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第5話:魔王城の地下には、ラスボス級の「カビ」がいました

お掃除聖女の天敵、それは……。今回は少し(?)強力な敵が登場します

魔王城での生活が

始まって一週間。


私の朝は、

ゼノス様の寝室の窓を

全開にし、


一晩で溜まった

わずかな

「停滞」を

追い出すことから

始まります。


かつては

死の瘴気が

渦巻いていたこの城も、


今では、

私の

『掃除聖女』としての魔力で、


聖域にも等しい

清潔さを

保っていました。


――ですが。


私の

「掃除センサー」は、

どうしても

見過ごせない

違和感を

捉えていたのです。


「……ゼノス様。


この城の最下層、

地下四階の

突き当たりにある部屋。


あそこ、

掃除の許可を

いただけませんか?」


朝食の席で

私がそう切り出すと、


ゼノス様は

持っていたカップを

止め、


鋭い視線を

私に向けました。


「……あそこだけは

駄目だと言ったはずだ、

リリア。


あそこは

『開かずの間』。


先代魔王が、

古の神々との戦いの末に

封印した

『腐食の原種』が

眠っている。


触れるものすべてを

腐らせ、

鉄をも溶かし、

精神を汚染する

最悪の災厄だ。


我ら魔族ですら、

あの扉に

近づくだけで

寿命が削られる」


「でも、

あそこから

漂ってくるのは、


『災厄』なんて

格好いいものじゃ

ありません。


あれは……」


私は、

ゼノス様の反対を

押し切り、

地下へと

向かいました。


階段を降りるごとに、

空気は

重く、

ねっとりとした

不快な湿気を

帯びていきます。


壁は

不気味な

黒い紋様に

覆われ、


時折、

赤ん坊の泣き声のような

異音。


「リリア、

戻れ!


そこから先は――」


追ってきた

ゼノス様の制止より

早く、


私は

「開かずの間」の前に

立っていました。


重厚な

鋼鉄の扉。


幾重もの

魔法の鎖が

巻き付けられています。


ですが、

その隙間から

漏れ出しているものは、


私の目には

「ただの

放置された汚れ」にしか

見えませんでした。


「……やっぱり。


これは

1000年放置されて

魔力を持ってしまった、

『黒カビ』の

親玉ですね」


「何を……!?」


私はカバンから、

特製の

『浄化のゴム手袋』を

取り出し、


迷わず

鎖を

引きちぎりました。


バキバキッ!


扉が開いた瞬間、

中から

溢れ出してきたのは、


ドロドロとした

墨汁のような

粘液。


それは

意志を持つかのように

膨れ上がり、


数千の触手となって

私に

襲いかかってきます。


『キシャァァァァ!


腐レ、

死ネ、

全テを

穢サン……!』


叫び声と共に

放たれる

死の波動。


背後の

ゼノス様が

咄嗟に

防御障壁を

張りますが――


私は

溜息をつき、

霧吹きを

構えました。


「うるさいです。


1000年も

掃除をサボっておいて、

威張らないでください」


私が

その場で調合したのは、


高純度の聖水に、

聖女の魔力で抽出した

『神聖アルカリ成分』を

配合した

特製洗剤。


――名付けて。


『ホーリー・

ハイター・

ハイパー』。


「除菌、

漂白、

そして成仏!


『広域噴霧

(エリア・スプレー)』!」


シュッ。


放たれた

一筋の霧が、

粘液の魔物に

触れた瞬間――


パチパチッ!


激しい火花が

散りました。


『ギ、

ギャァァァァ!?


熱イ、

白イ、

消エテいくぅぅぅぅ!?』


災厄と呼ばれた魔物は、

みるみるうちに

真っ白な泡へと

変わり、


形を

失っていきます。


私は

追い打ちをかけるように、


魔力を込めた

デッキブラシで、

床を

ガシガシと

擦りました。


「カビの根っこは、

表面だけ

拭いても

駄目なんです。


こうして、

因果律のレベルで

書き換えるように……


ほら、

ピカピカに

なってきましたよ!」


数分後。


あれほど

禍々しかった部屋は、


新築の

住宅展示場も

驚くほどの、

白さと

輝き。


壁の

黒い紋様は

消え去り、


代わりに

現れたのは、


先代魔王が

隠していたとされる

黄金の装飾品や、

伝説の聖剣たち。


それらもすべて、

私の手で

キュッキュッと

磨き上げられています。


「……嘘だろ。


我が一族が

千年以上も

恐れ、

封じ続けてきた

災厄が……


ただの

『カビ掃除』で

終わったというのか……?」


呆然と

立ち尽くす

ゼノス様。


私は

額の汗を拭い、

満足げに

微笑みました。


「ゼノス様、

見てください!


あんなに

ドロドロだったのに、

下からは

こんなに素敵な

大理石の床が

出てきました。


やっぱり

掃除をすると、

心まで

晴れやかに

なりますね!」


私は、


汚れが落ちたことで

本来の力を

取り戻し、


眩しく

輝き始めた

伝説の聖剣を――


「ちょうどいい

物干し竿に

なりそうですね」


そう言って、

拾い上げるのでした。


この日、


魔王城から

『腐敗』の概念が

消滅し、


城の地下は、

「世界で最も清潔な

保管庫」へと

変貌を

遂げたのです。

ホーリー・ハイター・ハイパー。一家に一本欲しいですね

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