4 野営
一日の戦闘が終了した。隼人は、魔物の討伐部位を集めている。グレイに頼んでテントの周りに集めてもらった。本当なら血の匂いが気になるところだが、グレイがいる限り、他の魔物は怖がって近づいてこないようだ。
「しかし、今更討伐部位なんて意味ないだろ。」
「いや、これで多少なりともギルドでのランクが上がるかもしれない。掲示板を見てこなかったから分からないけど。」
そういうので、俺も手伝った。隼人をあまり疲れさせないよう、俺としてはサポートに徹するつもりだ。
隼人は、討伐部位だけでなく、野草も取っている。ああ、薬草か。
「その薬草は依頼が出ているのか。」
「いや、とっておくだけだ。自分でも使えるし、よく出来たら売ることもできる。」
なるほど。
一通りとっている間に夕方になったので、また火を熾して肉を焼き始めた。野菜やお米が欲しいところだが、色々用意していると大変なので肉だけにする。
隼人は肉が焼けるのを待ちながら、槍や盾、それから防具の手入れをする。持ってきた水を使って洗ったりしている。
「それ、魔法でできないか。」
「うん?ああそうか。」
隼人が、防具に手をかざして
「我欲洗浄防具!」と叫んだら、綺麗になった。
「本当は自分の手で手入れするべきなんだろうが、水がもったいないからな。」と自分でj分に言い訳している。
手入れが一通り終わったところで、今度は薬草の処理を始めた。磨り潰したり煎じたりするらしい。「これは乾かさなくちゃな。」といいながら、なんか漢文ぽい呪文を唱えたりしている。
「やっぱり魔法は便利だな。調合とかの手間がかなり短縮される。」
なるほど、そういう使い方もあったのか。やっぱり冒険者と魔法の相性はいいんだな。弁護士と魔法は、いまいち噛み合わなかったけど。
肉が焼けたので、二人と一頭で食べ始める。
「レベル上げはどうだった。」成果を聞いてみた。
「ああ、やっぱり怪我とかフォローとかを気にしないでやると全然違うな。何度かレベルが上がったと思う。」
そんなに早いものか。
「やっぱり成長補正的なものがあるのかもしれないな。俺は勇者ではないし、スキルとかも貰わなかったけど、お前の場合は潜在的には能力を貰っているから、調子よく進めばどんどん上がっていくのかもしれない。」その点はちょっと羨ましい。
「これで一人前の冒険者になれるかもしれないな。本当に、俺の15年間はなんだったんだろうな。」隼人が複雑な表情をして言った。
「ところで、俺は明日は一度町に帰ろうと思う。食糧は肉類は充分だから、保存の利く野菜類やパンを調達してくる。特にグレイがこれからは戦車を牽いてくれるから、もう少し重くても大丈夫そうだ。ああ、貸し馬も返しておこうかな。」
「分かった。じゃあ、明日はちょっと抑え目にレベル上げをやっておく。フォローがないから安全にいくよ。」
こういうところは、やっぱり軍隊上がりということだろうか。プロとして危なげがない感じだ。
「できるだけ早く戻ってくる。そうだな、朝一番で戻って、馬を返してそれから市場で買出しだな。何か他に買うものはないか。」
「いや、特にない。ああ、水が大量に欲しいな。」
「分かった。俺は、それから宿屋に戻って仕事の方を見てくる。特に何もなかったら、そのままこっちに戻ってくるよ。・・・ああ、そうだ、ちょっと教会に寄るくらいだ。」
「教会?なんか用事があるのか?」
そういえば、話してなかったな。隼人に話してもあんまり意味ないけど、どうせ夜は長い。おしのさんの話をしてみた。
「そんな事情があったのか。目覚めるといいな。俺は薬草については、相当詳しいんだよ。これもレベル上げの効果だと思うけど、大抵の薬草については、相当な知識がある。しかし、そういう麻痺による昏睡状態っていうのはちょっと分からないな。」
そうか。隼人にも分からないか。
そのあとは、コミカルベアーに対してどう闘うか相談したが、いい考えは思いつかなかった。
テントに入った。夜の警戒はグレイに頼んである。これはいいな。見張りの必要がない。冒険者はどうして犬を使わないのだろう。もっとも、グレイは単なる犬ではなく、魔狼だから、能力が全然違うのかもしれない。ともあれぐっすり寝て、次の日の朝は気持ちよく目覚めた。
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次の投稿はおそらく明日になると思います。




