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20 いつだって弱者の味方を

3話続けて投稿しました。最終話からの方は、少し後戻りしてからご確認下さい。

「ちらほら噂には聞いていたんですが、本当に流行っていたんですね。」

とりあえずこのお姉さんをどうするべきか。


「この商法は、末端に行けばいくほどきつくなるんですよ。この町の人口は限られています。何段階か仲介を挟んでいくうちに、買ってくれる人はどんどん見つからなくなってしまいます。そうすると新規の客を見つけられなくなる人が出てくることは明らかです。エリカさんだけじゃない。あちこちで客を探して走り回る人が出てくるでしょう。」


「え・・・。そうなるの?世界ははてしないから、買う人は無限にいるって聞いたから。」

「いやいや、そのはてに住んでいる人とエリカさん知り合いなんですか?」

異世界すぎるわ。これで信じる人がいるんだ。いや、俺の知らないだけで、日本にもそういうので信じる人はいたのかもしれないな。


「どうしよう。私、身売りしないといけなくなっちゃうかも。」


そうだな。個人的には、エリカが別にどうなっても俺は困らないし。そもそもエリカが軽率に欲をかいたのが原因だから俺がなんとかしなければならない理由はない。


「その売春宿の人間に対して、借金の取立てを少し待ってもらうことにしましょうか。そのうちに、この商法が問題になってくるはずです。そうすると何か道が開けるかもしれないですけど。」


エリカが紙とペンを持っていたので、それを借りた。多分、俺に仕組みを説明するために持ってきていたのだろう。


「  ・・・様

拝啓

エリカは、平成23年6月 日、貴殿から金貨28枚を借り入れました。一方で、貴殿は私に対し、儲かる見込みがないまま、その事実を秘して、値打ちの全くない貝殻を販売し、かつ、その販売仲介業をするよう私を勧誘致しましたが、そのような違法な勧誘行為によって私は少なくとも金貨28枚の損害を負っています。当方としては、各種機関と協議の上、しかるべき法的措置をとるよう準備しておりますところ、さしあたり貴殿に対する上記借入金の返済については、一時差し控えることとさせて頂きますので、念のためお知らせ致します。

なお、上記借入金について、違法な手法により取立てをされることがあった場合には、当方としても公的機関への通報も含め断固たる対応策を採る所存でありますので、予めその旨ご承知置き下さい。

敬具」


エリカに見せた。

「この手紙を送れば、おそらく売春宿のオーナーは借金の取立てを一時様子見すると思う。確実にストップするという保障はないけど。それで時間稼ぎをしながら、この商法の被害者を集めて被害者団体を作るのがいいと思う。それで大勢の被害者が集まったら、署名を集めて嘆願書を伯爵様に提出するんだ。そこで特別な救済措置をとってもらうように働きかけると、何とかなるかもしれない。ならないかもしれないけどね。」


エリカが食いついてきた。

「あ、ありがとう!さっそくやってみるね!」

俺が書いた紙を手に取ろうとしたので、その前に紙を持ち上げた。ひらひらと見せる。


「書面作成費用として金貨1枚。それがなかったらこの紙は破って捨てることにするよ。」

「えー、私、そんなお金ないよ。」

「俺だって、仕事しようと思っていたところに連れ出されて、うさんくさい商法の話を聞かされたんだ。かなり時間を無駄にした。それで更に文案まで考えた。それをただであげるわけにはいかないよ。」


それからちょっと迷った。むふふなことをさせて貰うということも考えたけど、それよりも別の使い道があることに気が付いた。


「じゃあ、こうしようか。これから、マルチ商法被害者の会を作る。その事務をやってくれ。指示は俺が出す。エリカさんは、その被害者団体の代表者ということになるけど、俺の言うとおりに動いてもらいたい。」


これで、被害者側のコントロールができる。しかも、被害者の味方だということで動くことになるから、俺が首謀者だとは誰も思わないだろう。あとでターニャとアンドロポフも協力させることにしよう。


エリカは自分が何をすればいいのかよく分かっていなかったようだが、とりあえず俺の作った書面が欲しかったみたいなので、「わかった」と答えた。俺は、とりあえず他に被害にあっている人間をできるだけたくさん探しておくように伝えた。


我ながら、うまく出来すぎていてうっとりする。

悪い側と被害者の側とどちらの側もコントロールできている。

そのままチーム流星の事務所に行って、ターニャとアンドロポフを誘ってボルシチを食べに行った。そこで、エリカの話を説明すると、チーム流星としても協力する、冒険者ギルドでの被害者がいるかもしれないから、そこで注意喚起をしたり、被害者団体に参入するように促したりするということになった。


これで完璧だ。

この感覚、なんというのだろう。互いに対立する両者それぞれを操っていて、どちらからも頼りにされたり、お金が入ってきたりする。悪いことやっているのに、被害者の側をがっちり固めているから、そっちがどう動いてくるか恐れる心配もない。

出来上がった精密機械を動かしてみたときのような高揚感を感じる。これはたまらんわ。がははは。見たまえ、人が歯車のようだ!と。


宿に帰ったら、ティナちゃんが心配して来ていた。

「メンデス先輩、お身体はもう大丈夫なんですか?」


「はっはっは。ティナちゃん、君はいつも可愛いね!」

ティナちゃんがびっくりしている。

ティナちゃんが俺の下で働くようになってから、こんなに愛想良くしたことはない。


「これからも一杯楽しいことするぞ!ちゃんと覚悟しておいてね!」

さりげなくセクハラOKということを再確認しておいた。

「え、楽しいことって、あのあれですか。えっと、あ、はい。・・・先輩大丈夫ですか?」

「社会正義のために頑張ることにするのだよ。あっはっは。俺は弱者の味方だからね!」


「・・・先輩、私、ちょっとは可愛いですか?」

上目遣いして聞いてきた。

「もちろんだよ!美少女といっても間違ってない!」

妙なテンションで答えた。にこにこしながら、頭を撫でた。ティナちゃんは、戸惑いながらもそっと両手を俺の脇腹のあたりにそえてきた。


「じゃ、じゃあ。あの。私とキスして下さい!」

びっくりしたけど、俺の今のテンションではなんだってできる。


「いいよ!キスしよう!そうだ、素敵なキスをしよう!!」

そういって、俺はティナちゃんを固く抱きしめ、唇を寄せた。ティナちゃんは目を閉じて顎を上げて俺を待っている。


今にもキッスしよう!という瞬間に突然ドアが開いた。

「先生大変だ。俺の弟がパクられた!」

読んで頂いてありがとうございました。

勧誘は書きにくいですね。もっといかがわしい雰囲気をどぎつく出したかったのですが、実力が及びませんでした。

今日の夜、もう一度投稿できると思います。引き続きお読み頂けますと幸いです。

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