20 西島組の地上げ作戦
ベッドでしばらく休んだ。なんとか立ち上がる気力を振り絞って荷物をまとめて外に出た。
適当に店に入って少し早いお昼ご飯を食べた。おしのさんはどうしているのだろうか。宿屋の私室で寝ているのだろうか。それとも病院に入っているのだろうか。全く情報がないし、動きようがない。とりあえずやるべき仕事を先に片付けるしかないと思った。後ろ髪を引かれる思いで、西島組に行き、武藤さんと合流した。
隣の3軒を回った。3軒といっても1軒は武藤さんだから問題がない。あとの2軒も大丈夫だった。最初は胡乱な顔をされたが、武藤さんの信用があったのだろう。俺がノートを開いて、仕組みを説明すると、誰かが損をする計画ではなく、みんなが得をすることになることが納得して貰えた。その場で契約書を交わした。こういうとき、手書きだと面倒だよね。隣の組事務所にいって、片桐組長に契約書を見せる。これで工事に取り掛かれるぞという片桐組長の笑顔が、少し嬉しかった。
昨日、誰かに斬られた話をした。というか、腕の包帯を見られて事情を聞かれたのだ。片桐組長は、
「この物件とは関係はねえだろうが、心配だな。先生、他に何かやっていないか。誰かから恨みを買ってねえか。」
と、聞いた。
心当たりは、ある。宿屋のぼんくら亭主だ。まあ、あれはどちらかというと俺が悪いともいえる。おしのさんが人妻で、俺はそのおしのさんを口説くつもりなのだから、それを察知したぼんくら亭主が俺に対して怒りを覚えるのは当然のことだ。
いずれにせよ、そんなあいまいなことで、ヤクザに一般人の名前を伝えるわけにもいかない。
「いや、心当たりはありません。あ、そうだ、六郎さんが犯人に仕立て上げられそうになった犬人族の殺人犯は、その後行方不明ですよね。」
片桐組長は、俺の後ろにある額縁の絵に急に興味が出たようだ。目をそらして、絵を一生懸命見ている。
「ああ、その件は、関係ない。その犬人族の真犯人は、多分、なんだか遠いところに旅に出たという噂だ。」
あー、聞かなかったことにしよう。俺は何も聞いていないです。
「それ以外だと心当たりはありませんね。」
「そうか。とりあえずは身辺に気をつけるしかねえな。ところで、今日事務所にピーコが遊びに来てんだ。ピーコはな、実は看護学生だったんだよ。傷の手当てとかは得意だから、ここでやらせることにするか。」
大部屋のソファでピーコちゃんに包帯を外してもらった。
「メンデス先生、この前はどうも。」
高級寿司「いさり火」のことだ。キャバ嬢のピーコちゃんにはクチバシを触らせて貰ったんだった。そのとき俺の隣にはマリちゃんが座っていて、胸が当たったのが、非常に良かった。
今はピーコちゃんの胸を肩で感じているが、これはこれでいいものだ。
組事務所には救急セットがあるらしい。それで消毒してくれた。
昨日は浅手とはいえ、かなり斬られたはずだ。本当であれば、縫わないといけなかっただろう。俺の仮説だけど、異世界だけあって、負傷の深刻度は、前世とは違うのかもしれない。
ピーコちゃんが少し離れる。俺も気になっていたので、自分の傷口を確かめる。おっと、傷口のすぐ近くにピーコちゃんの谷間があった。
むむ。傷口を見るべきか、谷間を見るべきか。
これはものすごく簡単な問題だ。傷口は逃げないけど、谷間は今しかない。
谷間を凝視する。
「うーん、綺麗に斬られちゃったな。」
といいつつ、目は谷間。
「先生、傷口なんかみてないで、私の方を見て。」
ピーコちゃんが甘い声でいう。
「いやいや、傷を手当てしてもらっているのに、そんなヨコシマな気持ちは申し訳ないよ。」
といいつつ谷間を見る。ものすごく触りたいわ。
「先生だったら、触ってもいいよ。」
「ありがとう。また今度、二人のときにね。」
とりあえずイケメンなので、さらっと答えておいた。
ともあれ、ピーコちゃんの丁寧な処置は、残念ながら数分で終わってしまった。
大部屋の組員さんたちは、ちらちらとこっちを見ている。いい気分だ。
読んで頂き、ありがとうございました。
ここはもう少し軽く済ませる予定の話だったのですが、ちょっと女っけを出してみました。
次回は、明日の夜に投稿させて頂こうと思っています。