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6 四万十川騎士団長を潰す方法

連休中は基本引きこもっているので、たくさん書けました。書き溜め分に合流できたので、ペースがあがったのもあります。お読みいただけると幸いです。ここから3話投稿させて頂きます。

次の日は、朝一番で、チーム流星御用達の戦車屋に行った。一頭立ての戦車を注文しておいた。色々見栄えをよくするために頼んだけど、その分耐久性を犠牲にした。まあ、基本は街中で使うだけだしね。それで金貨35枚、35万円相当が飛んだけど、気にしないことにする。


宿屋に戻ったら、ティナちゃんが出勤してきていた。昨日頼んでおいた仕事は、中央区法務局に行ってある不動産を調べてくることだったが、ちゃんと謄本を取ってきてくれていた。


四万十川騎士団長は、本籍が四万十川郷で、現住所はオンドレ伯爵の城なんだが、別宅として中央区に少し小さな一軒家を持っていた。小さいといっても、一等地である中央区だから、価値は相当なものだ。


謄本を持って、西島組に行く。丁度片桐組長がいた。


「おう先生、さっそく腰に刀をつけたか。似合ってるぞ。」

まだちょっと恥ずかしい。でも、褒められると嬉しい。スーツには全然合わなかったので、スーツはやめにした。普段着にベルト、刀だ。


「それで、四万十川騎士団長の調べは、まだまだだ。街中でさりげなく噂を聞いている程度なんだが、人柄が悪いっていうこと以外はさっぱりだ。それに、人柄が悪いっていうのは、もう知ってることだしな。」


「こちらも調べてきました。」

謄本を見せた。


「四万十川の別宅か。」


別宅といっても、別に愛人を住まわせているものでもない。単に町での仕事の際に滞在するために買っているものだ。購入は、昭和42年。四万十川がまだ子供のころで、その父親が取得している。そのときの購入価格は、大金貨520枚、つまり5200万円で購入している。おそらく今もそれとそれほど変わらない額だとは思う。建物は老朽化しているから、少し値段が下がっている程度だろうと思われた。


「ここに注意して下さい。」


不動産登記簿謄本には、担保が記載されている。つまり、四万十川が誰かから借金をしていて、その土地建物を抵当に入れていたら、それが登記に記載されることになっている。


「おっ、えらく借金してんだな。」


そうだ。王都のマクミラン・インターナショナル・グローバル・コミュニケーションズから、大金貨3300枚、つまり3億3000万円の借金がある。抵当権が設定されたのは、平成21年、今から二年前だ。


「二年前か。何かあったかな。いや、そのころは四万十川騎士団長は、既に伯爵の騎士団長に就任していたし、家庭でもとくに変動はなかったはずだ。だから就職のための活動資金というわけでもなさそうだな。」

片桐組長がいう。

「特にオンドレの町で、そんなに大きな金が動いていたのなら、俺の耳にも入るはずだ。借金の貸主は、王都の会社みたいだから、そっちで何かあったのかもしれないな。」


「心当たりはありませんか。」

「ねえな。聞いたことのない会社だ。ところで、この中央区の物件は、おそらく今は大金貨500枚の価値もないはずだ。そこで、大金貨3300枚の借金となると完全な債務超過じゃないか。」


「不動産登記簿の下の欄を見てください。他に騎士団長の所有不動産が担保に入っています。」

共同担保目録という項目があって、同じ借金を担保する物件の一覧が出ている。


「おお、なるほど。四万十川郷の物件が色々入っているな。この番地は聞いたことがある。領主の館だ。それから王都にも別宅を持っていやがるんだな。先生、この物件の詳細は分からねえか。」


「それは、王都の法務局に行って、謄本を確認しなければ分かりません。」


片桐組長は腕を組んだ。


「先生に王都に行って貰うとなると、無料で行ってもらうわけにもいかねえ。この、謄本って奴は素人でも取れるのかね。」

「それは大丈夫です。」


「王都の貸主になってる会社については、うちで調べがつくかもしれねえ。誰かを王都にやって、そのついでに四万十川の王都の別宅についても謄本をとってきたら、先生そこから何か分かりそうかね。」

「そうですね。それが今できそうな唯一の手掛かりだと思います。」

「そこでどういう情報が出てくるか分からないが、それをどう使うかも考えておかなければならねえな。」


その点では、ちょっと考えがある。


「この前伯爵の城に取材に行ったときに、一筆書いてもらいました。」

四万十川に、月刊オンドレの記事について、全部任せるという署名を貰っている。それを見せた。

「王都での借金に後ろめたいところがあれば、それを記事にして町中にばらまきましょうか。」


片桐組長は、ちょっとひるんだ顔をした。


「そいつは簡単には決断できねえな。それで四万十川を潰せるのなら構わないが、下手につつくと、俺も組も先生も全部ひっくるめて潰される。どんな材料が出るかによるだろうな。」

「俺もそう思います。ちょっと様子見ですね。俺の方でも、他に何かないか考えておきます。」


「ああ。・・・ただよ、俺も、この謄本をみて、腹が立ってきた。この四万十川という男は、想像もつかないような大金をもてあそんでいながら、他人のささやかな事業を邪魔して、金を搾り取ろうとしている。こうなれば、最後の最後は損得勘定抜きだ。潰せるだけのネタをなにがなんでも探し出して、刺し違えるくらいの覚悟でぶちかましてやるつもりだ。俺も組を預かる身、軽挙はできねえ立場だが、ここまでコケにされるんなら、保身を考えておとなしく四万十川の圧力に屈することは、俺の矜持が許さん。先生頼むよ。巻き込むつもりはないが、できる限りで協力してくれ。」


「分かりました。覚悟を固めます。予想以上に酷い人間みたいですから、なんとしてでも潰しましょう。俺も安全なところからつつくだけで終わるつもりはありません。」


ちょっと踏み込みすぎたかな。しかし、俺も、この四万十川という人間に、いいようのない不快感を覚えるようになってきた。直接の被害を受けたわけではないし、今分かっている限りでは、ドワーフヤクザとエルフヤクザが迷惑してるだけだ。しかし冒険者ギルドが大混乱に陥ることが分かっていながら私欲のために無責任に介入してくる態度は、統治する側としてはあるまじき行為だ。片桐組長が刺し違える覚悟だというのなら、俺もそのくらいの覚悟をしよう。


ここまでで、まだお昼前だ。最近、フットワークが軽くなってきた気がする。15歳という年齢もあるだろうし、慣れてきたというのもあるだろう。これで更に戦車が手に入ると、かなり仕事のペースをあげられそうだ。そう考えると、戦車代や貸し馬代も惜しくないかもしれない。


それから、組員さんから、月刊オンドレの来月号用の名士インタビューアンケート結果を受け取った。インテリ組員さんがアンケートだけはとってきてくれるのでそれを記事にまとめるのが俺の仕事だ。

いそいで宿屋に戻った。

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