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12 商工会議所長インタビュー

詳細は省くことにしよう。商工会議所の所長は、普段は小麦問屋をしている。町の胃袋を預かる基幹産業ともいうべきお仕事だ。その幼少期からの努力と才能の半生、若い人たちに贈る言葉、自身の座右の銘とか適当に聞いた。あとはお任せ下さいといって、適当に帰ってきた。


宿屋に戻る。執筆活動を開始する。完全に自由作文だわ。前世のマスコミがどんなものなのか知らないが、別に事実確認しないといけないわけでもないし、センセーショナルな事実を作り出して発行部数を稼ぐ必要もない。誰かを誹謗中傷する目的もないから、この文章を敵対的にチェックする人間もいない。とにかく取材対象が満足すればそれでいいのだから、そういう意味では、本当に自由に文章を書かせて貰った。唯一気をつけたのは、褒めすぎないこと。あまりに褒めすぎると、本心では全くそうは思っていないっていうことがバレてしまうからね。


ティナちゃんがお茶を入れてくれる。


ティナちゃんには、重要判例を書き写させている。王都の最高裁判所の出した判例は、全国の裁判所が参考にするから、覚えておかなければならない。もっとも全部覚えるのは大変だから、分野別にまとめさせることにした。


手始めは、性犯罪を選んだ。

わざとじゃないよ。ちょっと重要かなって思って。


そういうわけで、ティナちゃんは、人間が森で雌ゴブリンの腰布を盗んだ「ゴブリン下着泥棒事件判決」とか、猫人族が夜中に他人の住居に忍び込み少女の唇に接吻した、「猫人族キッス泥棒事件判決」だとかを一心に書き写している。


だからどうしたって言われるかもしれないけど、なんか楽しい。綺麗な字で移したエロい事件の判決をチェックして、「よろしい」というのが、楽しい。


おっと、ティナちゃんがまた書き写した分を持ってきた。

誤字がある。

実は、誤字があるのを待っていたのだ。


「ティナちゃん、この字、間違ってないか。」

「あっ、すみません。」

「駄目じゃないか。俺の仕事は、そんな甘いものじゃないんだ。」

ねちねちと言ってやった。


ティナちゃんは、うつむいて、もう一度、「ごめんなさい」と言った。下を向いていても可愛いわ。


「これは、もっと基礎的な教養を身につけてからじゃないと、難しい文書を写させるわけにはいかないな。」

手元から別の本を取り出した。図書館で借りて密かに手元においていたものだ。


「オークに犯された女騎士」


ベタだ。あまりにもベタ過ぎてついつい借りてしまった。カウンターでは恥ずかしかったけど、借りてきた。そして、このときのために置いていた。

「まずは、簡単な小説から練習しなければならないな。」

ティナちゃんに渡した。


「これを間違えないように音読しろ。」

「えっ、これをですか?」


俺は返事をしなかった。あまり問い詰められると困るしね。いや、商工会議所の所長の記事を書くのに忙しいしさ。


・・・


「小麦問屋の朝は早い。」

などと書いていると、

ティナちゃんが、

「オークたちは、力強く、私はもうこれ以上抵抗することができなかった。」

と読み上げる。


危ない。「小麦問屋が私にのしかかってきた」って、書きそうになってしまった。

うっかり記事にしてしまうと、西島組に殺されるかもしれんな。


慎重に記事を書き終えた。

ティナちゃんは赤い顔をして、ずっと読み上げている。


あ、これだと胸を触るのができないんだった。

音読は中止させた。かなり教養も高まったと思うので、明日からは、また筆写するようにと指示しておいた。


とりあえず、いつものようにティナちゃんのお尻を引っぱたいて、原稿を持って外に出た。


商工会議所の所長に、原稿を見せに行ったら、いたく喜ばれた。まあ、ものすごい偉人のような文章を書いたからね。老舗の安定した9代目とは思えないほど、激しく、有能な人間に書いておいた。歴史を変えるほどの才能があるような記事にした。表題は、「熱血革命児が小麦業界を斬る!」としておいた。これで出してもらって構わないと言われたので、片桐組長に渡しに行く。これで一仕事終わりだ。


ちなみに、組事務所の地下室が空いていたので、そこに印刷所を設置したそうだ。

ドワーフだから暗いところでの細かい作業は得意だ!って組の人たちが言っていた。そんなものなのか。

とりあえず、商工会議所所長の記事と、既に入っている広告の活字を組み始めるらしい。


それから更に数日後、六郎氏が呼びに来た。今回の本命である、四万十川騎士団長のアポが取れたということだ。騎士団の本部は、オンドレ伯爵の城にある。オンドレ町から3キロ離れているところだ。こっちの世界に来て、初めて町の外に出る。ものすごく億劫だ。俺にそんな大冒険ができるのだろうか。3キロだぞ。


読んで頂き、ありがとうございました。

次話は、少し書きにくくて、まだ書いていません。その先は書いているのですが、次の部分が穴になっています。できれば今日の内に書き上げられたらとは思っております。また投稿しましたら、お読み頂きますよう、お願いいたします。

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