11 図書館
図書館は町の中央区にある。日本にある図書館とほとんど同じ感じだ。規模はかなり大きい。利用者登録とかは不要だ。
法律書コーナーに行った。まずは一番気になってたことを調べる。
予想どおりだ。この世界には、資格弁護士制度がない。誰でも、「はい、俺が弁護士やります。」って言えば、それで通るらしい。その代わり、信用がなければ、誰もわざわざそんなのに仕事を頼んだりしないから、簡単には稼げないから、この世界には、弁護士業をする人間はほとんどいない。この町にはいないみたいだ。これは「オンドレ町紳士録」で調べた。便利だな。ちなみに片桐組長は載っていた。「おんどれ・えんたーていんめんと・あんど・こんすとらくしょん株式会社代表取締役会長」という肩書きだ。たしかキャバクラって言ってたからな。だからエンターテインメントなのだろう。その他にも何かしているのかもしれないし。
それから法律の本をチェックする。最初に見つけたのは、「実務判例六法だにゃっ」という本だ。「だにゃっ」ってなんだ?著者は、マイケル・リチャード・デイヴィス2世となっている。伯爵領法務官と同じ名前だ。法務官が3世だから、書いた人は、お父さんだろうか。いずれにしても、書名に「だにゃっ」はないだろう。
それから、民法や刑法とか、そういう重要な法律の本を借りることにした。
「冒険者法 ~改正後の展望~」とか、「貴族特権概論」、「封建領における行政通則法に関する業務要領」というのもある。これは異世界ならではの醍醐味ですな。ふむふむ。これは目を通すだけにした。
かなり安心した。異世界の法律は、江藤新平氏が作ったときに、かなり簡略化して導入したらしい。基本的な構造は日本と同じで、それがものすごく単純化されている。俺の知識でなんとかなりそうだ。
何冊か選んで本を借りた。あと思いついたことがあったので、「契約書書式例集」というのも借りておいた。
ついでに魔法書を探してみる。やはりこの世界には魔法はないのかもしれない。今まで一度も見なかったし、そういう話も聞かなかった。子供向けのお話くらいしかない。
カウンターで並んでいると、お姉さんが、
「ハヤトさーん、お探しの、『魔法使いハリーと賢者の時間』見つかりましたよ!」
と叫んだ。
どういう本だ?誰だ、それ借りるの。
見ていたら、30歳くらいの男が走ってきた。こらっ、図書館で走るな。って思っていたが何も言わなかった。顔はそこそこ整っている。それなのに、なんともいえない不快な雰囲気を漂わせている。俺は顔をしかめた。カウンターの司書嬢も嫌な顔をしている。
いままで、人のことを顔で蔑んだことはなかった。態度に出したこともなかった。俺自身、他人のことをいえた立場ではなかったからというのもあるが、イケメンになった今でも、人を顔で判断したりはしない。でも、この男はどうにも好きになれそうになかった。司書さんも嫌な顔をしている。
ここまで嫌われる顔も珍しいよな。
それはそれとして、本の貸し出しを受けよう。手続きをお願いする。