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8 セクハラ弁護士だ

次の日の朝、いつもどおりティナちゃんが出勤してきた。

昨日、俺がお尻を叩いたことはなかったかのような顔をしている。

「おはようございます。」と言ってきたので、いつもどおり

「ああ」と答えた。


松本俊彦の母親が払ってきた成功報酬を受け取った。金貨15枚だ。

「多くないか。」

「松本さんのお母さんが、とても喜んでいたんです。領収書はそのままでいいっておっしゃってました。」


そうか。本当なら書き直して持っていかなければならないが、この世界には確定申告というものがない。別に収入を偽る必要もないし、偽っても何の罪にもならないから、そのままにしておこう。


とりあえず仕事がないことに気づいた。

ビルは建った。刑事事件も終わった。しかし暇そうにしていると威厳にかかわる。ティナちゃんが見てるしね。


図書館で借りた本をいくつか出してくる。重要な部分に付箋を貼っておいた。コピー機がないから、買うか覚えるか書き写すしかない。


「この付箋を貼っているところを筆写しておいてくれ。」ティナちゃんに命じた。

「あっ、はい!」嬉しそうな顔をしている。そうか、仕事がもうなくなったから首かもしれないと思っていたのかな。

そういえば、ティナちゃんの笑顔を見たのは何日ぶりだろう。改めて可愛いと思う。


俺は、別の本を取り出して読み始めた。これも、重要な部分は自分でノートにまとめていく。

俺とティナちゃんは静かに本をめくりながら、ノートに字を書いていた。


「メンデス先輩すみません、この字はなんて読むんですか?」

ティナちゃんが立ち上がって、俺の椅子の横に来て、聞いてきた。座っている俺に見えやすいように少し屈んで俺の目の高さより少し下に本を開いて持つ。本を片手で持って、本の下側を自分のお腹で押さえて、もう片方の手で読めない漢字を指差した。


「これか。」

本を見る。民法(家族法)だ。

「これは、『つつもたせ』って読むんだ。」

「つつもたせ?」ティナちゃんが繰り返した。


異世界の民法の本は親切だな。美人局まで説明してくれているのか。その行の上から通して読んであげることにした。本の上に指を置いて読み始める。


「ZがYと性交をした場合、Zの配偶者Xは、Yに対して損害賠償請求をすることができる。これは正当な権利であるが、そのことを悪用して恐喝の手段とする『美人局つつもたせ』・・・」


本の下に近づいた。ティナちゃんの控えめながらも形のよい胸が本の上に軽く乗っている。何を考えているのか、ティナちゃんの胸はそのままそこにあって、どこうとしない。


そうだった、俺はティナちゃんには遠慮しないことにしていたんだった。


俺は平然と読み続けた。「・・・つつもたせ行為がなされることはあるが、これは犯罪・・・。」指がティナちゃんの胸の頂上に触れた。ティナちゃんは何も言わない。俺も何もいわずに、そのまま次の行に進んでまた上から読んでやった。平然とだぞ。


「・・・つつもたせって読むんですね!ありがとうございます!」なぜか嬉しそうにお礼を言われた。


・・・


お昼が近くなった。そろそろ腹が減ってきた。


俺は外で食べることにしている。ティナちゃんはお弁当持参だ。俺の分も作ろうかと言われたが断った。ティナちゃんにそこまで気を許すつもりはないし。塩辛は食べたけどね。


俺が本やらノートやらを片付け始めると、ティナちゃんは大きく伸びをして、なぜか突然立ち上がって窓のところにいって、外を見た。ん?ああそうか、一休みだな。


そう思って、出掛ける準備をして立ち上がった。出掛ける準備といっても、銀貨と銅貨を数枚、ポケットに入れるだけだ。一応念のため、金貨は常に一枚持ち歩いているけど、それは予備だ。


ああ、そういえば昨日、そこの窓際でティナちゃんのお尻を叩いたんだっけ。ふと見ると、ティナちゃんのお尻が見えた。昨日は腹立たしいだけのお尻だったが、今、改めて見ると、この曲線は暴力的だ。すらりとした背筋に、細い腰。そこからぷりぷりしたお尻がスカートの下に隠れている。窓の外から初夏の昼の光が入ってきているから、お尻の形がうっすらと透けて見える。


ごくり。


いやいや。


しかし、ごくり。


撫でたい。


いやいや。


ティナちゃんだぞ。俺はティナちゃんに対して怒っているんだ。


しかし、お尻だ。


俺はこの年になるまで、女の子のお尻を触ったことがない。おっぱいは赤ちゃんのころに多分触っているのだろうけど、お尻は本当に一度もない。この前ティナちゃんのお尻を叩いたのが初めてだ。あのときは、俺も苛々していたから、ちゃんと見ていなかった。


お尻だ。さっきは、ほんのちょっとだけど、胸を触りました。これは、赤ちゃんのときを別にすれば、人生で三回目。一回目は、片桐組長と合コンしたときにキャバ嬢のエリスちゃんの胸が押し付けられたとき。これは手で触ったのではなく、肩で味あわせて頂きました。あとピーコちゃんの胸も包帯替えてもらうときにちょっと当たった。自分の手で意識して触ったのは、さっきが本当に初めて。ほんの一瞬だけどね。それに指先だけだけど。俺にとっては大きな一歩だよ。


俺の人生をもう一歩先に進めてもいいんじゃないだろうか。昨日のお尻は、あれはまあなんというか、言ってみれば、本気のお尻じゃなかった。本気のお尻って、なんなのかよく分からないけど、とにかく正式には触ったとは言い難いような気もする。うん。そうすると、俺は正式にはお尻をまだ触っていないことになる。仮に、昨日のが正式だったとしても、それでもお尻は一回しか触っていない。二回目のお尻を触ってもいいようにも思う。


いや、そういう理屈は別として、俺はティナちゃんのお尻の存在に敗北してしまいそうだった。


ごくり。


俺は今、犯罪者の顔をしている。

これは男の本能だな。

男は昔、狩をしていたわけだよ。そこで獲物が油断して無防備な姿をさらしていると、どうしてもそれを捕まえたくなるんだよ。

これは触ることができるんじゃないかって思うと、それがなぜか触らなければならないという気持ちになる。

なるほど。こうやって犯罪者が生産されていくんだな。


しかもティナちゃんのお尻は全力で、「女の子のお尻!」というシグナルを出している。スカートもそうだし、その下の柔らかい足もそうだし。


一歩近づいた。ティナちゃんはまだ外を見ている。ちょっと動いた。窓の外に何か気になるものがあるらしい。その動きにつられて、スカートがほんの少し動いて、お尻の形がかすかに判別できた。ああ。俺、今から敗北します。やっぱりお尻には勝てんわ。


ぱちん!


音を立てて、叩いてやった。


ティナちゃんはびっくりして声を出すかと思ったが、声にはならず、「ひっ」というような小さな音を出して、息を飲んだだけだった。そのまま振り返らずじっとしている。


俺は回れ右して部屋を出て行った。

次はなにをしてくれようか。少し楽しみになってきた。いや、違う。俺は怒ってるんだよ。本当だよ。


お昼ご飯を食べて部屋に戻った。ティナちゃんもお弁当を済ませたみたいだ。


椅子に座ると、ティナちゃんがお茶を入れて持ってきてくれた。会話はない。もちろん会話の必要がないからだ。俺にとってティナちゃんは、使い走りをしてくれる役に立つ部下というそれ以外には何の意味もない。あ、お尻は別だけどね。

そう考えていたら、ノックの音がした。

ご一読ありがとうございました。

セクハラシーンは、個人的にはお気に入りのシーンです。

ご不快になられた方がおられたら申し訳ありません。

明日も夕方くらいに投稿できればと思っております。

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