7 武藤の跡地にビルが建つ
東区1丁目東通りの西島組事務所の隣に5階建てのビルが建っていた。ビルというのは大げさだ。集合住宅というべきだな。一階には、受付と雑貨屋が入っている。雑貨屋というと聞こえがいいが、ちょっと商品は特定の傾向がある。そして、その上の階は、・・・。
「連れ込み宿にした!」片桐組長が言った。満ちたりた笑顔だ。その発想はなかったよ。それより、大通りに面してるんだろ。いいのか。まあそうか。日本だと風営法か何かにひっかかるんだろうが、この町にはその手の法律も条例もない。それに、このビルは一見する限り、普通のアパートなので、外観上問題もない。
なお、一階の雑貨屋さんは、この特殊目的時間制貸部屋を利用したいと思う方々が欲しいであろう商品を揃えている。詳細は想像に任せるよ。俺の口からは言いにくい。
「聞いてませんでしたよ!」
「おう、突然思いついたんだ!先生心配するな。報酬はしっかりと色を付けて払うよ!それにこの方が資金の回収が早いんだ。」
「住人は追い出したんですか?」
新しい建物の区画を分譲することになってたはずだ。
「追い出したっていうか、ここの二階に住むのは嫌だっていって逃げ出した。もっとも、そのままじゃ騙し討ちになっちまうから申し訳ねえ。それはそれできちんと対価は払うつもりだ。先生、そっちの関係の処理頼むよ。いや、あいつらも怒ってはいない。俺が土地も居住権もまとめて買い取るって言ったら信用してくれている。これがあいつらの住所だ。任せたぜ。」
武藤さんの老母が受付と店番をするらしい。受付の奥に武藤さんの居住スペースがある。なかなかよく考えているな。でも上の階で何が行われているかを考えると、住むのはいい気持ちはしないだろうな。その点は申し訳ないところだ。あ、いや、これは俺のせいではないだろう。片桐組長の判断だし。
そのあと、片桐組長から、立退き料の上限を確認して、町を走り回った。
幸い、立ち退いた二世帯はどちらも怒ってはいなかった。むしろ西島組の仕事の速さに感心していた。充分すぎるほどの金額を提示したので、あっさり了解してもらって、前の契約書を破棄して新しい契約書を交わした。それを東区法務局に持っていって、登記簿を書き換えてもらう。これで、おんどれ・えんたーていんめんと・あんど・こんすとらくしょん株式会社(代表取締役会長 片桐)は、自社ビル(ホテルだけど)を獲得した。
ここまでの仕事で、金貨30枚を受け取った。まずは、スーツを作るか。
服屋によって、ぶら下がりをそのまま買って帰った。オーダーメイドも出来ると言われたが、別にファッションショーに出るわけでもなし、まあいいかって思ってそのまま着て帰った。帰り道に晩御飯を食べた。
宿屋に戻ると、ティナちゃんはもういなかった。
夕方になったら帰っていいと言っていたので、自分で判断して帰宅したのだろう。お金は部屋において置くわけにはいかないから、一度ティナちゃんが持って帰って、明日渡してくれるのだろう。それはそれで問題ない。そのまま寝た。