8 エルフヤクザとの密謀(その1)
悪徳商法の説明で長くなってしまいました。ニ分割いたします。
次の日は、夜明け前くらいに宿屋を出た。とりあえず歩いて南城門の貸し馬屋に行って、「とにかく雌の馬を貸してください」といって、適当なのを借りてきた。保証金が大金貨1枚、貸し馬料は、大銀貨3枚だ。聞いていた相場より少し安いのは、アンドロポフが顔を出して、一言いってくれていたらしい。
馬を引いて宿屋に戻り、戦車に繋いだ。ティナちゃんには、指示をメモで残して、俺は出掛けることにした。戦車でとことこチーム流星の事務所に向かう。歩くよりは早い。走らせたら、人が走るよりも早いだろうけど、街中だし、事故を起こしそうだし、馬が疲れるといけないので、そこまでは急がない。それでもかなりのスピードだ。自転車でのんびりサイクリングしているくらいの気分かな。
チーム流星の事務所についた。アンドロポフから、「昨日、ギルドで揉めたらしいな。先生が処理してくれたと聞いた。助かったぜ。」と言われた。
それから、以前から相談されていた、冒険者ギルドの乗っ取りに対抗する方法に話題を移す。
ターニャとアンドロポフだけを残して、後のエルフには席を外してもらった。
「あ、そうだ、大部屋に碁盤がありましたよね。その碁石を貸してないか。」
「ちょっと待っててくれ。」アンドロポフがとりに行った。
ターニャがこっち見てる。
「どうした?」
「ん。この前、私の胸を触ろうとしたでしょ。」
あれ、そうだっけ。最近の俺は、あちこち出掛けるたびに胸と遭遇する。日常に組み込まれているのだよ。だから、突然言われても、それがいつの誰の胸の話だったか、とっさにはピンとこない。いや、イケメンって、普通そんなもんだよ。みんなも、もちろんそうだよね!
あ、そうだ、戦車に乗ってたときだ。触ろうとしたがその直前にターニャが戦車を停めたので、胸にまでは到達しなかった。
「うーん。今度ゆっくり触らせてくれ。」
「えっ、そんな堂々と言わないで。」
ターニャがうろたえたように目をそらした。
なんか言おうと思ったところで、アンドロポフが碁石を持って帰ってきた。
碁石を手に取った。
白の碁石を一つ、アンドロポフに渡す。商売モードに入った。
「これをアンドロポフに売ります。この石は、これ自体非常に珍しいものですが、別に使い道があるわけではなく、綺麗でもないから価値はゼロに等しい。だから、売る側の俺としては、原価はゼロ。ただ、ひょっとすると、更に価値があがる、かもしれません。これは10金貨で売ることにしました。私に10金貨払って下さい。」
アンドロポフが不思議そうな顔をした。黒の碁石入れを渡す。
「ああ、そういうことか。・・・はい、どうぞ。」
黒の碁石を10個渡してきた。
「この白い碁石を購入したので、アンドロポフには、碁石販売を仲介する権利が与えられます。白い碁石を買いたい人を探してきて下さい。・・・はい、見つかりました。ターニャが買いたいそうです。」
ターニャが、
「じゃあ、黒の碁石10個ね。」と言って、アンドロポフに碁石を渡そうとした。
「いや、値段は上がりました。金貨11枚(碁石11個)です。それから支払いは俺にして下さい。」
俺はターニャから黒の碁石を11個受け取って、ターニャに白の碁石を一つ渡した。
「新しいお客さんは、アンドロポフから紹介してもらいました。アンドロポフには、お礼に売り上げの分け前を差し上げましょう。」
黒の碁石11個のうち、2個を上げた。俺の手元には碁石が9つ残ることになる。
「アンドロポフは、他に4人のお客さんを紹介してくれました。そこでアンドロポフは碁石10個を貰いました。これでアンドロポフは、最初の投資分を全て回収したことになります。ここまでで俺の取り分は、碁石55個です。」
つまり、アンドロポフから碁石10個受け取って、それからターニャからの売り上げからアンドロポフの取り分を引いた9個、それが5人分だから、45個。合計で55個ということになる。
「次に、ターニャが、別のお客さんを見つけてきました。これが、三段階目のお客さんということになります。今度は、もっと値上がりしているので、碁石12個の値段で販売します。これは間接的には第一段階目のアンドロポフに紹介して貰ったお客さんなので、アンドロポフには1個、直接紹介してくれた第二段階目のターニャには2個のお礼をします。俺の取り分は、やはり9個です。つまり、ターニャが5人お客さんを見つけてきたら、碁石45個の収入となります。ターニャは、アンドロポフが見つけてきたお客さんの一人に過ぎなくて、そのほかに第二段階の人が4人いますから、その4人が見つけた第三段階のお客さんから同じようにお金が入ります。碁石180個です。」これで、さっきのを加えて280万円の収入になる。
「じゃあ、私も新しいお客さんを5人か6人紹介すれば、少なくとも払ったお金は回収できるのね。」
「そうだ。しかも、そのときには、アンドロポフの懐には、碁石が5個入ることになる。ターニャも、新しいお客さんが新しいお客さんを連れてきたら、1個ずつ収入がある。もちろん自分が直接勧誘してもいい。そのときは2個碁石が入ってくる。そう考えると、最初に金貨10枚で白の碁石を買ってよかったって思うだろ。」




