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第6話:魔族の将軍たちと「大掃除大会」、そして城の変化

前回、カビを滅ぼしたリリア。それを見た将軍たちの反応は……

地下の

『腐食の原種

(ただの黒カビ)』を

一掃してからというもの。


城内の魔族たちが

私を見る目は、

さらに

変わりました。


かつては

威圧的な態度で

「人間め」と

見下していた将軍たちが、


今では

私の周りに集まり、


恐る恐る、

しかし

真剣な表情で

相談を持ちかけてくるのです。


「リリア殿!


この我が魔剣

『血濡れの断罪者』の

切っ先に、


なぜか

ベタつく

『怠惰の呪い』が

こびりついておる!


聖水で拭っても

効果が薄いのだが、

貴殿の

その『ハイター魔法』で

なんとかならないだろうか!」


「リリア様!


我が調理場の

換気扇に

こびりついた、


数百年ものの

油ギッシュな

『怨念(コゲ付き)』を、

どうか……!


魔王様にも

『最近料理の味が重い』と

ご指摘を受けてしまい、


このままでは

首が

飛んでしまう!」


相談は、

引きも切りません。


どうやら

屈強な魔族の将軍たちも、

日々の

「不潔」には

悩まされていたようです。


彼らは

それを

「呪い」

「怨念」と

呼んでいましたが――


私には

ただの

「頑固な汚れ」にしか

見えません。


ですが。


いくら私一人でも、

この広大な

魔王城の隅々まで

完璧に

綺麗にするのは、

正直

骨が折れます。


そこで私は、

一つの

アイデアを

思いつきました。


「皆さん!


掃除は、

一人でするものでは

ありません。


今日は

みんなで力を合わせて、

この魔王城を

ピカピカに

しませんか?」


少し間を置いて、

私は胸を張ります。


「名付けて――


『魔王城・

春の総力

大掃除大会』です!」


私の提案に、

魔族の将軍たちは

戸惑いました。


「な、なにを戯言を……

我ら

誇り高き魔族が、

労働など……」


「掃除など、

下等なゴブリンにでも

やらせておけば

良いだろう!」


――ですが。


私は、

彼らの反論を

意に介しません。


聖なる魔力を

編み込んだ、


『魔法の雑巾

(ホーリー・クロス)』を、


将軍たち

一人ひとりの手に

握らせました。


それは、

一拭きで

汚れを分解し、


触れたものを

清める

特別な雑巾。


「まずは、

皆さんの

大切な武器から

磨いてみませんか?


この雑巾で拭けば、

頑固な錆や呪いも

綺麗になりますよ」


半信半疑で

魔剣を拭いた

将軍の一人が、

目を丸くします。


「おおおお!


見てくれ!

私の斧が、

まるで

打ち立てのように

輝いているぞ!


この刃こぼれも、

怨念によるものだと

思っていたが……

ただの錆だったのか!?」


「私の魔槍も、

血の臭いが消えて、

清々しい

木の香りがする……!


これなら

敵に気づかれずに

接近できるぞ!」


最初は

渋っていた魔族たちも、


一拭きで

汚れが

魔法のように消え、

新品同然になる

快感に――


すぐに

取り憑かれてしまいました。


彼らは

「掃除」という概念を、


まるで

新しい魔術を

習得したかのように

楽しんでいます。


「この床磨き、

意外と

体幹を鍛える

トレーニングになるな……!」


「窓を拭くと、

遠くの敵まで

よく見えるようになるぞ!


これは

軍事訓練にも

なるではないか!」


屈強な魔族たちが、


列をなして

床を磨き、

窓を拭き、


歌を歌いながら

城を

綺麗にしていきます。


城全体を覆っていた

黒い霧は

すっかり晴れ、


代わりに

温かな陽光が

差し込むように

なりました。


城の壁に

こびりついていた、


呪いだと思われていた

不気味な顔の染みも――


ただの

湿気による汚れとして、

綺麗さっぱり

消え去っていきます。


その様子を、

私は

ゼノス様の隣で、


城のバルコニーから

眺めていました。


「リリア。


貴様は

ただ汚れを落とすだけでなく、

彼らの心の

『澱み』まで

洗い流してしまったようだな」


ゼノス様は

ふっと微笑み、


どこか

満足げな表情で、

私の頭を

優しく撫でます。


「皆、

生き生きとしている。


これまでは

互いの足の

引っ張り合いばかり

だった彼らが、


貴様の周りでは

協力し合っている……」


「え?


皆さん、

ただ

ピカピカになるのが

楽しいだけだと

思いますよ?」


私の

天然な答えに、


ゼノス様は

可笑しそうに――

そして、

少し寂しそうに

笑いました。


そして。


私の手から

雑巾を

そっと取り上げ、


自分の

大きな手で、

その雑巾を

握りしめます。


「……私も、

手伝おう。

リリア。


お前のその手で、

私にも

『楽しい掃除』を

教えてくれないか?」


魔王が、

雑巾を手に取る。


それは――

城の歴史上、

初めてのことでした。


城全体が

明るく、

清々しい空気に

満たされ、


魔族たちの間からは

笑い声が

絶えなくなっていきます。


――しかし、その頃。


リリアが

掃除していた頃には

考えられなかった

『謎の悪臭』が、


ついに

聖王国の

国王の寝室へと

到達していました。


腐敗による

病が

蔓延し始め、


聖騎士たちは

疲弊の

極みに達している。


そして。


その悪臭の正体が、


リリアが

「ただの執念」と呼んで

拭き取っていた、


王族や貴族たちの

『心そのものの汚れ』

だとは――


まだ、

誰も

知る由も

ありませんでした。

屈強な魔族たちが歌いながら床を磨く光景……。

平和(?)な魔王城をお楽しみください!

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