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the King of Terrors

作者: ちゃむにい


一人称には様々な言い方があり、男女によって使い分けが必要だ。


一般的には、女性は『私』『自分』『あたし』、男性は『私』『自分』『僕』『俺』


それなのになぜだろうか。


私は女なのに、心の中では『俺』と自分を称していた。気が付いたのはチャットをする時で、パソコンのキーを初めて打つ時に、多少抵抗感はあったが、自然と『俺』という文字を打っている私が居た。

私は普通高校に通っているが、理系コースということもあり、ほぼ全員が男子生徒だ。『the King of Terrors』というモンスターを退治するゲームを始めたのも、隣の席にいた男子生徒が面白いと言っていたからである。


私が、『俺』と思わず打ってしまったのも、男友達が欲しかったからかもしれなかった。『現実』ではやはり『女子』だという現実が壁になって、あまり仲良くなれなかった。非現実な付き合いをするなら男の振りをして、男のような会話をするのが仲良くなる早道だと無意識に思ったのかもしれない。男同士だと思われると時々下ネタを絡ませてくる人もいるから、怪しまれないように話を逸らすのが難しかったが、みんなフレンドリーで楽しかった。一緒にモンスターを狩りに行く時などはテンションが上がったものだ。

何度かオフ会のお誘いもあったが、自ら女だとカミングアウトする気はさらさらない。


全く行く気はしなかった。



………それがまさかこんな事に繋がるとは誰が想像しただろうか。



現在位置は洞窟の中。



確か3人パーティで狩りをしに来た筈…だったが、ふと気が付いたらこの洞窟の中にいた。


洞窟入口から見た周囲の景色には愕然とした。猛吹雪で視界は悪く、前方は崖だった。

リアルに寒さも伝わってくるので、急いで洞窟の奥に戻った。

何分、いきなりの事だったので戸惑っていたら、目の前にいた2人が喧嘩を始めた。

ギルドメンバーの中でも特に仲の良い2人で、『豚丼』さんと『貧乳至上主義!』さんだ。

みんなは『ぶうさん』と『変態さん』と親しんで呼んでいる。

2人は確かリアル友達の間柄で、頻繁に互いのキャラクターでログインしていた。


そして今、現在もどうやらキャラが違うらしい。


それもそのはず、『貧乳至上主義』さんのキャラクターは女だ。防御や攻撃能力そっちのけのビジュアル優先でキャラを構成している。二次転職したと騒いでたのが先週末の話だからまだ1週間も経っていなかったろう。二次転職してレベル1になってでもなりたかった、ゆるいパーマがかった金髪サラサラ空色の瞳、10歳ぐらいのまだあどけない容姿。それはまさしく『変態』さんの理想というわけだ。


反して、『豚丼』さんのモットーは『老爺』を極める事だった。メカを背負って「若いモンにはまだ負けんぞォ、フォーフォッフォ!!」というのが決め台詞の完全ネタキャラだ。大量の爆弾を敵にも味方にも叩きこむ、派手なパフォーマンスでファンも少なくはないが、あくまでネタキャラだ。幼女好きの『変態』さんがそんなビジュアルに耐えられるわけもない。しかも哀れにも装備がパンツ一丁とか。


ある意味『変態』さんにピッタリだな、とのど元まで出かかったがなんとかこらえた。


ちなみに私は、というとハチ介というキャラでログインしていた。名前から見てもわかるように男のキャラクターだ。一番レベルの高いキャラクターでログインしていて助かったが、女キャラを育てるべきだった。まさかこんな場所でキャラ選択について後悔することになろうとは。



(策を練るしかないな。いつまでもこんな場所にはいられないだろう。)



外は猛吹雪。このまま出ていったら凍死すること請負だ。


「………。」


しかし、一番女だってバレたくないギルメンとまさかこんな風に顔を突き合わせるとは!訂正するなら最初が肝心だったのに、やはり口から出てきたのは『男』のような喋り方で、『男』の振りをしてしまった。


そんな自分に自己嫌悪したが、無駄に整っているこのキャラクターの表情はピクリともしなかった。




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