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15 裏切られた気分だよ、ティナちゃん(ダークな方)

ちょっと時間ができたので、ここから3話投稿致します。

東区一丁目から南区六丁目まで行くことになる。結構面倒だ。道が悪いので、一度中央区に戻って、南通りに入り南下する。六丁目が近づいてくる。今朝まで俺が寝ていた街路樹が見えた。おしのさんのことをちょっと思い出して考えた。この仕事がうまくいくと、似たような物件を一杯探して、西島組と役割分担して土地転がしをしよう。それで小金ができたら、おしのさんを迎えに行こう。


五丁目から六丁目に入った。交差点のところに、「六丁目交差点」と書いてある。このあたりは、日本と感覚が同じだな。もっとも信号はない。それほど人通りは多くはないし、ほとんどの人間は徒歩だから、それで問題はないはずだった。


荷車が横転していた。満載していた木材や石材が散乱している。どうしようか。手伝うべきだろうか。そう思ったけど、なんか積み方とか運び方に決まりがあるみたいだ。手伝っている人はみんなベテランさんらしく、俺が混じったら確実に邪魔になりそうだ。かといって、あの中を通り抜けるのは少々難儀だ。ふと横を見ると、文房具屋さんがあった。


ティナちゃんの雑貨屋さんに文房具があったかちょっと記憶がない。ここでも一応商品をチェックしておこうと思った。


棚が並んでいる。日本の文房具屋さんとほとんど同じ感じだ。商品の数と種類は少ないけどね。そのかわり一つ一つが大きい。でっかい算盤とか置いてある。


棚の向こう側で女の子の声がした。おや、この可憐な声は?


「この便箋、買うことにしようかな。先輩に手紙書くんだ。」

「ティナ、先輩ってどういう人なのか、説明しなさいよ。私も会ってみたいんだから。」

「駄目っ!ライバルは蹴落とす前に、土俵に登らせないのが基本だもん。」

「えー、どんな人かな。ティナ、意外とくだらない男に夢中になりそうだしねー。」

「ま、まあ、メンデス先輩は無職だし、顔も最初はかっこいい!って思ったけど、冷静になって考えてみると、それほどでもないような気もするし、うーん、正直、一応キープしておこうっていう程度だよ。本命は、どうしようかなー。田端君とかも、結構いいよね。」

俺の話題だ。あと田端君だ。しかもティナちゃん、かなり酷いこと言ってないか。


「それ、いいとこないじゃん。」

「ないんだよー。それにチラチラ胸とか見てくるし。」

「え、変態。なんでそんなのに手紙なんか書くんだよ。紙とインクの無駄だよ」


「まあ可哀想だからだよ。友達いなさそうだし、女の子に縁がなさそうだし。ボランティアかな。ほら、雨に濡れた猫とか見ると、あんまり触りたくはないけど、ちょっとだけ餌付けしとくかなっていう感じだよ!」


自分の顔が真っ赤になっているのを感じた。昨日の夜のことで、他人の侮蔑的な態度に、ものすごく鋭敏になっていた。


宿屋の亭主に対しては、自分の立場が弱いという気持ちとかがあって、怒りの気持ちを無意識に制御していたのかもしれない。ティナちゃんのような小さな女の子にまでも馬鹿にされたということで、その気持ちにストップが掛からなくなっていた。手が震えている。この世界に来てから蒙ったあらゆる理不尽な出来事や、不便や不安が、全てティナちゃんに対する怒りに転化している。

どうしてやろうか、と考えているうちに、ティナちゃんたちは笑いながらお店を出て行った。


ティナちゃんの雑貨屋に行く気にはなれなかったので、この文房具屋さんで、買い物を手早く済ます。ペン、ノートだ。それから別の店で服を何着か、それから下着類を買った。


買い物をしているうちに気分がおさまってきた。とりあえず気持ちを切り替えようと思う。ここで足踏みしていても、またどこかの誰かに馬鹿にされる日々が続きそうだ。もう一つ用事を終わらせることにした。


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