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序章 1 長いトンネルを越えたら

異世界で冒険者以外でも、どきどきできる物語を書くことができればいいなと思っています。

序 章

1 長いトンネルを越えたら


ああ、トンネルです。トンネルのように暗いけど、感触としてはウォータースライダーです。真っ暗なので、どれくらいの速さかは分からないけど、なんとなくすごいスピードで流されていっている感じ。困りました。いや、困ってしまいました。俺、30年近く生きてきて、これは初めてです。これがうわさに聞く、異世界召喚という奴でしょうか。事前の準備を怠っておりました。申し訳ありません。ところで、神様とか出てきて、色々細かく条件とか詰めるんじゃないかと思うんですが、どうやら神様は別の用事でお忙しいようで。仕方が無いから、一方的に条件を述べることにします。


「イケメン!」「イケメン!」

叫んだ。そうだよ。スキルとかレベルとか、そういうの、社会人には関係ないから。それよりも顔ですよ、顔。第一印象の90%が顔だっていうけど、それは嘘だ。100%が顔で決まるんです。

「イケメン!」もっと叫んでみた。なんか、楽しいぞ。テンションが上がってきた。連呼する。


そういうわけで、俺、日本国から異世界に転移することになりそうです。ウォータースライダー、どこまで続くんだろ。

「ポーン」と電子音的な合図がした。機械的な女性の音声が流れる。

「あと、500キロメートルで、出口です。」

ナヴィですか。親切です。でも、速さが分からないから、その500キロメートルというのが、どれくらいの時間で付くのか分からない。新幹線程度の速さだと仮定して、約2,3時間程度だと推測する。そうすると、イケメンをあと何回唱えられるだろう。


突然、身体が揺れた。ウォータースライダー的な何かが急激に曲がったみたい。なんか、やわらかくて暖かいものがぶつかってきて、俺と絡まりながら滑っていく。声がした。

「神様、職業は勇者でお願いします。それから」

残念。男の声だ。若い男だ。俺は会話を楽しむつもりはなかったので、

「イケメン!イケメン!」と叫んだ。

若い男の声は、

「違います!イケメン違います。おっさん誰だよ。黙ってろよ。」と言った。

「イケメン!」

「違います!スキル全部つけてください。おっさん、誰でもいいけど黙ってくれ。」

しばらく若い男は誰かと喋っていたが、交渉は無事に終わったらしく、あとには、イケメン!と叫ぶ俺の声だけが残された。


「あ、ごめんねー。次、君の番だっけ?」

おお、神様だ。隣の男とのご用事は終わったらしい。はい、次、俺の番です。お忙しいところ、申し訳ありません。あと2時間はあると思うので、じっくり条件詰めましょう。


「うーん、イケメンね。ふうん。それから?王子様がいい?皇帝がいい?勇者?なんでもいいよ!スキルは、一覧表を送るから、好きなのに○付けて。あ、別に数の制限とかないよ。好きなのでいいから。うん、好きなので。あとレベルは1から100まで希望の数字を言ってくれたら、それにするから。あ、あと幼馴染なんかつけちゃおうかな。そういう設定もありだよね。旦那、あんたも好きだねえ。」

神様がかなり早口でしゃべっている。一方的な人だ。かなり勝手な人だ。この神様、人と人との関わり合いの中で生きていない神様だ。当たり前か。返事をしようとした瞬間、電子音がなる。

「ポーン。あと2キロメートルです。ご利用ありがとうござ」

その瞬間、俺は白い光に包まれた。これが俺の転移に関する経緯です。俺、なんかすごく大切なチャンスを棒に振ったかも。次はもっとしっかり頑張りたいです。


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