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2 逆ナンされるのは朝飯前です

城門の内側は、少し広場になっていた。いざというときには、ここに兵士が集結して、門を破る敵を迎え撃つのだろう。こういうところは交通の便がいいから、平和な状態になると、すぐに店とか家が建つ。そこが広場のまま維持されているということは、この町が常に臨戦態勢にあるということだ。と、専門家ばりに分析してみた。間違っているかもしれないけどね。


門番さんのくれた地図はわかりやすかったが、縮尺がない。微妙なところで不親切だ。とりあえず方角は分かるので、そっちに向かって歩き出した。

道は少し狭くて曲がりくねっている。碁盤の目のようにはなってないみたいだ。商店と集合住宅が入り混じっている感じで、通行人もそこそこある。

誰かとすれ違うたびに、「おや?」という顔をしてこっちを見る。女の場合、「おや?」じゃなくて、「キャッ(ハート)」っていう感じ。そうだった。俺、イケメンになっているんだろうか。確認のしようもないけど、きっとそうだろうと思う。試してみるか。


立ち止まってみた。遠くをみる。鳥が飛んでいるぞ。綿飴みたいな雲がゆったりと動いている。俺は綿飴よりはりんご飴派だな。うん。歯ざわりが重要だからさ。


「あのあの、大丈夫ですか?」

美少女が話しかけてきた。あっはっは。わっはっは、だ。世の中全ての人に言いたい。お前たちの知らない世界がここにはあるぞ。いや、異世界にきましたっていう話じゃなくて、イケメンのみが見る世界がそこにはあった。立ち止まって遠くを見ているだけで、美少女に話しかけられましたよ。

え、聞きたい?どんな美少女か、具体的かつ詳細に描写して欲しいって?

いいよいいよー。俺は心の広い男です。この感動をお前らと共有しようじゃないか。

じゃじゃーん。まずは胸の発表だよ。これは控えめだ。30歳近くになって、まだ触ったことはないんだけど、見た感じでちゃんと分かるぞ。Bカップだ。Bカップといえば、ほどよいというか控えめ。巨乳派の人は不満に思うかもしれない。貧乳派の人も、微妙に「ちょっと違う」と思うかもしれない。しかし、彼女は、見たところ13歳程度。つまり、これからどんどん成長していくってことだ。そう考えると、まあ今後に期待というところだろうか。


髪の毛の色はやわらかい栗色。肩までふわっと伸びている。瞳の色も同じだ。色白美人だ。無駄がなく、シャープな感じだな。生き生きとして敏捷な小動物を思わせる。それでいて可愛いというよりは、美しい。

背の高さは145センチくらい。こっちもこれから成長すると思うぞ。

服装は薄い麻っぽい白のブラウスみたいなのを着ている。首に青いスカーフを巻いて胸元におろしているのが可愛い。しかもブラが透けてる。かすかに透けてる。薄い水色だ。よいではないかね。

スカートは落ち着いた紺色のフレアミニだ。これもいいぞ。下にはスパッツを履いているのも清楚で、かつ活動的な感じだ。


「気分悪いですか?」

美少女が心配する。

「心配掛けてすみません。今日この町に着いたばかりで、ちょっと考え事をしていたんです。」

とりあえず、差しさわりの無い返事をする。

「あっ、ごめんなさい。私、ティナって言います。具合が悪いみたいで声を掛けてしまいました。おせっかいでしたよね。」おどおどしている姿も可愛い。

「ティナちゃんだね。ありがとう。俺は、メンデス・池、15歳だ。南の方から避難してきたんだが、これからはこの町で生きていかなければならない。辛いことも悲しいこともあるだろう。楽しいときもあるだろう。その中で、俺は、誰に対しても誠実に、一生懸命、日々の仕事をこつこつとやっていくつもりだ。」


なんか、余計なことを口走ってしまった。どうもイケメンの顔をぶら下げていると思うと、イケメンが言いそうなことを言わなければならないような気がして、わけのわからないことになってしまった。前の世界だったら、どんな女でも、「こいつ何いってるの?」という顔をするだろう。俺たちのティナちゃんは違うぞ。

「そうなんですか!大変な目にあってこられたのに、すごいですね!私、そういうメンデス先輩のこと、尊敬します!」


ああ、いい娘だ。俺、ものすごく中身の薄っぺらいことを言ったような気がするのだが、それでも、ティナちゃんは、胸の前で自分の手をぎゅっと握り締めて、俺の眼を澄み切った瞳で見ながら、そういった。

しばらく俺たちは見詰め合っていたのだが、ティナちゃんは、突然はっと我に返ると、なんか「いそがなくちゃ」とか、「失礼します」とかいいながらどこかに走り去ってしまった。仕方がないので、とりあえずまた歩き始めた。その角を回ると、目的の宿屋らしい建物が見えた。「南門前ホテル」と看板が掛かっている。ここだな。


しかし、俺、ティナちゃんに嫌われたんだろうか。見つめすぎて、「キモい」とか思われたのかな。昔の辛い記憶がよみがえる。それにしても楚々とした、やさしい感じの娘さんだった。


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