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第7話:お洗濯の時間は、魔王様と二人きりで

今回は少し趣向を変えて、お洗濯回です。

魔王様のマント、洗っちゃいます

魔王城の裏手には、


魔界の山々から

流れ出る清らかな水を

引き込んだ、


巨大な

洗濯場があります。


城中の魔族たちが

私の指導で

掃除に目覚めたおかげで、


今や城の清潔度は

過去最高を

更新中。


――ですが。


まだ、

「大物」が

残っていました。


「ゼノス様。


今日は

例のものを

洗いますよ」


「……例のもの、

だと?」


私の呼びかけに、

ゼノス様は

少し身構えたように

応じました。


私が

指差したのは――


ゼノス様が

常に身にまとっている、

魔王の証。


漆黒の

『覇王のマント』。


「それは……


代々の魔王が

戦場で浴びた返り血と、

数多の怨念が

染み付いた呪具だ。


普通の人間が触れれば、

その毒気で

腕が腐り落ちるぞ」


「ふふ。

大丈夫です。


私を

誰だと思っているんですか?


これは

呪いじゃなくて、

単に

千年間蓄積された

『皮脂汚れ』と

すす』です。


今のゼノス様には、

もっと

ふんわりしたマントが

似合います!」


私は

強引にマントを預かると、


魔力を込めた

特大のタライに

放り込みました。


聖女の魔力で生成した、

『超高純度・

天然石鹸』を

削り入れ、


お湯を

たっぷり。


「ゼノス様。


これも

掃除の一環です。


一緒に

手伝ってください。


はい、

靴を脱いで、

ズボンの裾を

まくって!」


「なっ……


私が、

洗濯板を

使えというのか?」


「いえ。

足踏み洗いです!


その方が

生地を傷めずに、

芯まで

汚れが落ちるんですよ」


戸惑いながらも、

ゼノス様は

渋々といった様子で

素足になり、


タライの中へ。


冷徹な魔王が、

聖女と一緒に

一つのタライに入り、


仲良く

足踏みをする。


……はたから見たら、

ただの

新婚夫婦にしか

見えない光景でしょう。


「ほら、

もっと

リズムよく!


一、二、

一、二!」


「……こうか?


……くっ。

この感触、

意外と

悪くないな」


最初は

ぎこちなかった

ゼノス様も、


次第に

コツを掴んできたようです。


タライの中からは、

黒い泥のような

呪いが

どんどん

溶け出していきます。


その代わりに、

マントは

本来の美しい

『真紅』の色を

取り戻していきました。


ふと見ると。


真剣な表情で

足元を見つめる、

ゼノス様の

横顔。


いつもは

厳しい表情の彼が、


今は

少しだけ、

子供のように

楽しそうです。


「……リリア。


私は今まで、

魔王として

常に汚れ、

穢れを背負うのが

宿命だと思っていた。


だが、

こうして

お前と洗っていると、


自分の中の

ドロドロした重荷まで

消えていくようだ」


「それが

洗濯の魔法ですよ、

ゼノス様」


不意に、

ゼノス様が

私の手を

取りました。


水しぶきで濡れた

彼の手は

温かく、


少しだけ

震えています。


「……お前を

聖王国から

連れてきたのは、

単なる気まぐれだった。


だが、

今は違う。


私は、

この

『白くなったマント』を

翻して、


お前の隣に

居続けたいと

思っている」


真っ直ぐな瞳で

見つめられ、


私の心臓が

大きく

跳ねました。


掃除のことなら

何でも

答えられるのに――


こういう時の

「正解」は、

どの教本にも

載っていません。


「……あ、あの。

ゼノス様。


その……


マントが

綺麗になったら、

今度は

一緒に

『日向ぼっこ』を

しませんか?


お日様の匂いがするマントは、

最高に

気持ちいいですから」


「……ああ。

約束しよう」


夕暮れに染まる

洗濯場で、


私たちは

いつまでも、

二人で

笑い合っていました。


――一方、その頃。


聖王国の

エリオット王子は、


自慢の金髪に

住み着いた

「しゃべるカビ」に、


毎日

呪いの言葉を

囁かれ、


発狂寸前の夜を

過ごしていたのでした。

足踏み洗濯。

はたから見れば完全に新婚さんですね。

ゼノス様、意外とノリノリです

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