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プロローグ

 VRMMO『アラバスター』を購入したのは肌寒くなった10月の終わりごろである。


 当時の俺は既に廃れたMMORPGに熱中しており、特別アラバスターをプレイしたかったわけではない。


 学校の人間が噂していたほどのアラバスター、もしもプレイすればその輪の中に入れるのではないか?と思っただけだ。


 そう、何を隠そう俺は”ぼっち”だったのだから。


 ぼっちとは、孤独な人種である。


 昼食を一人で食べる、休み時間は友人と呼べるものもいないため一人で机に座っている、学校帰りのキャッキャウフフなイベントも、熱血な部活もなにもない。


 なら部活に入ればいい。そう考える人間もいるだろう。


 しかし、俺は”究極の負けず嫌い”である。そして”究極の面倒くさがり”でもあるのだ。


 負けたくない、だからこそ努力をしない。努力をして負ける可能性があるのならしなければいい。


 そんな俺は高校生となり、友人を作れなかった。恋人も作れなかった。


 目立たないように前髪で顔を隠し、無骨な眼鏡を着用する。


 成績もまあまあで、特に部活もしない。


 俺がネットゲームに夢中になったのは、”ゲームだから”と割り切れるからであるだろう。


 ゲーム、遊び。努力をしないで遊べる媒体。顔をあわせないことで、第一印象による影響も出ない。


 小学校の頃、男子にはからかわれた。女子には遠巻きに見られる。


 中学校の頃、男子には避けられた。女子でさえも避けるようになった。


 だから俺は高校生になった時、近所の高校へは行かずに、遠く離れた都内の高校へと進学した。


 なぜかは未だに理由が分かっていない。リアルでの自分に自信がもてなくなったのもこの時からだ。


 なら外見にとらわれない人ならどうかと、ダサい格好をして現在に至るというわけだ。


 2年生になり、秋。皆は受験モードになる前の楽しい時間を満喫しているようだった。


 そんな折、ふと耳にしたVRMMO『アラバスター』が学校全体、否、日本全体で流行っているといっていたのだ。


 VRゲームが発売されたのはいまから半世紀ほど前、当時は問題が起こったらしいが今では国民のほとんどが所有している。


 会社の接待やスポーツの練習など、様々な用途に使用できるからだ。


 ここ50年の間でVRゲームは進歩を遂げて、味覚・嗅覚・視覚・聴覚・触覚と五感の全てをリアルと変わらない精度で体験することが出来た。


 ただし、VRMMOの触覚・嗅覚と聴覚・味覚の両立は難しく、容量を超える範囲でしか作成できなかったらしい。


 しかし、件の『アラバスター』は五感の全てを繊細に所有できる新システムを取り入れたらしい。


 ちょうどMMORPG『GOS』も転生後カンストしたところでキリが良かったために、一端切り上げてやってみようと思った。


 『GOS』はソロだったので、フレンドに最後の挨拶をしてアイテムを分け与えてキャラを削除した。


 やるとなったらとことんやるのが俺なのだ。だって負けず嫌いだから。


 『アラバスター』と『GOS』は同じ会社が開発&運営しているようで、『GOS』からの移住組みにはキャラ削除時のレベル・プレイヤーランク等に応じて特典が付与されるらしい。


 まあ・・・その・・・プレイヤーランク1位余裕でした。だってMMORPG自体が廃れてるし。


 ヘッドギア型のVRゲーム専用機『プラグロム』、プログラムとプラグインをかけたともっぱらの噂だ。


 父親と母親と俺の三人家族なうちの家庭は、父・母共にどっかの会社のお偉いさんだ。


 帰ってくるのは週に三日程度。両親共に息子にとても甘い。帰って来れない反動だろうか?


 たまに俺に行き詰っていることを話しては意見を聞いてくる。少し期待されているのが嬉しい。


 とにかく、そんなわけで俺はVRMMO『アラバスタ』にログインしたのだった。


====next game====

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