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第5章 勇者あらわる 1 女と勇者

ルソーが声を上げた。

「どうしたマーガレット。そいつと揉めてるのか。」

マーガレットと呼ばれた女は、こっちを見た。

「ああ、ルソー。今日、私こいつと組んで薬草採取の仕事をしたんだよ。その報酬の配分で、こいつが目茶苦茶なことをいうんだ。」


中年男が言い返す。もっとも残念ながら興奮しすぎていて、何を言っているか分からない。中年男は、ものすごく嫌な雰囲気がする。


「ところで、この人誰?冒険者ぽくないけど。」

マーガレットが俺を指差した。なんか失礼な感じだ。


「マーガレット、この人が弁護士さんの池先生だよ。ほら、前話したじゃないか。ビッグウルフを撃退する実力者だ。」


二人で、あははって笑う。なんか笑い話になっていたらしい。たしかに勇敢に闘って撃退したわけではない。イケメンスマイルで懐かれただけだから、その話には立派なところは少しもない。でも、そういう風に馬鹿にされたように二人で話していたんだろうと思うと、それはそれで不愉快になった。


「ちょうどいい。揉め事なら池先生に頼んだらどうかな。チーム流星とも付き合いしているそうだし、先生なら話を聞いてくれると思うよ。」

ルソーが言った。


「たしかにチーム流星と付き合いはあるけど、それほど深くはない。チーム流星に問題を持ち込んで、それからどうなるのか分からないけど、俺が処理するのなら無料というわけにはいかないので、その点は注意して下さい。」

一応予防線を張った。


マーガレットはちょっと迷った感じだ。

「うーん、チームに頼むと無料で処理してくれるけど、あっちに借りを作るのはなるべく避けたいんだよ。ギルドは冒険者間のトラブルにはノータッチだっていうし。先生、いくらくらい掛かります?」


中年男が口を挟んだ。

「それなら俺だってお願いしたい。そっちにだけ弁護士が付くのは不公平だ。」


「じゃあ、こうしましょうか。問題になっているのは、今日の報酬額の配分なんだから、それを俺が一端預かる。それで二人から事情を聞く。で、俺が中立の立場で解決策を言う。その解決策については、反論はしないで欲しい。反論なしで解決策に従うと事前に約束をしておいて貰う。事前の約束だというのは、事後だと負けた側が従わないからだよ。それで俺が、報酬分から俺の取り分を差し引いて、言い分の通っている側に残金を渡す。これでどうだ。あ、俺の取り分は、今日の報酬額の5%くらいかな。そもそも報酬額はいくらだ。」


中年男が、嫌な顔をして言う。

「大金貨2枚と金貨4枚だ。」


24万円か。いい仕事だったんだな。薬草採取にしては、報酬額が高い。高いからこそ揉めることになったのだろうか。


「じゃあ、報酬額は金貨1枚でいい。それは非があると判断された側の取り分から優先して差し引くことにする。ただし、今日のこの場で解決できなくて、更に事実関係を確認したりする必要があれば、その都度金貨1枚を加算する。それでどうだ。あ、俺は完全に中立の立場で判断するから、その点は安心して欲しい。これは俺の弁護士としての信用に関わる問題だから、出鱈目はしない。」


「分かった。」マーガレットと中年男が口を揃えた。

マーガレットが俺に大金貨2枚を渡した。

「確かに預かった。」


それから、ギルドに入って、隅のテーブルに座った。

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