りは波立っていて、俺の顔はほとんど映っていなかったけど、それでも嫌な感じだけはちゃんと反射していた。そのときと比べると、全然嫌な感じがない。」


「ま、明日、綺麗な水で確認しておこう。」

喜ぶのは早計だよな。でも、俺が見る限りは嫌な感じはなくなっている。


それから、薬草の種類や調薬の仕方を教えてもらった。隼人はすぐに休ませて、俺は薬を作っていく。要所要所で隼人の工夫した魔法を使っているから、どんどん作業がはかどる。一通り作ってから、カバンから紙とペンを出した。森の中でまで仕事するのも本当は嫌なんだけど、焚き火の光を使いながら、月刊オンドレに載せる記事を書き始めた。四万十川騎士団長弾劾の記事だ。


ある程度は書いたけど、なかなかこれが難しい。口汚く罵るのも却って説得力がない。事実を丁寧に書いていくと、俺たち自身に累が及びかねない。その按配をとらえきれなくて、そのうちに眠くなってきた。グレイに警戒を頼んで俺もテントに入った。


次の日の朝、喜ぶ隼人にたたき起こされた!待てなかったらしく、夜明け前に水辺に行って、日の出と同時に確認したらしい。


「池!おい池!起きてくれよ。俺、嫌な男じゃなくなったよ!しかもさ、なんかイケメンな感じがするんだよ!」

「もう少し寝かせてくれよ。」

「本当なんだ。そうだ、グレイ、俺のことどう思う?」

グレイが、優しい声でうなった。今までは、グレイは結構隼人に対してはぞんざいな態度だった。実はグレイは面食いちゃんだからな。

俺も仕方なく起きた。

隼人を見た。

おお。


「隼人、なかなかのイケメンじゃないか!俺ほどじゃないけどね!」

「ありがとう、池!お前のおかげで呪いが解けたよ!俺の人生がやっと影から抜け出した感じだ!」

隼人は泣いている。それから少し歩いていって、森の中に入っていった。一人になりたいらしいから、俺は黙ってそれを見送って、朝ご飯とお茶の用意を始めた。

読んで頂いてありがとうございました。

難航するかと思って明日投稿ですと言っていましたが、なんとか苦手意識のあった冒険や戦闘シーンも書けました。出来不出来はともかく、楽しいですね。

次こそは明日の投稿となると思います。引き続きよろしくお願い致します。

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