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14 ターニャと夜の彷徨

オペレーションは、突入、実行、離脱の三段階。離脱の時が最もミスが多い。


今回も同じだ。騎士団長の別宅を出てからどうするか。その点が事前の計画ではもっとも悩ませた問題の一つだ。


まっすぐ帰れば後を付けられるおそれがある。後々四万十川を切り捨てることを考えると、こっちの情報は一切渡したくない。だから、護衛もつけないことにした。護衛を発見されるとそっちから足がつくかもしれないからだ。


チーム流星の中でも、この計画について知っているのはターニャとアンドロポフだけだ。俺の側も、ティナちゃんにも言っていない。

西島組にも話していない。

アンドロポフを迎えにこさせるという考えも出たが、アンドロポフの顔は広く知られている。ターニャは化粧などで化けたが、アンドロポフまで変装の準備をするのは気が遠くなる。


俺とターニャが夜のオンドレの街で、ふらふらと二人っきりで歩いているのは、そういう理由からだ。デ、デートとかじゃない。ないのですよ。


そうはいいつつ、夜も遅くなると、夏とはいえ少し肌寒い。人の温もりを求めて、少し身体を寄せ合って歩くのは、決して疚しい行為ではない。寒いからね。


夜中に二人で歩いていると、誰に絡まれるか分からない。

それに、警備隊などに職務質問を掛けられると困る。これが騎士団とかだったらもっと困る。次の日の報告書を四万十川が読んだら、俺たちが何者か一発で分かってしまうだろう。


夜は人通りがほとんどないから、尾行を発見しやすい。一方で、尾行する側も俺たちを遠くから追うのが容易だ。

だから、夜中に尾行を撒いて、更に日の出後にもう少し歩いて相手を混乱させるのが安全だという結論になった。

そもそも誰もつけてきていない可能性が高いが、念のためだ。


ぶらぶらと二人で歩きながら、北区に向かう。北区には、乗合馬車の停車場がある。そこのベンチの下に、ゴミ袋っぽいものを隠していた。着替えとかが入っている。

それを回収して、更に北に向かう。


廃屋となった3階建の建物があった。たまたまアンドロポフが見つけたものだが、チーム流星のシノギには特に関係のない物件だ。誰も住んでいない。

そこに入った。ターニャが先に上の階にあがり、俺は戸口でしばらく尾行がないか確認した。特にそういう気配はない。

屋上に行ったら、ターニャが待っていた。


丁度となりのビルとほとんど接している。50センチくらいしか離れていない。

こっちのビルから用意していたロープを垂らしてとなりのビルとの隙間を降りていく。窓の数を数えて、誰もいないことが確認できている部屋に入った。窓は今日の昼間のうちにアンドロポフが開けておいてくれている。


両隣りに誰が住んでいるか、全く確認できていない。それでも、とりあえずは、ここが俺たちの安全が確保される場所だ。窓を軽く閉めて、一息ついた。少しだけ隙間を空けている。外の様子を確認するためだ。明かりが漏れるといけないから、ろうそくは使わない。部屋は真っ暗になった。


手探りでターニャに近づく。

こういうとき、物語の主人公は、うっかり触ってはいけないところを触ってしまって、殴られたりするのだろう。しかし俺は違う。なぜか。イケメンだからだ。ターニャの身長を思い出して、どのあたりが触ってはならないところかを想定して、そのあたりをそうっと手で探す。


ちょっと触れた。おやおや、ここはどこかなあ。

もう一回、触れてみた。

「私はここ。」

横から声がした。俺はなんか全然違うものを触っていたみたいだ。残念。


二人で横に座った。

ここからの手順も決まっている。俺が夜の残りの時間のうち半分程度を警戒して、それからターニャと交代することになっていた。別に森の中にいるわけでもなし、本当はそういうのも不要かもしれないけど、騎士団とかが捜索を始めたりする気配があるかもしれない。一応、見張りは必要だろうということになった。


真っ暗な中、たまに窓の近くに行って外の様子を探るくらいで、何もやることがない。すごく退屈だったが、おおよその時間でターニャを起こして、それから俺も寝ることにした。


ここまでほとんど会話なし。

喋らなくてもいいように、打ち合わせをしていたから、まあ当然なんだけど。


そのまま俺は眠りについた。

明日の朝は、人ごみの中を紛れて、更に移動しなければならない。

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